工作機械のプラモデルを作ろう【デッケルFP1】

開発日誌

本記事は、工作機械の設計者が工作機械のプラモデルを作ってホッコリするというだけの記事です。あらかじめ、ご了承ください。そもそも工作機械って何?という方は下記の記事を読んでみてくださいね。

工作機械のプラモデルなんてあるの?

まず、初めに・・・

工作機械のプラモデルなんていうマニアックなものは存在するのか?

という話ですが、結論から言えばあります。ファインモールド社のオトナの社会科見学シリーズのラインナップの中に

・デッケルFP1 万能フライス盤
・MAKINO V33i 立形マシニングセンタ
・ヤマザキマザック CNC旋盤 QUICK TURN 200MY

ファインモールド オトナの社会科見学シリーズ

という3つの工作機械のプラモデルがあるんです。”デッケルFP1”と”MAKINO V33i”はかなり前に販売されたものでしばらく在庫切れになっていましたが、ちょうど一年前くらいに再生産されて話題になりました。“マザック QUICK TURN”は昨年登場したばかりの新しいプラモデルですね。私は昨年の再生産のタイミングで、ここぞとばかりに3つとも買い揃えました。

買い揃えたまでは良かったものの、作る機会を逃し続けて完全に“積みプラ“状態に・・・。正直な話、プラモデルって一度もまともに作ったことないんですよね。“工作機械“というだけで飛びついてみたって感じはあります。でもせっかく買ったし、ちゃんと作ってみたい!!と思い立ち、 1年越しにようやく作ろうと決心しました。そして、本記事に至るわけです。目標は今年中に3つ作ることです。結構低めのハードルを設定しました(笑)

さて、まず最初に手をつけるのは

●デッケルFP1 万能フライス盤

です。3つの工作機械プラモの中で唯一の汎用フライス盤。一番マニアックな奴からいっちゃいましょう!!

まず“デッケル“と聞いて、ピンと来る人はほとんどいないと思います。工作機械に詳しい人か余程のマニアでない限りは、どこのメーカ?って感じですよね。でも、製造業に携わる多くの人は知っているはずです。なぜなら

DMG森精機の“D“がDECKEL(デッケル)のD

だからです。元々はドイツの大手工作機械メーカ3社であるDECKEL(デッケル)、MAHO(マホ)、GILDEMEISTER(ギルデマイスター)が合併してDMGという会社ができました。そして2009年にDMGと森精機が資本提携を行い、2013年には経営統合して社名がDMG森精機に変更されました。こうして知る人ぞ知る世界最大の工作機械メーカ“DMG森精機“が誕生したわけです。ちょっと古いですがDMG森精機について詳しく知りたい人はこういう本も出ているので読んでみると良いかもしれません。

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デッケルを知らなかったとしても、DMG森精機を知らないという人は流石に少ないと思います。つまり、みなさん間接的にはデッケルを知っているんですね。さて、話を戻しますが今回作るプラモデルはそんなデッケル社が1930年代に製作した万能フライス盤デッケルFP1です。この機械をざっくり説明するなら、これ一台で横形フライスにも立形フライスにもなるまさに万能な工作機械なんです。

細かい機械構造は完成したプラモデルを使って説明しますので、まずはプラモデルを作ってきましょう!!

デッケルFP1を組み立ててみよう

予防線を張るわけではないですが、私はプラモデル初心者なので細かい部分のアレコレは多目に見てくださいね。まずは箱と部品から見ていきましょう。

思ったよりも細かいです。現時点ではどこがどの部品なのかはよくわかりませんが、ボールネジやベルト・プーリー、チェーン・スプロケットなどの細かい機械要素のモデルもしっかりあるので、まずここでテンションが上がります。T溝テーブルもいいですね、この部品だけでも相当な工作機械感がありますよ。

何気に説明書が優秀です。組立方法だけでなく、デッケル社の歴史やデッケルFP1の機械としての特徴がしっかり書いてあって、工作機械マニアにはたまりません。こういう情報って入手が難しいので、非常にありがたい。この説明書だけでも十分に価値があります、これは凄い。

では早速、塗装作業に入ります。

プラモ初心者ながら道具だけは立派に揃ってます。それこそ数年前に、車のプラモデルを作ろうと思ってエアブラシと塗装ブースだけは買ったんですよね、それも結構高い奴を。一度も使わずに放置していたので、それらを引っ張り出してきました。塗った部品はこんな感じ。

道具が良いだけあって、初めてにしては割と綺麗に塗れたと思います。塗る前に全部の部品を切り離してしまったので、塗装に苦労しました。枠から取り外す前に塗装するという方法もあったみたいなので、次回への反省とします。

本当はボディは緑に塗ろうと思ったんですが、塗装前の塗料をかき混ぜるのを忘れていて全然違う色になってしまいました。「まあこの色でも渋いし・・いいかー」なんて考えていたら、結局全部の部品を塗りきれず・・・なくなく、一回全て白に塗り直してから念のために買ってあったブルーに塗装し直しました。

紆余曲折ありましたが、なんとか塗装が終わったので組立!

内部まで細かい作りになっていて、かなり良い感じ。中なんて組み立てた後にはほとんど見えないのに、ちゃんと部品が入っているんですね。この拘り・・・熱いですね。細かい作りのおかげで、プラモを組み立てながら機械の構造をしっかりと学ぶことができました。思った以上に勉強になって、思わぬ収穫でした。プラモ、恐るべし!

そして・・・完成!!

何これ、カッコよすぎるのだが?

カッコよすぎなんだが?

自分が作った料理は異常に美味しく感じるのと同じように、苦労して作ったプラモはとてもカッコよく感じますね。この達成感・・・癖になりそう。これはプラモ作りの沼にハマるかもしれません。

完成したプラモを見てみよう

では作ったデッケルFP1のプラモデルを、工作機械設計者の視点で見ていきたいと思います。

操作できるハンドルは3つありますね。FP1は動作軸としては、主軸が前後に動く軸(赤色矢印)、テーブルが上下に動く軸(青色矢印)、テーブルが左右に動く軸(黄色矢印)の三軸を持っています。一般的な汎用フライス盤の場合、主軸が固定でテーブル側のみが奥行き上下左右の三軸方向に動く構成がほとんどです。この軸構成の時点でFP1が特殊なフライス盤であることがよくわかりますね。

このデッケルFP1の構造で何より珍しいのは、作業者の立ち位置です。通常のフライス盤では、機械の正面に立って作業します。でもこのFP1・・・正面に立ったらハンドルに手が届かずに操作できません。ではどこに立つのでしょうか。答えは機械の側面です。

これはなかなか斬新な立ち位置です。ワークを斜めの角度から見ることになるため、少し違和感がありますね。ただ、この独特の配置にも理由があります。FP1は万能フライス盤なので、横形フライスにも立形フライスにもなります。横形フライスとして使用する際、機械側面の立ち位置の方がワークを観察しやすいようです。

このプラモデルでは、立派な立形主軸がついていて立形フライスに見えますが、FP1の基本構成は横形フライスです。メインの動力源と主軸は上図で示した通りです。背中に背負ったモータがメインの動力であり、横形主軸がメインの主軸です。立形主軸は申し訳ない程度にちょこんと載っている感じですね、上部に乗っているのはあくまでもサブのモータです。ちなみに横形フライスとして使用する場合は、この立形主軸は取り外してしまいます。

デッケルFP1は更に面白い機構を持っています。位置決めの軸として、立フライス用の主軸が傾斜可能であり、更にテーブル側も傾斜させることができます。これにより複雑な角度の加工もこなす事ができます。FP1は3軸動作、2軸位置決めの5軸フライスな訳です。更に横、立両方向の主軸を備えている・・・まさに万能の名に恥じぬ構成ですね!!現在の同時5軸マシニングセンタにも通じる軸構成です。

個人的に面白いと思ったのは、この大きなオイル受けです。切粉受けかと思いきや、これは潤滑油回収用の受けですね。機械のベースが潤滑油のタンクを兼ねる構造になっており、主軸の動力を使ってポンプを回しています。このポンプで潤滑油を組み上げて、切削加工に使用しているわけですね。この構造は現在の工作機械のクーラントタンクの思想と同じですね。主軸の動力でポンプを回しているあたり、今の工作機械より省エネかも??この辺りの主軸関連の駆動の構造は舌を巻きますねー、昨今はこういうギア駆動をガッツリ設計することは少ないのでこの時代の設計者が羨ましくも思います。

というかそういった内部構造まできっちり作り込んでいるこのデッケルFP1のプラモデル・・凄すぎないか??

感想

デッケルFP1のプラモデル恐るべし。いや、ファインモールド社恐るべし。工作機械のプラモ作りをとても楽しむことができました。正直、塗装とか組立とか結構細かい作業が多くて面倒な部分もありましたが、妥協せずにしっかり作って良かったです。この達成感は本当に癖になりそう!!

最近、仕事的にも忙しい日が続いているので、仕事では工作機械の現場立会で実機を組み立てて、帰ってきたら工作機械のプラモデルを組み立てて・・・と工作機械にまみれた幸せな日々を過ごせました(笑)

工作機械のプラモデルがあと2つしかないと思うと、少し寂しいですね。現時点のラインナップでは構造がシンプルな工作機械しかプラモデル化されていないので、”同時5軸マシニングセンタ”とか出て欲しいですね。オークマとかDMG森精機とか、現在出てないメーカーの機械だと尚更良いです。理想を言えば、家でプチJIMTOFが開催できるくらい色々な機種を販売してほしんですけどね(笑)

工作機械は生産財なので、一般の方に認知される機会は非常に少ないです。それでも日本産業を支える縁の下の力持ちであり、非常に大切な役割を担っています。縁の下の力持ちだからといって、世間に知られてなくてよい理由にはなりません。工作機械という縁の下の力持ちがいるということは、世間一般に広く知れ渡るべきだし、興味を持ってもらいたいと思っています。そういう意味でも、工作機械がプラモデルとして販売されるというのは非常に喜ばしいことですし、重要な意味を持っていると思います。

何様だと思われるかもしれませんが工作機械に携わる者の一人として、ファインモールド社さんにはお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございます。

次回は、牧野のマシニングセンタかマザックのタレット旋盤か・・・どちらを先に作ろうか迷いますが、一番の楽しみは後にとっておく派なのでとりあえずマザックのタレット旋盤が先かな。私はマシニングセンタの設計者なので、やっぱりマシニングセンタのプラモデルが一番楽しみなんです。少し間が開くとは思いますが、またプラモ製作記事を書きたいと思いますので、暖かい目で見守っていただければと思います。

●ファインモールド社H P

ファインモールド

ちなみに、今回私が使用したエアブラシと塗装ブースはこちらです。結構高いですが、かなり定番のものっぽいですね。エアブラシは私のような初心者でも扱えるようにカラーのガイドブックが付いてきてかなり役に立ちました。あなたの工作機械のプラモデルを作ってみませんか!?

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