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"誰でもわかる"シリーズ 潤滑 機械要素技術

潤滑油とは?役割・種類・粘度を図解でやさしく解説

潤滑油とは、機械の動く部分に油膜をつくり、摩擦や摩耗を減らすために使う油です。歯車、軸受、エンジンなどで使われ、部品を滑らかに動かすだけでなく、冷却やさびの防止にも役立ちます。

潤滑油を理解する入口は、「役割」「基油と添加剤」「粘度と粘度指数」の3つです。本記事では、鉱物油と合成油の違い、グリースとの違い、ISO VGの読み方まで、機械を学び始めた方にもわかるように説明します。

潤滑油とは?まず「潤滑」の意味を知ろう

「潤滑」は、物体同士が動くところの摩擦や摩耗を減らすことです。「潤わせて滑らす」と考えるとイメージしやすいですね。機械では、接触する面の間に潤滑剤を供給して、動きを助けます。

歯車への給油、石鹸で手が滑る様子、雨で濡れた階段で滑る様子を使った潤滑の例

身近な例では、石鹸と水が付いた手は、乾いた手よりも滑りやすくなります。私は雨の日に階段で足を滑らせ、アバラ骨にヒビが入ったことがあります。滑りやすさを、アバラ一本を代償に体感してしまいました……。

機械で使う潤滑剤には液体の油だけでなく、グリースや固体潤滑剤もあります。そのうち、液体の油を使うものが潤滑油です。

潤滑油とグリースの違い

グリースは、基油に増ちょう剤などを加えて、半固体状にした潤滑剤です。油よりもその場にとどまりやすく、給油装置を簡単にしやすい一方、循環する油のように熱を外へ運ぶ使い方には向きません。使い分けは回転速度、温度、給油方法などで決まります。NSKのグリース潤滑の解説も参考になります。

潤滑油の役割とは?

金属面が直接接触する状態と、間に油膜がある状態の模式図

部品の表面は、見た目が滑らかでも細かな凹凸があります。その間に油膜をつくることで、金属同士の直接接触を減らします。ただし、運転条件によっては油膜が薄くなり、一部で接触が起きる場合もあります。油を入れれば、いつでも完全に離れるというわけではありません。

  • 摩擦を減らし、動作に必要な力やエネルギーの損失を抑える。
  • 摩耗を抑え、部品の形状や機能を保つ。
  • 摩擦による発熱や焼付きを防ぐ。

歯車は歯のかみ合いで力を伝えますが、その歯面では転がりと滑りが生じます。軸受でも接触部の潤滑が大切です。潤滑が不十分だと、摩耗や発熱、振動・騒音などにつながることがあります。

潤滑油には、摩擦を減らす以外にも次の働きがあります。どの働きが求められるかは、機械と油の用途によって異なります。

働き役割の例
冷却発生した熱を受け取り、別の場所へ運ぶ。
防錆・防食水分などから金属面を保護する。
清浄・異物の搬出汚れを分散させたり、循環油で摩耗粉などをフィルタへ運んだりする。
密封すき間を油で満たし、漏れを抑える。

軸受における潤滑の目的は、NSKの潤滑の解説でも整理されています。機械の中では、油がいくつもの役割を受け持っているんですね。

潤滑油は「基油」と「添加剤」からできている

一般的な潤滑油は、主成分となる基油(ベースオイル)と、性能を補う添加剤で構成されます。添加剤には、酸化を抑えるもの、摩耗を抑えるもの、さびを防ぐものなどがあります。配合は用途によって異なります。

基油の種類概要選ぶときの考え方
鉱物基油原油から潤滑油に適した成分を精製してつくる。多くの機械で使われる。精製方法や添加剤によって性能が変わる。
合成基油PAOやエステルなど、化学的につくられるさまざまな基油。種類により低温特性や高温での安定性などが異なる。材料との適合性も確認する。

鉱物基油と合成基油の分類は、ENEOS「潤滑油基油の種類」で確認できます。「合成油なら必ず上位互換」「鉱物油ならどんな機械でも十分」とは言えません。必要な性能、シール材との適合性、機械メーカーの指定などを合わせて選びます。

潤滑油の性質:粘度・粘度指数・酸化安定性

製品の仕様を見ると、似た名前の指標が並びます。まずは、粘度と粘度指数を分けて考えましょう。

粘度と動粘度、ISO VGの読み方

潤滑油の粘度が低い状態と高い状態の比較

粘度は、流れにくさを表す量です。身近な言葉なら、サラサラしているか、ドロドロしているかの違いです。図の油膜の厚さは、ほかの条件が同じ場合の傾向として捉えてください。実際の油膜は、粘度だけでなく荷重、速度、温度などにも左右されます。

潤滑油の仕様によく登場する動粘度は、粘度を密度で割った量です。動粘度そのものが単位なのではなく、mm2/sなどの単位で表します。温度で値が変わるため、測定温度もセットで確認しましょう。

ISO VGは、40℃における動粘度に基づく粘度分類です。たとえばISO VG68なら中心値は68 mm2/s、分類の範囲は61.2〜74.8 mm2/sです。製品の実測値がぴったり68である、という意味ではありません。出光興産の工業用ギヤ油の解説に分類表があります。

油の容器にあるISO VG表示と、40℃での動粘度による分類の説明

画像引用:MiSUMi-VONA

粘度が高ければ、いつでも良いわけではありません。必要以上に高いと攪拌抵抗などの損失が増え、低すぎると必要な油膜を得られない場合があります。まずは機械メーカーが指定する粘度・油種を確認してください。

粘度指数(VI)は温度による変化の目安

指標見ているもの
動粘度ある温度で、どのくらい流れにくいか。
粘度指数(VI)温度が変わったとき、動粘度がどの程度変化するか。

一般に油は、温度が高くなると粘度が下がり、低くなると粘度が上がります。粘度指数が高い油ほど、温度による粘度の変化が小さいという関係です。同じISO VGでも、粘度指数が違えば低温時・高温時の粘度は異なります。

高い粘度指数は、温度変化の大きい使い方で役立つ性質です。ただし、粘度指数だけで耐摩耗性や酸化安定性まで決まるわけではありません。出光興産の油圧作動油の解説では、省エネルギーとの関係も紹介されています。

酸化安定性とは?油の交換が必要になる理由

酸化安定性は、油が酸化によって劣化しにくい性質です。油は使用中に熱や酸素の影響を受け、酸化が進むと粘度の変化やスラッジなどの生成につながります。劣化の程度は、基油の種類だけでなく添加剤や使用条件にも左右されます。

水分や異物の混入、添加剤の消耗など、酸化以外の理由でも油の交換が必要になります。「合成油に替えたから交換間隔を延ばせる」と自己判断せず、設備や油のメーカーが定める交換・点検条件を確認しましょう。エンジン油の劣化の例はENEOSのエンジンオイルの解説でも確認できます。

潤滑方法の種類

油を消費する全損式と、回収して再利用する反復式の模式図

潤滑油の使い方は、使用した油を回収するかどうかで、大きく次の2つに分けて考えられます。図は仕組みのイメージで、描かれたスプレー製品をあらゆる潤滑箇所に推奨するものではありません。

方式使い方例
全損式供給した油を回収せず、消費しながら潤滑する。チェーンへの注油など。
反復式一度使った油を、再び潤滑に使う。油浴、飛まつ、循環給油など。

反復式のうち、ポンプなどで油を循環させる方式では、冷却やろ過も行えます。一方、油浴のように油をためて使う方式もあります。「油を再利用すること」と「ポンプで循環させること」は同じ意味ではありません。軸受での具体的な方法はNSKの油潤滑の解説を参照してください。

まとめ

本記事の要点を復習しましょう。

  • 潤滑油は、油膜によって摩擦や摩耗を減らすための油。
  • 一般的な潤滑油は基油と添加剤で構成され、基油には鉱物系・合成系などがある。
  • 動粘度と粘度指数は別の指標。ISO VGは40℃の動粘度に基づく分類。
  • 性能は基油の種類だけでは決まらない。機械の指定と運転条件に合わせて選ぶ。
  • 油は劣化・汚染するため、決められた条件で点検・交換する。

次に学ぶ:油圧と軸受

油で力を伝える仕組みは油圧の基礎、機械の回転を支える部品はボールベアリングの基礎で解説しています。油が「どこで、何のために働くのか」がつながると、機械を見るのが楽しくなります。

余談:「私は潤滑油のような人間です」

就職面接で「あなたをものに例えると何ですか?」と聞かれ、「私は潤滑油のような人間です」と答える話がありますよね。私が面接官なら、「では、どのような潤滑油ですか?」と聞きたくなります。

「私は化学合成油です。過酷な状況でも潤滑し続けます!」なんて答えたら印象には残りそうです。ただし、これは面接のたとえ話。実際の合成油にも使用条件と寿命があります。むしろ「私は潤滑油を送り出すオイルポンプです!」なら、周りを支える人という意味が伝わるかもしれません。

ちなみに私は、自分のことを「情熱が原動力のスターリングエンジン」と例えていました。何言ってんだこいつ?という顔をされたことがありますが、スターリングエンジンを知っている面接官には評判がよかったです。あだ名がしばらく「スターリン」になりますが、印象には残せました。

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