機械設計者の市場価値って何だ?

コラム

最近、転職サイトの広告を見る機会が多くなったと感じます。テレビCMや駅の広告も転職の広告が目立ちます。それだけ、多くの方が転職に関心があるということですね。今や、2人に1人は転職するという世はまさに大転職時代です。永年勤続、年功序列、長時間労働といった日本の古き良き時代の会社の在り方は見直され、みんながそれぞれの生き方に合った働き方を選ぼうとしています。ですが、社会には”転職は裏切り”とか、”忍耐力がない”とか昔ながらの日本の考え方も色濃く残り、それが転職の障壁となっているのも事実です。そういう私は転職をしたこともありませんし、本腰をいれて転職も考えていません。ただ転職というカードを手元に持っておくことは大切だと感じています。本記事では、転職を考えるなら置いて知っておかなければならない“市場価値”という考え方について記事にしました。私は機械設計者なので私なりに機械設計者の市場価値とは何かについてフォーカスを当てて書いています。それ以外の業種の方にも参考になると思いますので、是非参考にしてください。


本記事を書くにあたり、下記の書籍を参考にしました。

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法 | 北野 唯我 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon
Amazonで北野 唯我の{ProductTitle}。アマゾンならポイント還元本が多数。一度購入いただいた電子書籍は、KindleおよびFire端末、スマートフォンやタブレットなど、様々な端末でもお楽しみいただけます。

機械設計者の市場価値ってなに?

転職について調べるとまず突き当たるのが“市場価値”という言葉です。マーケットバリューなんていう言い方もありますね。市場価値とは、端的に説明すると、世の中からみた”自分の価値”のことです。今勤めている会社での評価ではなく社会全体から見た価値、つまりは自分自身の値段のようなものです。

 

転職活動をするにあたり、自分の商品としての価値を知っておくことはとても重要です。自分を商品として売り込むわけですから、まずは自分の価値を客観的に見ておく必要があるわけですね。また、市場価値は収入の期待度ですので、市場価値=年収と考えれば良いです。転職によって年収を上げるためには、市場価値を構成する要素を正しく理解しなけばなりません。

 

では、自分の市場価値はどうやって判断すればよいのでしょうか。参考にした書籍によると、市場価値は三つの要素の掛け算で決まるようです。

 



技術資産 ・・・ 高い技術力を持っているか
人的資産 ・・・ 会社の垣根を越えて頼れる人がいるか
業界の生産性 ・・伸びている業界にいるか

上図の四角形が大きければ大きいほど、市場価値は高いということになります。市場価値はこの箱を大きくするイメージで高めていく必要があります。当然、全てを満遍なく伸ばすことがベストですが、理想的なキャリアは少なくともこの中の2つ以上が高いことです。

 

機械設計者の市場価値

上記で説明した市場価値の定義を元に、機械設計者に当てはめて考えていきましょう。

機械設計者の技術資産

 

技術資産は、価値のある技術をどれだけ持っているかということです。機械設計者であれば、当然この資産を高めたくなりますね。技術資産は大きく“専門性”と”経験”で分けることができます。

専門性は、特定の職種の専門スキルです。機械設計者で言えば

・持っている資格や機械に関する知識
・使えるCADソフト、解析ソフトの種類
・設計できる、または設計してきた機械の種類

などが該当します。

経験は、職種に紐づかない一般的なスキルです。どんな仕事でも使える能力のことです。

・管理職としての経験
・プロジェクトの立案や運営
・海外での勤務経験
・プレゼンテーション力
・コミュニケーション力

などが該当します。求人サイトを見ても、設計者が求められるのはどんな機械を設計できるのかという専門性です。まず採用条件として、○○機械の設計経験があること、という条件が書いてある求人も多いです。設計できる機械の種類が多いほど、またその技術の設計難度が高いほど技術資産は高まります。少しややこしいですが設計経験は専門性のスキルに分類されます。“経験”はあくまでも、職種に紐づかないスキルなので、面接などでその経験をしっかりとアピールする必要があります。

市場価値を高めたい場合は、年齢によって身に着けるべき技術資産は異なります。20代は専門性30代以降は経験を取るべきです。理由は、専門性のある人間にこそ、貴重な経験が回ってくるためです。若いうちに専門性を身につけて、30代は経験を取りにいくのが市場価値を高める方法としては効率的なようです。

機械設計者の人的資産

 

人的資産は、いわゆる人脈です。会社を変えたとしても仕事をくれる人や仕事の相談に乗ってくれる人がどれだけいるかということです。普段会社に勤めていれば、仕事の相談は上司や同僚がのってくれますし、色々な会社から仕事ももらえます。それは、私が〇〇株式会社の設計者のしぶちょーさんだからであり、仮に独立したり、転職したときに、私個人に対してどれだけの人が仕事をくれたり相談に乗ったりしてくれるでしょうか。考えるのも怖いですが、そう考えたときにが浮かぶ人が人脈です。

 

営業職の方は、人脈作りを意識している人が多いように感じますが、機械設計者で積極的に人脈を広げようとしている人は少数派だと思います。特に会社に勤めていると、あまり人脈を意識することは少ないです。

 

人脈はあくまでも、信頼関係に基づくものです。SNSのフォロワーが多いからと言って、それで自分に人脈があるんだと勘違いしてはいけません。人脈を広げる手段の一つとしてSNSは有効ですが、あくまでもキッカケに過ぎず、人脈とするには信頼関係を築く必要があります。私個人としては、この人脈という言葉はあまり好きではないんですけどね。交友関係を損得勘定しているような感覚になるんですよ。きっとこの気持ちがわかってくれる人も多いと思います。

少し話が脱線しましたが、一個人として助けてくれる人がどれだけいるか、これが人的資産です。

 

人的資産は価値を生み出すのに時間がかかるため、若いうちは軽視されがちです。ですが、ビジネスにおいて優秀な人ほど、貸し借りで一肌脱ぐ傾向が強いため、40代以降では極めて重要になるようです。

業界の生産性

業界の生産性とは、その業界が一人当たりどれだけの利益を出しているかということです。この要素だけは、個人の努力云々ではなく現時点の立ち位置で決まります。逆に言えば、技術資産や人的資産がどれほど高くても業界の選択を間違ったら、市場価値は絶対に高くならないということです。もちろん、同じ業界でも生産性が違う会社はいくらでもありますが、おおよそ業界ごとに相場は決まっています。

例えば、私が属する工作機械業界と自動車業界を比較してみましょう。

(2019年度の決算参考)

トヨタ自動車 (自動車メーカー)
・営業利益 2兆4675億円
・社員数  370870人
・一人当たりの生産性 665万円

DMG森精機(工作機械メーカー)
・営業利益 373億円
・社員数  12837人
・一人当たりの生産性 290万円


かなりのざっくり計算ですが、自動車業界と工作機械業界では2倍以上、生産性が違うわけですね。つまり、技術資産や人的資産が同じであっても、どちらの会社にいるかという違いだけで市場価値は2倍以上違うことになります。あなたが市場価値を伸ばすために転職を希望しているのであれば業界選びは最重要項目です。

業界選びでは

・生産性が既に高い業界
・これから成長するであろう業界

を狙う必要があります。生産性が低く、成長が見込めない産業で働く限り市場価値を高めることはできません。既に生産性が高い業界は一目瞭然ですが、これから成長する業界を見極めるのは難しいですね。これは仕事のライフサイクルというフレームワークを用いれば、予想することができます。

 


(1) ニッチ
雇用は少ないが、替えがきかない仕事

(需要は少ないが、替えがきかない機械)

(2) スター
ニッチから需要が上がり、人がどんどん参入してくる
(ニッチから需要が上がり、色々な会社が参入してくる)

(3) ルーティンワーク
誰でもできるようにルーティン化された仕事になる
(誰でも製作できるように技術やノウハウがルーティン化する)

(4) 消滅  
人が行う仕事がなくなる。

(設計者が行う仕事がなくなる。)

全ての仕事はこのライフサイクルに沿って、生まれては消えていきます。転職を考えていなくとも、今の自分の仕事がどこのフェーズに属しているのか、それを考えることも重要です。消滅手前なら当然、転職を考える必要がありますね。上記は、本の内容を元に丸々引用していますが、これを機械に当てはめると()内のような感じです。

あなたの設計する機械はどのフェーズに当てはまりますか?

 

設計者としての市場価値を高めるなら、(1)もしくは(2)のフェーズの機械を開発している会社を見極めるべきです。ちなみに、私が設計する工作機械は(3)のフェーズに入りかけています。ニッチはなかなか予想できませんが、AIやIotを活用した家庭用ロボットなどは機械業界ではスターの代表だと思います。

転職というカードを持つこと

冒頭でも書きましたが、私は明確な転職の意思があるわけではありません。ですが、いつまでも今の会社が安泰とは限らないのも事実です。会社を抜けてたとしても稼げる力をつけておく必要はあると常々感じています。そのためには、自分の市場価値を意識した働き方をすることも大切だと考えています。

 

また、転職というカードを持っておくことで、今の職場でもより思い切った仕事ができます。今の会社にしか立場がない、ここでしか生きていけないという状態だと、どうしても保守的になってしまいますよね。攻めの設計を行うなら、やはり転職というカードを手の内に持っておいた方が良いです。俺はいつでもこのカードを切れるんだぜ?という精神的な余裕があれば、また違った活躍もできるはずです。

 

私は約1年間、ヨーロッパで設計者として働いていた経験がありますが、そのわずか一年の間に現地の設計者は10人以上転職をしました。私の勤めている会社が異常というわけではなく、それだけヨーロッパでは転職をするのが当たり前なんですね。仕事の内容が気に入らなければ、あっという間に辞めてしまいます。非常に見ていて清々しいです。日本人もこれだけスパっと仕事を変えれたら、皆働き方が変わるのにな、と思いながら見ていました。日本にも早くそういう時代が来ることを願います。私のヨーロッパでの経験をまとめた記事もありますので、興味あればご一読ください。

機械設計者として海外で働いた話
私は、ヨーロッパで機械設計者として働いていました。そのときに感じたことをコラムとしてざっくばらんに書き綴ります。グローバル化という言葉が取り沙汰されて十数年、今では国境を越えて働くこともさほど珍しくない時代となりました。海外ではどのように働いているのか、雰囲気を掴んでいただければ幸いです。

まとめ

市場価値に関わることとして

 

・市場価値とは、社会における自分の商品価値

・市場価値は、技術資産・人的資産・業界の生産性の掛け算

・技術資産は、専門性と経験に分けられる。

・人的資産とは人脈のことで、自分を助けてくれる人の数

・業界の生産性は、その業界が出す一人当たりの利益

・業界の生産性が低いと、市場価値は上がらない

 

を覚えておくとよいでしょう。

 

ただし、市場価値はあくまでもビジネスにおいてのあなたの価値であり、決してなたの人間としての価値ではありません。あまり市場価値ばかりを気にしても良くないですね、あくまでも一つの指標としてとらえるのが良いでしょう。私が考える設計者としての価値とは、どんな機械を生み出し、その機械がどれだけ人の役に立ったか、それだけだと思っています。


さて、今回は転職に関する記事を書きましたが、私は一応、転職フェアや説明会にも参加したことがありますし、キャリアアドバイザーとの面談もしたことがあります。なんとなくフワッと転職活動を行っていただけなので、得るものも少なかったです。

もっといい機械が作れるはず
もっと技術力の高い仕事ができるはず
俺の作るべき機械はこれじゃないんだ

と思って明確な目標もなく転職活動していても全く意味がないなと感じます。転職のみならず、働いていく上では考え方の軸が非常に重要になります。本記事の参考とした下記の本は、思考の軸を学ぶためにもオススメです。例えあなたが今、転職を考えていなかったとしても、是非読んでみてほしいです。

話は少し飛びますが、私は、本田宗一郎に憧れています。中学生の頃に本田宗一郎の本を読んで衝撃を受けました。それ以降、その破天荒なエピソードとものづくりに対する情熱や考え方の軸に憧れてずっと本田宗一郎のような技術者になりたいと思って生きてきました。

ですが、あなたはどういうものを作りあげて、何を成し遂げたいんですか?

と問われたとき、明確な答えを持っていないということが悩みでもありました。目指すべきもの、強い憧れはある。この気持ちは間違いないのに、自分が本当に作りたいものがわからない。それはなぜなんだろうと悶々と考えていましたが、この”転職の思考法”という本を読んでそのヒントらしきものと出会いました。

要約して書くと

人間は大きく分けて2パターンいる。

・To do 型  何をするか、で物事を考える。明確な夢や目標を持っている。
・Being 型  どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する。

To do型の人間は1%しかいない。99%の人がBeing型の人間で状態に重視する。そして、Being型の人間は「心からやりたいこと」を探し求めてさまようことが多い。なぜなら、1%のTo do型の人間が書いた成功哲学書に影響されていることが多いから。そもそも、To do型とBeing型では成功するための方法論が違うため、やり方を参考にしても彷徨うだけ。やりたいことがないことを悲観する必要はなく、必ず見つかる「ある程度やりたいこと」をやりながら、理想の”状態”に近づいていけばよい。

なるほど、これは目からウロコでした。

強烈な信念のもとに突き進み、自分が作り出したいものを作り出し、成功する。

これは誰もが憧れる王道のサクセスストーリですが、そのプロセスではなく、チャレンジして成功を収めた状態に憧れているのかもしれませんね。ほとんどの人はTo do型になりたいBeing型なんですね。どちらが優れているという優越ではなく、タイプの問題とあらば納得のいく話です。

上記で、ヒントらしきものと書いたのは、これが絶対的に正しいとは思っていないからです。人間をスパッと2つの分類に分けることは難しいし、両タイプのハイブリット型が居てもおかしくはないです。それに技術者だったら、やっぱり夢を持って技術で成し遂げたいですよね。

色々と話は逸れましたが、私が言いたいのは転職というカードを持っておくことは重要ということです。そして、その第一ステップとして自分の市場価値をしっかりと把握して、それを高めていくような働き方が大切だということです。