誰でもわかる”Oリング”の基礎の基礎

シール

機械を動かすために、空気や水、油などのさまざまな“流体“が使われています。それらの流体が機械から漏れないように封じるための機械要素が“密封装置“です。車のエンジンからオイルが漏れないのも、あなたの水筒からお茶が漏れてこないのも、全てはこの密封装置が頑張ってくれているおかげなんです。

 

密封装置にはオイルシール、パッキン、ガスケットなど種類や呼び方は色々とあります。本記事では、その中でも最も使われることが多い“Oリング“にフォーカスして解説していきます。その仕組みから取り付け方法、Oリングに関わる基礎の基礎をわかりやすく説明します。Oリングなんて知っているよという中堅設計者の方も復習がてら、ぜひ読んでみてください。たかがOリング、されどOリングです。あの有名なチャレンジャー号の墜落事故の原因もOリングに起因するものなんですよ。

Oリングってなに?

百聞は一見にしかず。まずは実物を見てみましょう。これは私が東急ハンズで適当に買ってきたOリングです。ホームセンターでも売ってますね。

 

 

名前の通り、O“のリングですね。材質はゴムですね、言ってしまえば輪ゴムですね。NBR(ニトリルゴム)が一般的な材質で、家庭にある輪ゴムほどの弾力はありません。用途によっては、ウレタンやテフロンなどの樹脂素材のものもあります。

 

 

Oリングの役割は、流体の漏れを防ぐことです。これは密閉装置全てに言えることですね。Oリングの最大の利点は、形状が非常にシンプルであり汎用性が高いことです。

 

・部品形状を複雑にしなくても機械の密封が保てる

・サイズが規格化されており、代用品の入手が容易

 

などの恩恵があります。実際に私が購入したことでもわかるように、身近なところで簡単、安価に手に入ります。そして正しく使えば密封性能は抜群です。これは実に素晴らしい機械要素ですね。では、こんなヘアバンドみたいなゴムの輪っかが、どのように密封の役割を果たしているかを見ていきましょう。

Oリングの密封原理

Oリングの密封原理は、見た目と同じくらいシンプルです。Oリングを取り付けるための溝はOリングのサイズよりも小さく作られています。部品を組み付けた時、Oリングが圧縮されます。圧縮されたOリングにはゴムが元に戻ろうとする力(反発力)が発生します。この反発力により、流体の通り道を塞ぎ、密封を保つわけです。

 

 

Oリングをどれくらい押し潰すのか、その寸法のことを“つぶし代“と言います。当然、つぶし代がなくガバガバなら、流体はダダ漏れです。逆につぶし過ぎも禁物です。ゴムとはいえ、つぶし過ぎると永久歪が生じて元の形に戻らなくなってしまいます。そうなると反発力が低下してて、密封が保てず流体が漏れてしまいます。Oリングの取付設計においては、まず適切なつぶし代を確保することが重要です。推奨のつぶし代はOリングのサイズや用途によって異なりますので、何に使うかによって決めましょう。とは言っても、メーカの推奨寸法があるので、それを参考にすると良いでしょう。メーカの技術資料のリンクを貼っておきますね。

 

Oリングカタログ | ebook5
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Oリングはサイズによって、ゴムの径も異なります。なので、つぶし代を決める際は、つぶし率という指標を目安にします。難しい話ではなく、元のサイズの何%潰したかということですね。つぶし率と永久歪の関係は下記のグラフの通りです。特に覚える必要はありませんが、こういう考え方なんだなーということくらいは理解しておくと良いでしょう。

 

画像引用:NOK株式会社HP

 

細かいことを知らなくても思考停止でメーカの資料に従って、図面を書けばOリングの取り付けは成り立ちます。ただ、設計者であるならば“なぜその寸法なのか“を理屈で理解すること重要です。なぜゴムが永久歪を起こすのかという、アカデミックなところまで突っ込む必要はありませんが、せめて上記程度は把握しておくことが大切ですよ。

Oリングの種類

Oリングは、用途別に3つの種類に分けることができます。

 

 

・Gシリーズ ・・・ 固定用
・Pシリーズ ・・・ 運動・固定用
・Vシリーズ ・・・ 真空フランジ用

 

Gシリーズは、部品が動かない固定された場所に使用します。ちなみにGはGasketの頭文字です。

 

Pシリーズは、運動する部分に使用します。密封したい対象物が軸方向に往復運動したり、回転運動する場合はPシリーズを使用します。当然、運動していなくても使用できるので運動・固定用という表記になっていますが、基本的には運動がある部分に使用します。ただ「Oリングの種類分けがめんどくさいし、この機械は全部Pシリーズを使う」という横着しても別に問題ありません。そういう設計をする人も結構いますよ。PシリーズとGシリーズで同じ型番でも、ゴムの径サイズが若干異なるんですよね。PとGのOリングをつけ間違えると、つぶし代が変わって密封を保てなくなることがあるので、全てPに統一するのもバカ避け的な意味合いでは“あり“です。ちなみにPはPackingの頭文字です。

 

Vシリーズは、真空フランジ用のOリングです。正直、私は使ったことがありませんので、あまり詳しくありません。あまり一般的ではない特殊用途ですね。ちなみにVはVacuumの頭文字です。

 

それぞれのG、P、Vシリーズでそれぞれ寸法を比較すると、同じ呼び番号でもG、P、Vの順番でOリングが太くなっていることが分かりますね。取り扱う際は、間違えないように注意しましょう。

 

また、ちょっとした雑学ですが・・・・

これも覚えておいて損はないですよ。間違って言葉を使っている人にドヤ顔で説明しましょう。

Oリングの使用方法

Oリングの具体的な使用方法はざっくり分けると

 

・円筒面での使用
・平面での使用

 

の二種類があります。

 

円筒面での使用では、ロッドの外周につけるかシリンダ内周につけるかで分かれます。運動用の用途で使用する場合、必然的に円筒面での使用する形になりますね。具体的な例を挙げればエアシリンダ、油圧シリンダなどが当てはまりますね。

 

平面での使用では、圧力が内圧か外圧かで溝の作り方が異なります。オイルシールメーカは平面のオイルシールにはを推奨していますが、加工の手間を考えると座グリ形状の方が良いですね。

 

また、運動用のOリングでよくある事例なんですが、Oリングは2重で使用することはオススメできません。「ここは漏れたら困るから、念のため2列のOリングにしよう」なんて考える人が結構います。一見正解に見えますが、実はこれには大きな落とし穴があります。このような使い方をすると、ロッドを動作させるたびにOリングとOリングの間に圧力をため込むことになってしまうのです。Oリングとはいえ、動かすたびに少しずつ流体がリークしています。それらの漏れ分がOリング同士の間に溜まってしまい、圧力が発生します。結果、Oリングに無理な力が掛かるため、動作が重くなったり、発熱したり、Oリングが変形して密封を保てなくなってしまいます。例はロッドの出戻ですが、回転でも同じ現象が発生した事例があるようです。気をつけましょう。固定シールの場合は、二列でも問題ありません。

 


また以前の記事でOリングの取付設計関連の注意事項を書きました。お時間あれば下記の記事にも目を通してみてください。

やりがち!?あるある機械設計ミス10選
設計者がついついやってしまいがちな代表的な"設計ミス10選"を紹介します。構想設計中のあなた、出図を控えているあなた、これから設計を始めるというあなたも必見です。失敗は成功の元、人の振り見て我が振り直せ。私の設計の失敗から学びましょう。

さまざまな不具合事例

Oリングは正しく使用しないと、高確率で不具合を引き起こします。設計が悪かったり、組立でミスがあったりと原因はさまざまです。どういうことが起こるのか、具体例を抜粋しました。

 

画像引用:NOK株式会社HP

 

あの有名なチャレンジャー号の墜落の原因もOリングにあります。知らない人のためにざっくり説明すると、1986年にアメリカのNASAが打ち上げたスペースシャトルチャレンジャー号が打ち上げから73秒で分解し、墜落。7名の乗務員が死亡したという悲惨な事故です。墜落の直接的な原因は、打ち上げ当日の朝、異常な程に気温が冷え込んだ影響で、Oリングが硬くなり、密封を保てずに、燃料ガスが機体外に吹き出したというものです。

 

原因を突き止めたのは、事故調査委員会に参加していた物理学者のリチャードフィリップスファインマン。事故の調査報告会で実際にOリングを氷水につけ込む実演を行い、どのように密封性が損なわれるかを示したというエピソードは有名です。低温下でOリングが機能しない可能性は、事前にわかっていたのにも関わらず、上層部が日程の遅延を許さずにゴリ押し。その結果、事故は起きてしまいました。技術者倫理の題材としても、頻繁に取り上げられる事例ですね。

 

このように、Oリングは重要な役割を担っており、シンプルな形状ながらその設計は難しいものなのです。

まとめ

本記事の復習をしましょう。

 

・Oリングとは、代表的な密封装置の一種。
・サイズが規格化されていて入手性が良い。
・Oリングを押しつぶすことで密封性を保っている。
・用途別にG(固定)、P(固定・運動)、V(真空)の3種類がある
・使用方法には、円筒面での使用と平面での使用がある。
・正しく使用しないと、高確率で不具合を引き起こす。


Oリングで最も難しいと感じるところは、取り付けた後に確認することができないということです。ねじれ、おさえ代不足、はさみこみや傷などの問題、ひどい場合には取り付け忘れがあったとしても、実際に流体が漏れるまでそれらの不具合が発覚することはありません。

 

極端な話ですが、ねじを取り付け忘れても、見た目で気がつきますし、他のねじが支えてくれて問題にならない場合すらあります。締め忘れなどもアイマークなどの管理で防止することは可能です。Oリングはそういったことが一切できないし、少しでもミスがあれば絶対に不具合が出るというシビアさがあります。他の密封装置にもいえる事ですけどね。それだけ気を使って、設計する必要があるということです。

 

おさえ代の確保は当然として、わかりやすい組立手順や作業性の良さなど考慮も非常に重要です。実際、私も多くの”お漏らし”を体験してきました。大体は組立ミスが原因ですが、その根底にあるのは組立手順や作業性の考慮不足なのです。ただのゴムの輪っかだと思って、あなどること無かれ。基本を理解したうえで使いましょう。

 

本記事では触り程度でしたが、詳しく知りたいならメーカの技術資料を読むのが良いでしょう。本記事もNOKの資料を参考に書きましたが、この技術資料はなかなか良いですよ。無料ですし、勉強になりますよ。

 

Oリング | シール製品 | 製品情報 | NOK株式会社
NOK株式会社の製品情報(Oリング)です。NOKは日本初のオイルシールメーカーです。NOKの技術から生み出される、オイルシールやメカニカルシール等の機能部品は、自動車業界だけでなく様々な領域で活躍しています。NOKグループは事業基盤であるシール技術、FPC技術、ロール技術のより一層の向上を図り、より強く独自性に富んだ部...