機械設計ってどんな仕事なの?

機械設計ってどんな仕事なの?アイキャッチ 機械設計

工学系の学生には、将来的に機械設計の仕事に就きたいという人も多いと思います。では、機械設計の仕事がどういうものなのかご存じでしょうか。フワッとしたイメージはあると思いますが、実際に働いてみないと具体的な内容まではわかりませんよね。本記事では、設計者である私が“機械設計の仕事内容”をわかりやすく紹介ていきます。機械設計がどういう仕事なのか、どういう魅力があるのかを少しでも理解いただければ幸いです。

 

はじめに

私は機械メーカーで開発設計に従事しています。会社によって組織分けや名称は異なりますが、機械設計の仕事は大きく三つに分けることができます。

 

機械設計の種類

 

◎開発設計・・・マーケティングをもとに、世の中にない機械を設計する。
◎改良設計・・・現在、生産中の機械を改良し、より良いものにする。
◎特注設計・・・顧客からの要求をもとに、機械を設計する。

 

多くの場合、それぞれの部署でローテーションがあります。開発から改良へ異動したり、特注から開発に異動したりと、一つの仕事終わるたび設計者は人事ローテーションで異動していきます。今回は設計の花形ともいえる開発設計の話をベースに、機械設計の仕事を紹介していきます。

機械設計の流れ

 

機械設計の流れ

 

機械設計といっても好き勝手に機械を設計するわけではありません。まず、営業部がマーケティングを行い、どんな機械が求められているか、自社に足りないものなにかなどを調査します。マーケティングの結果を元に役員が審議を行い、“開発コンセプト”を決定します。ここから、機械設計の仕事が始まります。

 

上層部から提示された開発コンセプトを元に、設計者は“仕様”を決定します。仕様とは機械の構造、寸法、速度、精度、コストなどの機械に要求される値のことです。仕様の決定は、その後の設計に大きく影響するので非常に重要です。仕様を決定する際は、構想設計”というざっくりとした設計を行います。そして、設計者が決めた仕様を上層部に審議してもらい、OKがでれば本格的な開発がスタートします。

 

審議が通ったら、“詳細設計”を進めます。適時、有識者や現場などとDR(デザインレビュー)を行い、設計に問題が無いことを確認し進めていきます。設計が終わったら、いよいよ製品の製作に入っていきます。

 

製品が問題なく組立できるのか、その立会い”も設計者の仕事です。作業者に指示を出し、共に機械を組立てていきます。製品が完成したら、評価”を行います。決定した仕様通りに機械が出来ているか、不具合は無いかを確認します。そして評価結果や製作に掛かったコストをまとめて、上層部に審議してもらいます。OKがでれば試作時の不具合を直して量産化”です。

 

ちなみに、ここで最初に提示した仕様を満たせない場合、市中引き回しの上、拷問・打ち首です。というのは冗談ですが、それ相応のペナルティはあります。仕様を満たせなかったというは絶対に許されない厳しい世界なんです。

 

ここまでが開発設計のワンサイクルとなります。私が今まで担当した開発では、この開発ワンサイクルの期間は大体1年~1年半くらいです。(開発する機械によりますので参考まで)

機械設計の仕事内容

機械設計の仕事1

 

開発する機械の規模にもよりますが、1台の機械を1人で担当することはあまりありません。私の会社では大体、1台の機械を6~10人くらいで開発しています。自動車だと1台の車種に何百人という設計者が携わるので、それに比べればだいぶ少ないですね。それぞれの設計者に技量を考慮した上で担当のユニットが割り振られます。設計者は、そのユニット単位を設計していくわけです。当然、各自が好きなように設計を進めると機械が成り立ちませんので、お互いの進捗や計画をしっかり把握しながら連携して設計を進めていきます。チームワークが大切な仕事です。

構想設計

機械設計の仕事2

 

構想設計では、与えられたユニットを構想します。与えられた開発コンセプトに従い、自分のユニットの構想を進めて仕様を煮詰めていきます。

 

・どんな形・サイズにするか
・どんな動作をさせるか
・どんな駆動で動かすか   など・・・

 

など、機械の概要に関わる部分を決めていきます。設計者の勘とセンスを問われる部分です。ここで根本的なミスがあると、取り返しがつかないことが多いため慎重に進めます。個人的には構想を考えているときが一番ワクワクしますね。ざっくりした設計計算もこの段階で行います。

 

詳細設計

機械設計の仕事3


詳細設計では、構想設計で決めた内容を煮詰めて具体的な形にしていきます。最終的なゴールは”出図”です。出図とは、製作用の図面の正式に発行することで、そこまで辿り着くには様々な試練があります。

 

・部品形状を確定させる。
・組立方法の検討
・詳細な設計計算
・部品図、組立図の作図
・出図

 

など、製品を作ることができるよう準備をすすめていきます。加工業者や組立作業者の意見も取り入れながら設計を進めていきます。部品図や組立図の作図は設計者自身で行わず、外注業者に振ることも多いです。1ユニットで少なくても数十点、多いと百点近いの部品を設計することになります。納期は常にタイトであり全ての図面をしっかり確認するだけでもかなり大変です。部品1点に裂ける時間は限られますので出図前の忙しさは尋常ではありません。

現場立会

現場に出向いて、機械製作に立ち会います。ここで作業者から不具合や要望などを吸い上げます。作業者の意見だけ聞くのではなく、実際に作業を見て“気づきがあるかどうか”が設計センスです。ただ作業者の意見を取り入れるだけでなく、作業者が気が付いていない部分でも改善の余地はないか目を光らせます。

 

その機械だけでなく、今後設計者として生かせる発見が多くある場なので、現場は非常に重要です。また作業者は職人気質な方が多いため、積極的なコミュニケーションが重要です。業務的な無味乾燥なやり取りだけでなく、雑談を交えながら話を盛り上がると色々とためになる話が聞けるので重要です。そういったコミュニケーション能力も必要になってきます。

評価

機械設計の仕事4


製作した機械の評価を行います。ちゃんと動くのか、想定通り動くのかというテストですね。構想設計の段階で、どんな評価を行うのかまで決めておき、その予定に従い評価を行います。評価内容はざっくり分けると下記のようになります。

 

・性能の評価                 ・・・ 決めた仕様を満たしているか
・安全の評価                 ・・・ 機械自体、もしくは動作に危険がないか
・品質、品位の評価      ・・・ 品質や品位は規定を満たしているか
・その他 法令に従った評価 ・・・  機械の種類によっては法で定められた評価がある

 

想定通り動かなかったり、不具合があった場合は大変です。原因の本質を探り、即時に対応します。限られた時間と条件の中で対応しなけばならず、設計者としての技量が試されます。

 

審議会議

機械設計の仕事5

 

開発した機械について上層部に報告します。発表資料作りやプレゼンテーションも設計の仕事です。審議する役員は技術の専門家ではないため、極力専門用語は使わず、誰にでもわかるようなプレゼンが求められます。そういったプレゼン能力も重要です。

 

前述しましたが、仕様未達は許されません。特にコストは厳しく見られます。要求に対して一つでも未達があると、“大人ってこんなに怒られるのか”というほど激しく叱咤されます。まあ、会社にもよりますけど。企業は利益を出すことが最重要事項ですから、設計した機械がどれだけ技術的に優れていても”会社の儲けとなる機械”でなければ価値を認めてはもらえません。いい機械だったら必ず売れるというわけではないので、社会というのはつくづく難しいものだと思いますね。

量産化

機械設計の仕事6


審議が通ったら、開発段階で上がった不具合を直して、量産化します。

これで開発した製品が世に出回っていくというわけです。

機械設計の魅力

自分のアイディアや技術を生かして、世の中に無いものを生み出す。

 

これが機械設計の醍醐味です。これに尽きます。苦難も多いですが、機械が完成したときの達成感は、なんとも形容し難いものですね。設計した機械が世に出回り、誰かの役に立っている。こう考えるだけで次の仕事に対するモチベーションも湧いてきます。

 

機械設計の仕事は、専門性が高いだけでなく、専門分野以外にも幅広い知識が必要です。更には知識だけでなく、アイディア・センスが問われます。自分で言うのもあれですが、難しい仕事だと思います。技術は日々進歩していきますので、設計者自身も日々勉強です。福沢諭吉の言葉に「ただ難しければ面白い」というものがありますが、まさしくそれです。仕事の難しさそのものも機械設計の魅力の一つです。

 

設計した分、勉強した分だけ設計者としてのスキルが上がっていきます。その成長は、製品という見える形でアウトプットされるので、自分が成長していることを製品を通して実感できます。またライバルも多いです、同期や競合他社の技術者と切磋琢磨しながら自分を高めていけます。他人の設計は、なぜこんな形が思いつくんだ!!とか、俺も同じようなこと考えてたのに先を越された!!とか、その手があったかー!!とか驚きの連続です。感覚的には、ドラゴンボールの孫悟空のように「すげぇ奴がいっぱいいて、おらワクワクすっぞ」という感じですね。このように自身をどんどん高めていけるのも機械設計の魅力です。

機械設計の辛さ

機械設計は魅力あふれる仕事である反面、厳しく難しい仕事でもあります。私の同期でも心を病んでしまい会社に来れなくなった人や辞めてしまった人も多いです。辛さの定義は人それぞれですが、私が大変だと思うことをピックアップしました。

 

◎とにかく多忙

機械設計の仕事はとにかく多忙です。要求や納期は常に厳しく、理不尽であり時間の無い中で最大限のアウトプットを求められます。仕事の範囲も広く、設計のみななずなんでも屋さんになりがちです。まさに目が回る忙しさです。とにかくやることが多いです、毎日遅くまで働きます。日々の睡眠時間は削られ、仕事が終わらず家に帰れない日もあります。効率という言葉が馬鹿らしくなるほどの圧倒的な仕事量を前にして目の前が真っ白になります。それでも、納期は絶対です。とにかく体力勝負。間に合わないことは許されず、常にプレッシャーが掛かります。

 

◎解決策がみつからない

設計を進めると必ず問題に突き当たります。そして問題が解決できない限り、ひたすらに悩み続けることになりまます。絶対的な正解はありませんから、上司は相談にのってくれますが答えがでるわけではありません。アイディアが浮かばず、ヒントを探すもよい情報にめぐり合えない、ただいたずらに時間だけが過ぎて納期が迫ってくる。そうなったら、寝ても覚めても休みの日でもお風呂でも、その課題の解決策ばかり考えてしまい、そうやって精神をすり減らすことになります。

 

◎技術以外の障壁

設計を進めていくと技術的な課題以外にも色々な障壁にぶち当たります。技術的には正しいことであってもコストや社内の政治的な理由で、設計思想を曲げる必要があります。これは技術を愛する人間にとっては辛いことです。もっといい機械を作れるはずなのに・・・と思うこともよくあります。ですが、企業で働くサラリーマンという立場では仕方が無いことでもあります。

 

◎板挟み

設計者は往々にして、板ばさみに合います。主には現場と上層部の板挟みです。それぞれから要求がありますが双方の主張は相反するものであることが多いです。意見を摺り合わせ落としどころを見つけるために右往左往します。人とのコミュニケーションが苦手だと非常に苦労します。

 

色々とネガティブに書きましたが、これらも裏を返せば機械設計の魅力です。こういった問題をブレイクスルーするたびに自信の成長を実感できます。これもまた、「ただ難しければ面白い」ということですね。

機械設計者になるためには

機械設計者を名乗るのに資格は必要ありません。ただ、資格試験自体はあります。学生でも取得できる機械設計関連の資格は下記です。

 

・機械設計技術者 (3級)

・技術士 (第一次試験まで)

 

結論から言うと、就職活動目的での資格取得はおススメしません。工学系の大学でしっかり勉強しているなら、これらの資格は問題なく受かると思います。しかし、資格を持っているからといって就職活動が有利になるわけではありません。ちょっとしたやる気アピール程度です。なぜなら資格の知名度が低いからです。これは私の実体験になります。

 

私は機械設計者になりたかったので、”資格があれば良いアピールになるだろう”と思い、上記2つの資格を取得してから就職活動に臨みました。自己PRにも資格のことを盛り込みましたが、人事の反応は???という感じでした。大手企業を何社も受けましたが、資格に関しては非常に反応が悪かったです。面接が進んで二次面接、三次面接となると技術系の管理職や役員が出てきます。流石に、ここでは資格のアピールが刺さるだろと思い、自信満々に話しましたが技術系の役員から一言。

 

「それってどういう資格なんですか?」

 

知らんのかーい!!とツッコミをしたい気持ちを抑えつつ、資格の説明から行いしどろもどろ。大切な面接の時間を無駄に使ってしまいました。どの会社に行っても基本そんな調子でした、ことごとく失敗でしたね。ただ、手前味噌で大変恐縮ですが、私は就職活動では一社からもお祈りされることがなかったです。

 

実はもう一つ仕込んでいた秘策がありまして、それが非常に盛り上がったんですね。真似をしろとはいいませんが、機械設計者を目指すのなら、是非とも参考してください。

 

機械設計者を名乗るのに資格は必要ないのなら、もう機械を設計してしまえ!!と思い立ち、就職活動前に、一台の機械を設計・製作しておいたんです。企業には自己PR資料として、その機械の設計資料を送り付けておきました。(設計した機械を持ち込もうと思ったんですが、さすがに無理だったので)

 

木登りロボット設計

 

今思えば設計としては非常にお粗末なものだったとおもいます。しかし、これほどまでに機械設計の仕事をしたいんだとアピールできる方法は他にないと思います。いくら資格があっても、資格は良くも悪くも資格です。実物は語るに及ばず、一目瞭然。面接は非常に盛り上がりました。機械設計をやりたいんだという熱意もストレートに伝わったと思います。この秘策が当たり、有意義な就職活動となったわけです。

 

今はフリーで使える3D CADもありますし、有料のCADであっても学生版は安いです。3Dプリンタだってありますので、アイディア次第で色々なモノづくりができます。機械設計者を目指すなら、まずは機械を設計してみればよいんです。環境は整っていますので、設計者になりたいのにモノをつくらない理由はありません。簡単なものでよいです、なにかを完成させることが大切なんです。アイディアを形にしたことがあるという経験が、あなたの就職活動を手助けをしてくれるはずです。

まとめ

本記事のまとめです。

 

・機械設計には、開発・改良・特注の三種類がある。

・設計の流れは仕様決定→構想→詳細→評価→審議→量産

・機械設計は体力勝負

・世の中にないものを生み出すことが機械設計の魅力

・設計者になれたければ、まず設計してみよう!!

 

ここで紹介した設計の話は、あくまで私の実務・経験を元にしたものであり、すべての企業がそうであるとは限りませんのであしからず。この記事を読んで、機械設計者になりたいと思ってくれる人が増えれば嬉しい限りです。

 

業務で就職活動のサポートをすることもありますが、私がいつも言うのは

 

「”どこで働くか”よりも、”どう働くか”が重要」

 

ということです。就職は手段であって目的ではありません。何を成し遂げたいか、どうなりたいのかが明確になっていれば、どの会社に入っても活躍できます。別に一生そのビジョンを掲げる必要はありません、入社してから変わってもいいんです。現時点で、自分がどう思っているのか、なぜそう思うのかを明確にしておくことが大切だと私は思います。本題よりそれましたが、一人でも多くの人が納得のいく就職活動ができることを願っています。