転がり軸受の種類と特徴~コロ軸受~

ベアリング 機械要素技術

転がり軸受の種類と特徴~コロ軸受~

転がり軸受には様々な種類があります。転がり軸受にはどんな種類があり、それぞれがどのような特徴を持っているのか・・・代表的なものを解説していきます。本記事では、多種多様な軸受けの中でも“コロ軸受“に焦点を当てて解説します。

転がり軸受の種類や特徴をざっくり知りたい!!
軸受けの基礎を学びたい、復習したい!!


本記事はそんなあなたにうってつけです。分かりやすく解説していきますよ。それではいきましょう!

転がり軸受の分類

転がり軸受は

・転動体の種類
・受けることのできる荷重の方向


で分類することができます。

転動体は玉”“コロ”の二種類、力の方向は“軸方向(スラスト)”“径方向(ラジアル)”の二種類で分類することができます。

玉軸受は、基本的に転がり抵抗が小さく、高速使用に適しています。コロ軸受に比べて、負荷能力は小さいですが、スラスト・ラジアル荷重の両方向を受けることも可能です。静音性にも優れています。

コロ軸受は、転動面と転動体が線で接触するため玉軸受けよりも負荷能力が大きいです。ただし、転がり抵抗は大きくなります。基本的にラジアルかスラストの一方向の荷重を受けることに特化しており、両方向の荷重を受けることができる種類は少ないです。

では、具合的なコロ軸受の種類に説明に入っていきましょう。

円筒ころ軸受

円筒ころ軸受の説明

その名の通り、円柱形状の転動体を用いた軸受です。玉軸受と比べ、転動体と軌道面の接触面が広くなるためラジアル方向の負荷能力が高いのが特徴です。内輪と外輪を分離することが可能で、軸受の組付けもしやすいです。また、転動体を保持するために、内輪、外輪もしくは両側に"ツバ"がついており、この"ツバ"により若干のスラスト荷重も受けることが可能です。"ツバ"の付き方で型式が異なります。

N型、NU形・・・N型では外輪、NU型では内輪がツバを持っておらずフリーとなっている。軸方向に自由に動くことができるため、軸の伸縮を吸収する自由側軸受として使用することができます。

NJ形、MF形・・・NJ型では内輪、NF型では外輪が片ツバを持っており、一方向のスラスト荷重を受けることができる。

NUP形 NH形・・・外輪は両ツバを持っており、内輪も両ツバだが片側は分離できるようになっている。ツバ輪をつけたのがNUP形、クサビのような形になっているがNH形。両方向のスラスト荷重を受けることができる。固定側の軸受として使用することができます。

一つの軸受けに複列でコロが入っている種類もあります。これは複列円筒ころ軸受と呼ばれ、単列のものより更に大きなラジアル荷重を受けることが可能です。私が設計している工作機械の主軸にもこの軸受がよく使用さてます。

針状ころ軸受

針状ころ軸受の説明

構成は円筒ころ軸受と同じですが、コロの大きさが直径6mm以下で長さが直径の3~10倍という細長いコロを用いるのが特徴です。これらのコロは"針状ころ"と呼ばれます。コロの直径が小さいため、内輪径の割に外輪径が小さくコンパクトで、型式も豊富です。コロが小さいことで、軸受内により多くのコロを入れることができるため負荷能力も高いです。

コロの径が小さいため、一つのコロが走行する距離が他の軸受に比べて多くなってしまいます。走行距離が多ければ、当然早く寿命を迎える可能性があります。装置の寿命=針状ころ軸受の寿命という機械や装置も多い印象です。具体的な例としては、遊星歯車減速機のプラネタリーギアには針状ころ軸受が使われており、減速機の寿命=針状ころ軸受の寿命となっていたりします。

円錐ころ軸受

円すいころ軸受の説明

転動体に円すい状のコロを使用した軸受です。円すいの中心線が軸受の中心線と一転で交わるように設計されています。ラジアル荷重と一方向のスラスト荷重を受けることができます。円すいを用いることで接触角を持つため、円筒ころ軸受に比べより大きいスラスト荷重を受けることができるようになっています。また、円すいころは、円筒コロより長い接触線を得ることができ、高負荷と耐衝撃性に優れています。円すいの角度が大きいほど、よりスラスト荷重を受けることができます。転動体は内輪に設けられた大ツバによって案内されます。

自動車のトランスミッション、工作機械の主軸やテーブルなど広く用いられています。テーパーローラベアリングとも呼ばれます。

自動調心ころ軸受

自動調心ころ軸受の説明

内輪に二列の軌道、外輪は球面状の軌道をもっており、この中にタル状のコロを組み込んであります。この構造により軸自体のズレやたわみを許容しながら回転させることが可能です。軸やハウジングの加工誤差、組付誤差による芯ずれなどを自動的に調整させる目的で使用されます。

スラスト円筒ころ軸受

スラストころ軸受の説明

スラスト方向の荷重を受けることに特化した軸受です。一般的に許容回転数は低く、潤滑にも気を使う必要があります。

円柱形状のものを転がすと真っ直ぐ進んでいくことはイメージできると思います。スラスト円筒ころ軸受では、コロが放射状に並んで回転運動をしてるので、一見スムーズに転がっているように見えてますが、滑りが発生しています。これは差動すべりと呼ばれる現象で、発熱や潤滑不良の原因となります。スラスト円筒ころ軸受が高回転に向かず、潤滑に気を使う必要があるのはこういった理由からです。

まとめ

本記事の内容を復習しましょう。

・コロ軸受は、玉軸受より負荷能力が大きく、抵抗も大きい。
・コロ軸受には、円筒、針状、円錐、自動調心、スラストなどの種類がある。


コロ軸受は高い負荷が掛かる箇所使用されることが多く、使いこなすには取り付けのみならず軸受の潤滑や冷却に関する知識も必要となります。各軸受の説明欄でも書きましたが、工作機械の主軸ユニットにもコロ軸受や玉軸受が組み合わされて使用されています。少しでも潤滑不良や冷却不良を起こせば、あっという間に軸受が焼き付いてしまうシビアな箇所です。軸受は取り付ければ終わりというものではなく、使いこなすには様々な知識が必要なんです。潤滑、冷却などの基礎もまた別記事で紹介していきたいと思います。

玉軸受の基礎に関しては、下記の記事でまとめていますのでお時間あれば合わせてご一読ください。

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