誰でもわかる”切削加工”の基礎の基礎

ものづくり技術

何でもよいですが身近なものを手にとって、それがどうやって作られているかを考えてみましょう。正直、どうやって作られているかはぱっと見ただけでわからないですよね。ですが、製造工程を一つ一つ遡っていくと、どんな製品でもかならずどこかで“切削加工”が関わっています。切削加工は世の中にある多くの加工方法の一つで、最もメジャーな加工法ともいえます。本記事では、そんな切削加工について誰でもわかるように簡潔に説明していきます。

 

切削加工ってなに?

百聞は一見に如かず、まずは切削加工がどのようなものか見てみましょう。

 

 

大変迫力がありますね。これが切削加工です。切削加工を知らない方は何が起こっているのか全くわからないと思います。ご心配なく、この記事を読み終わる頃には、なんとなくわかった気分になれます。

 

イメージを掴んでもらったところで、説明に移りますが切削加工を説明するまえに、そもそも加工とは何なのか”を紐解いていきましょう。加工という言葉の辞書で引くと

 

原料や材料に手を加えて製品を製作すること、またはその製作作業のこと

 

とあります。まあ、そのままの意味ですよね。ポイントは「手を加えて」という所です。日曜大工で木に穴を開けるはもちろん、ペンキで色を塗るのも広義の意味では加工ということになります。加工は、どのように手を加えるかによって種類を分別することができます。

 

 

上図の説明の通り切削加工とは、除去加工の一種で材料から不要な部分を削り落として製品を作る加工のことです。削り落とすために、専用の機械や道具を使用します。木やプラスチックなどの樹脂を削るのも切削加工ですが、本記事では金属の切削加工に焦点を当てて説明していきます。(一般的に、切削加工といったら金属の加工をイメージする人が多いです。)

 

切削加工の種類

切削加工は大きく二種類に分けることができます。

 

 

材料が回る・・・旋削加工 

工具が回る・・・フライス加工

 

旋削加工は円筒形状の加工に適しており、フライス加工は平面形状の加工に適しています。世の中の大体のものは、円いものと四角いものの組合せですので、旋削加工・フライス加工でほとんどの製品を形作ることができます。

切削加工に必要な機械や道具

切削加工の種類がわかったところで、次はどういった道具で切削加工を行っているか理解しましょう。

 

材料

道具というと語弊がありますが、切削加工のためには当然加工すべき材料が必要です。材料の種類は、その部品の用途によって異なりますが、一般的なのはアルミや鋼ですね。現場では、加工対象の材料を“ワーク”と呼びます。また材料によって削りやすさが異なります。当然、硬い材料は削りにくく、柔らかい材料は削りやすい訳です。

 

気持ちよく楽に削れるように調整された材料もあり、それらは快削材と呼ばれます。削りやすくなるような成分が調合されています。逆に削るのが難しい硬い材料は難削材と呼ばれます。飛行機のジェットエンジンに使われるような耐熱性の高い材料など特殊な性質を持っているものが多いです。

工作機械

切削加工を行う機械です。材料と工具を工作機械に取り付けて、切削加工を行います。

 

旋削加工を行う機械・・・旋盤(せんばん)

フライス加工を行う機械・・・フライス盤

 

といいます。また旋盤、フライス盤という呼び方は人が手で機械を動かして加工する汎用機械の呼び方で、今ではプログラムで運転や工具の交換を自動的に行ってくれる機械が多いです。そういったコンピュータを搭載した工作機械は、NC工作機械と呼ばれ、旋削を主として行う機械をターニングセンタ、フライス加工を行う機械をマシニングセンタと言います。一台の機械で、旋削もフライス加工もガッツリできる”複合加工機”と呼ばれる工作機械もあります。

 

工具

どのような切削をするかによって、工具の種類も様々です。ざっくり分けると旋削加工のための工具とフライス加工のための工具に分けることがです。

 

 

画像引用:サンドビック株式会社三菱マテリアル株式会社

 

旋削加工用の工具はバイトと言います。どういう形状を加工するかによって色々な形がありますので、用途によって使い分けます。フライス加工用の工具は代表的なもので言えば、フライス、エンドミルなどがあります。細かく説明するとかなりの種類があるのですが、ここでは割愛します。まずは旋削加工はバイト、フライス加工はフライスとエンドミルと知っておけばよいでしょう。

 

この工具を使って、削るわけですから、工具そのものは材料より硬くなければなりません。工具自体は、工具鋼や超硬合金などといった、とても硬い材料でできています。

切削水

冒頭の動画を見ていただいてわかると思いますが、金属で金属を削るわけですから、ものすごいエネルギーが必要です。切削加工をサポートするために、切削水や切削油を吹き付けながら加工する必要があります。切削水の用途は大きく分けて3つあります。

 

潤滑・・・材料と工具の間を潤滑して、摩擦を減少させる

冷却・・・加工で発生した熱を取り除く

洗浄・・・加工の邪魔にならないように切屑を素早く除去する

 

切削水をかけて行う加工をウェット加工、切削水を使わない加工をドライ加工と言います。近年では、石油資源の枯渇問題などの環境要因でドライ加工を推奨する声も大きくなってきています。

切削現象の基礎

実際に切削時には工具と材料の間でどのような現象が起きているのでしょうか。下記の図は、旋削加工をしているときの、刃先とワークの間の模式図です。少し小難しい話になりますので本記事では割愛しますが、それぞれの用語くらいはフワッと覚えておくとよいでしょう。

 

 

切削理論は、細かく説明しだすとキリがありません。ここでは、そういう学問の分野があるということを知っておいていただければ十分です。

まとめ

本記事の要点を復習しましょう。

 

・材料から余分な部分を削り取るのが”切削加工”

・切削加工には”旋削加工”と”フライス加工”がある

・材料が回転するのが旋削加工

・工具が回転するのがフライス加工

・切削加工には、工作機械、工具、ワーク、切削水が必要

・切削現象は奥深く、その分野の学問がある

 

私が切削加工と出会ったのは、高校に入学した時でした。その頃は金属の種類も知らなかったので、金属=鉄(めっちゃ硬い)。そのくらいの認識でした。初めて、工作機械での切削加工を見たときは、「鉄を使って鉄を削るなんて・・・一体何が起こっているんだ」と強い衝撃を受けたことを覚えています。素手では、傷つけることもできないような硬いものを、いとも簡単に削って好きな形にしてしまう。そんな切削加工の世界に魅了されるのに時間はかかりませんでした。

 

私は切削加工を行う工作機械自体に強い魅力を感じました。一方、同じように衝撃を受けた私の友人は加工自体に強い魅力を感じ、自身の加工技術を毎日磨いていました。彼は高校の旋盤競技の全国大会で見事一位に輝き、就職後も技能五輪という技能のオリンピックで活躍しました。今も毎日、切削加工に明け暮れています。一方、工作機械の世界に魅了された私は、大学へ進学し、今では工作機械を設計する仕事をしています。

 

何が言いたいかというと、切削加工の世界は人の人生を動かすほどに奥深く、面白いということです。切削加工については、本ブログでもっと掘り下げて説明していくつもりなので、もし興味があればそちらも是非ご一読ください。