金属3Dプリント技術-AM(アディティブマニュファクチャリング)って一体何なの?

金属3Dプリント技術-AM(アディティブマニュファクチャリング)って一体何なの? アイキャッチ 最新技術

皆さんは“3Dプリンタ”といったらどういうものをイメージしますか?昨今では、一般にもだいぶ認知され家庭用の3Dプリンタもかなり安価で手に入るようになりました。そんな影響もあって、手のひらサイズの樹脂製品をプリントするイメージが強いのではないでしょうか。認識としては間違いないのですが、実は樹脂だけでなく金属までもプリントできる技術があるんです。

本日記事で取り上げるのは、金属をプリントする3D積層技術AM(アディティブマニュファクチャリング)についてです。実はこの技術自体は昔から研究されていたんですが、それが3Dプリンタの普及によって、近年一気に脚光を浴びるようになってきました。今まさに製造業に新しい風が吹き込もうとしています。製造業に携わる人、またこれから足を踏み入れる人は知っておいて損のない内容です。できる限り簡単に解説していきますよ。それではいきましょう!!

“あでぃてぃぶまにゅふぁくちゃりんぐ”って?

カタカナばかりでなんだかとっても難しそうですよね。そしてすごくインテリジェンスな響きです。アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing:以下 AM)とは、3D積層造形技術のことを指します。つまるところ、3Dプリンタのことです。

AMという言葉自体は、金属のみならず、樹脂や繊維など材質によらず素材を積層してものを作り出す技術の総称なんですが、昨今では金属3Dプリント技術のことを指すこと場合が多いです。本記事でもAM=金属3D積層技術という定義で説明していきますのであしからず。

AMという言葉のそれぞれの単語の意味を見ていくと

Additive:付加的な
Manufacturing:製造


となっています。Manufacturingは製造業に携わる人にとっては馴染み深い単語ですね。Additiveは“付加的な”という意味でこの意味がポイントです。

少し話は反れますが、機械加工は分類すると“除去加工”、”塑性加工”、”付加加工”の三つに分けることができます。除去加工は工作機械などで行われる一般的な金属加工です。まず材料があり、不要な部分を加工で削り取っていきます。塑性加工は、力を加えて金属を塑性変形させる加工です。付加加工は、材料に対して、更に材料を盛り付けていくイメージです。除去加工とは真逆の概念ですね。AMはこの”付加加工”に分類されます。ちなみに溶接などもこの付加加工に含まれます。

機械加工の分類

AMでどんなことができるの?

AMでは、金属をプリントすることで製品を生み出すことができます。加工では作り出せなかった複雑形状や加工困難な材質を造形して今までに無かった製品を生み出すことが可能です。

AMに期待される用途

用途として注目されているのはリペア産業です。特に航空機部品のブリスクやインペラなどのエンジン部品の補修として期待されています。これらの部品は複雑形状で且つ、一体成型の部品です。高価な工作機械での同時5軸加工の削り出しで成型されていますが、材質は耐熱性を持たせるためチタンやインコネルなど難削材と呼ばれる材料です。一から作り出すのは非常に手間とコストがかかるため、破損した部分だけを補修できるAMに注目が集まっています。

航空機業界はビジネスモデル的に、飛行機本体を売った瞬間は赤字でメンテナンスなどの定期保守で儲けるという形になっています。なので、効率の良いリペアが出来れば保守でより高い利益を得れるというわけです。

(ブリスク・・Blade In Diskの略。羽とディスクが一体となっているのが特徴で、ジェットエンジンなどで使用される。)

(インペラ・・羽根車の総称で、身近なものだと扇風機の羽がソレ。航空機や船に使われており、ブリスク同様に一体成型される。)


また分野を問わず、加工では製作不可能な特殊形状部品を作成できることも期待が集まっています。製作上の制約もないため、コンピュータ解析を用いた形状の最適設計と相性が良いです。

既存材料の上に異種金属をコーティングするように積層することで、部分的に材質を変えたりすることも可能です。それにより、一つの部品の中の必要な部分にだけ必要な物性や特性を持たせることができます。まだまだ工夫次第で用途が広がる発展途上の技術なんです。

AMの種類

AMの金属積層方式は大きく二つに分けることができます。

AMの種類

パウダーベッド方式

金属粉末を薄く敷き詰めて、そこにレーザ等の熱源を照射して必要な部分を溶かして固めることで積層していく方式です。その名の通り、金属粉のベッドを作って積層していくわけです。固まらなかった金属粉末は回収して再利用されます。形状によっては、素材を支えておくサポート材料が必要となります。パウダーベッド方式が金属3Dプリンタとしては主流となります。何もないところから金属部品をプリントするのに適しています。

メタルデポジッション方式

ノズルから金属材料を噴射して、そこにレーザを照射し金属を溶かして固めていく方式です。デポジッション(deposition)とは堆積という意味です。局所的に金属を堆積させていくイメージですね。既存の金属材料の上からでもプリントを行なうことが可能で、部品の補修をしたり異種金属を積層したりすることができます。また、工作機械との相性がよく、レーザ照射装置と金属噴射装置を組み込めさえすれば工作機械内で3D金属積層を行なうことができます。このように既存の工作機械とAMを融合したハイブリット工作機械が各メーカーからリリースされています。

メタルデポジッションの中でも分類は2つあり、“レーザ方式”と”アーク放電方式”に分けられます。レーザ方式は上述の通り、金属粉を噴射してそこにレーザを照射することで任意に箇所に金属を積層していきます。アーク放電方式は、方法が全く異なります。いってしまえばアーク溶接です。半自動溶接機のトーチのようなものが付いていて、任意の場所に溶接ビードをモリモリと盛って金属を積層していきます。当然、形状精度は悪いですが最も安価にAMを実現することができます。

メタルデポジッション方式はパウダーベッド方式よりプリント精度が落ちる、積層跡が大きく見た目の品位が悪いなどの特徴があります。

AMのメリット・デメリット

AMのメリットとデメリットは下記が上げられます。

メリット   ・・・設計の自由度が高い、部品製作のリードタイムが短い
デメリット ・・・製造コストが高い、設備自体も高コスト、加工に比べ形状精度が悪い

やはり最大のメリットはその部品製作の自由度の高さです。アイディア次第で今まで実現不可能だったものをどんどん生み出すことができます。最大のデメリットは、量産に向かないことです。試作レベルや少量生産のものは問題ありませんが自動車部品などの大量生産が必要なものは製作の手間やコストを考えるとまだ実用レベルには達していないと言われています。

今後の技術動向

AMが今後の製造業にどのような影響を及ぼすか、私なりに考察しました。

進む工作機械との融合

AMで実現できる形状精度や面粗は加工に比べて劣るため、AMの技術のみで最終製品まで製作するのは難しいのが現状です。つまり、AMと機械加工はワンセットで使用されるため、今後も工作機械とAM技術の融合が進むと予想されます。国内の工作機械の主要メーカーでは既にAMを導入した工作機械を開発しており、技術力競争でしのぎを削っています。

日本の工作機械メーカのAM搭載機

画像引用元:DMG森精機株式会社ヤマザキマザック株式会社オークマ株式会社株式会社松浦機械製作所

工作機械メーカのみならず、3D金属プリンタを専門で開発しているメーカが3D金属プリンタに加工装置を取り入れるというアプローチでも開発が進んでいきます。 少し話は反れますがこの関係性は、タブレットとノートパソコンの関係に似てますね。タブレットって便利に使うためにキーボードが使えるようになったりしてノートパソコンっぽくなっていって、ノートパソコンはコンパクト持ち運べるように軽く小さくなったり、タッチパネル化したりしてタブレットっとぽくなっていって最終的にはタブレットノートPCというどちらでもあり、どちらでもない曖昧なものが誕生しました。

この現象と同じで、工作機械と金属3Dプリンタも最終的には段々似たようなものになっていくと思います。ただし、AMの特性上、工作機械はメタルデポジッション方式、金属3Dプリンタはパウダーベッド方式がメインなのでそこでしっかりとした棲み分けがなされますね。

AMの今後の技術動向

AM搭載工作機械・・・元の材料に金属を積層して、製品を作る
加工機搭載3D金属プリンタ・・・何も無い状態から金属を積層して、製品を作る


という役割分担で市場が分かれていくのではないかと思います。

設計者の求められる能力が変わる

AMによって製作の自由度が高まり、どんな形状でも作り出すことができるようになります。しかし製作自由度の高さは、設計難易度の高さでもあります。設計者は今までの常識を捨てて、新しい発想で設計をしなければなりません。現存するいくつもの設計手法は、部品製作における制約があるという前提で最適化されています。AMを使用することで、この制約がなくのであれば、既存の設計手法の根本を見直し全く新しい考え方で設計を進めていく必要があるのです。今までのやり方では、AMの旨味を生かしきれないということですね。具体的な話が無くて申し訳有りませんが、これからの設計者はこの変化に対応していく必要があるのです。

また自由度が高まることで力学的に最適な形状を実現できるようになります。合理的な形状は人間よりもコンピュータの方が考えるのが得意です。最適な形状を解析で決める手法には”ジェネレーティブデザイン”や”トポロジー最適化”などがあります。

ジェネレーティブデザイン・・・・与えた条件から自動で最適な形状を決定する手法
トポロジー最適化   ・・・・・与えた形状の中で最適化する手法


設計者は部品形状を考える機会が減り、最適化のための条件だけを決め、形状は解析を用いて決めるようになります。今は3D CADが主流ですが、CADそのものではなく解析自体がメインの設計ツールとなるのではないでしょうか。我々が生きている間にそんな状況が来るのかはさておき、時代はそのような方法に流れていっている気がしますね。未来のことはわかりませんが設計者が今やるべきことは、最新の技術動向に目を光らせ、色々な分野の最新情報を収集し、理解しておくことです。本記事がその情報収集に一役買ってくれれば嬉しいですね。

まとめ

本記事の内容を復習しましょう。

・AMとは、金属3Dプリント技術のことを指す
・製作上の制約がなく、自由な形状で製品を作ることができる。
・パウダーベッド方式とメタルデポジッション方式がある。
・AMと工作機械との融合が進んでいる。
・AMを生かした設計をするためには、全く新しい考え方が必要。


新しい技術の話はいつ聞いてもワクワクしますね。AMは製造業にとって最も期待される技術の一つです。

最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き残るのでもない。
唯一生き残るのは、変化できる者である。


という言葉は有名ですよね。チャールズ・ダーウィンの言葉です。我々もAMが製造業に起こす変化に対応していかなければ、この業界で生き残ることはできないかもしれません。少し大げさかもされませんが、樹脂用の3Dプリンタが我々に与えた影響を考えるとあながち無い話ではありませんよ。近年の工作機械業界では、IoTブームに押されてAMブームは少し下火気味ではありますが、それでも今後も目が離せない技術です。今後の技術動向も要チェックですね!!

3D積層技術に興味があるという方は、実際に家庭用の3Dプリンタを買ってみるのもオススメです。私も最近3Dプリンタを買ったのですが、非常に勉強になりますし楽しいですよ。詳細は下記の記事にまとめてあるので、お時間あれば合わせてご一読ください。

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