空気圧 "誰でもわかる"シリーズ 機械要素技術

誰でもわかる”空気圧”の基礎の基礎

世の中には様々な機械があります。その様々な機械達は人の生活を豊かにするためにせっせと働いていてくれているわけですが、それらの機械ってどういうエネルギーで動いているか意識したことありますか?

車だったらガソリンだし、ロボットだったら電気とかじゃないの?

まあ、概ね当たりです。ただ、本記事でテーマとして扱うエネルギーは電気でもガソリンでもなく、もっとどこにでもあるありふれたもの・・・・そう、"空気"です。空気を使って動く機構や機械があるんです。そんな不思議な"空気圧"の世界を誰にでもわかりやすく紹介していきます。

空気圧って?

空気で機械が動く、何て言われてもにわかには信じがたいですよね。

空気で機械が動くなんて考えられないなぁ。
わかった、風を使うんでしょ?ヨットみたいな感じで!!


まあ、それもある意味正しいですが、機械の動力には風ではなく、"圧縮空気"が使われます。"空気圧"とも呼ばれ、色々な機械で広く使われるエネルギーです。圧縮空気なんて言うと、物々しく感じるかもしれませんが、皆さんも日常生活で関わったことがあるはずです。身近なもので言えば、自転車のタイヤなどがそうですね。空気入れで一生懸命タイヤに空気をいれたことありますよね? あれは空気を圧縮してタイヤの中に詰め込んでいるんです。広い意味では、タイヤも空気圧を利用した機器の一つになりますね。

機械の場合は、タイヤと違って圧縮空気を貯めた状態で使うのではなく、貯めた空気を出して使います。イメージで言えば、風船を大きく膨らませておいて、必要なときにその口を開放して空気を使う感じです。

え?結局、風じゃん。

風船の例えでは、そうなってしまいますが、実際に使うのは風ではなく、空気が持つ”圧力”です。圧力とは、 “物体の面を押す働き“のことです。なんとなく、学校で習った記憶が蘇ってきませんか?蘇ってこない場合は、物理の授業の時に寝ていた可能性がありますよ。機械では空気圧を利用することで、物体の面を空気で押して色々なものを動かすことができます。

風と圧力の違いは、密閉されているかどうかです。またまた風船を例にして見ていきましょう。下図をご覧ください。風船の先が密閉されていないと、風船から出た空気は壁に当たってそのままどこかへ行ってしまうのはわかりますよね。これがもし密閉されていたとすると、空気の持っているエネルギーはそのまま壁を押す“圧力“へと変わります。この圧力を上手いこと使って色々してやろうぜっていう技術が空気圧利用の技術です。

では、実際に空気圧を使ってどんなことができるのかみていきましょう。

どんなことができるの?

空気圧を利用してできる動作は主に3つです。

・直線運動・・・真っ直ぐ進む往復動作。電車のドアの開閉など。
・回転運動・・・ぐるぐる回る回転動作。歯医者のドリルなど。
・揺動運動・・・決められた角度回転する動作。ロボットの関節など。


動作としては非常にシンプルですね。ですが、侮ることなかれ!!どんな複雑な動きをする機械でも、基本的にはシンプルな動作の組み合わせです。例えば、この恐竜ロボットなんかも空気圧で動いているんですよ。

この恐竜ロボットに関しては下記の記事で解説しているので、気になったら読んでみてくださいね。


身近なもので言えば、電車やバスの自動ドアなどには空気圧が利用されています。開く瞬間、プシューって音がしますよね、あれは空気が抜けている音なんです。また、歯医者のドリルなんかもそうですね。多くの子供たちを恐怖のどん底に陥れるあの「キュイーン」というドリルの音は、まさに圧縮空気でタービンを回した時のものです。このように、気が付かないだけで“空気圧“は我々の生活に深く浸透しています。ひとまず空気圧を利用してできる動作はわかりましたね。次は、この空気圧での動作を実現するためには具体的にどんな機器が必要なのか見ていきましょう。

空圧機器の種類

空気圧を使ってものを動かすために必要な機器を学びましょう。これらの機器は“空圧機器”と呼ばれます。"空気圧機器"でも間違っていませんが、一般的には空圧機器と呼びますね。ゴロが良いからですかね?まあ、それは置いておいて・・・空圧機器の構成はざっくり表すと上図の通りです。では、それぞれの役割をさっと理解していきましょう。

コンプレッサ

圧縮空気を作り出す心臓部です。ポンプを使って圧縮空気を作り、タンクに溜め込見ます。ここで作られた圧縮空気が、必要なタイミングで機械に供給されていきます。空圧機器にとっては命の源とも言える非常に重要な部分です。

フィルタ

空気中は目に見えないゴミ、水分、油分などを多く含んでいます。普段生活している上では気にならないんですけどね、圧縮空気を作るとそれらのゴミも圧縮して集めることになります。それをそのまま放置しておくと、圧縮空気と一緒にゴミや水分を送ることになるため機器が壊れてしまいます。なので、空気を清浄化するフィルタがついているわけです。一つのフィルタで全ての汚れが取れるわけではなく、汚れの種類に応じて色々なフィルタがあります。

アクチュエータ

アクチュエータとは、“入力されたエネルギーを物理的な運動に変換する機構“の総称です。ちょっと小難しい定義ですが、要するに空気圧を動作に変換する機器です。用途で説明した通り、空気圧は3つの動作が可能です。この動作を行うため、それぞれ対応したアクチュエータがあります。

画像引用:SMC HP , モノタロウ, 中央理化 HP

エアシリンダ・・・直線運動
空気圧モータ・・・回転運動
揺動シリンダ・・・揺動運動


全て圧縮空気が機器に入ることで動作します。エアシリンダの概略図を図に示しましたが、見ての通り仕組みは非常にシンプルです。圧縮空気がシリンダの面を押して、ロッドが出入する。ただそれだけです。それは他のアクチュエータに関しても同じで、この構造のシンプルさが空圧機器の一つの特徴でもあります。

方向切替弁

アクチュエータが動作する方向を切り替えるための弁が“方向切替弁”です。そのままですね、ソレノイドバルブとも呼ばれます。空圧機器はこの方向切替弁を利用して、動きのコントロールを行います。

・エアシリンダであれば、ロッドの動作方向
・空圧モータであれば、回転方向
・揺動シリンダであれば、揺動する方向


を切り替えることができます。また、単純に方向を切り替えるだけでなく、動作を停止させたり、動力を遮断したりする仕組みもあります。細かく説明するとキリがないで、代表的な形だけ知っておくと良いでしょう。記憶の片隅に置いておくと、空気圧を扱うときに役に立ちますよ。

方向切替弁に関しては詳しい解説をすると、それだけで1つの記事が書けてしまうほどボリュームがあります。(それだけじゃ収まらないかも?)それは、後日別記事で書くとして、今回は基礎の基礎なので本当にざっくり駆け足で説明していきます。

方向切替弁の種類は、ポート数、ポジション数で分けることができます。

ポート数

代表的なポート数は4ポートか5ポートです。ポートとは空気の出入り口のことです。エアシリンダの例から解るとおり普通に考えれば、4つあれば事足りますよね。空気圧の供給、排気、アクチュエータへのヘッド側とロッド側の4つです。 5ポートの場合は、2つの出力方向に対してそれぞれ独立した排気ポートを持つことができます。 伸びるときと縮むときで、空気を排気するポートを変えれるということです。

ポジション数

方向制御弁が何個の部屋を持っているかで種類が分かれます。代表的なのは、2位置か3位置です。 下記の簡略図の四角形の部屋を何個持っているかとうことですね。2位置の場合、上図のシリンダの例で説明すると ロッドが伸びる、ロットが縮むという二つの動作が出来ます。これが3位置になると、中央に部屋が追加されてロッドを途中で止める という動作ができるようになります。

3ポジションの中央の部屋には更に三つの種類があります。

クローズドセンタ・・・全ての回路がふさがれる。止まったあとは手で動かせない。
プレッシャセンタ・・・全ての回路に圧力が掛かり、力が吊りあった位置で止まる。止まった後は手で動かせる。
エキゾーストセンタ・・・アクチュエータの回路が大気開放になる。シリンダはフリーとなるので、手で動く。


といった感じです。詳しくはまた別記事で説明しますので、いまはそんなのがあるんだー程度の理解でOKですよ。

速度制御弁

アクチュエータの動作する速度をコントロールするための弁です。スピードコントローラー、略して“スピコン“と呼ばれたりします。なんか、急に可愛らしい感じがしますね。空気の流れを妨げることで、動作速度を落としてコントロールします。速度を上げることはできません。スピコンの取り付け方には二種類あり、空気の流れを入口で絞るか、出口で絞るかで分かれます。どっちでも一緒じゃん、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。どちらで絞るかで制御のしやすさが大きく変わります。入口で流れを絞る場合はメータイン、出口で絞る場合はメータアウトと呼びます。よほど特殊な場合でない限り、一般的にはメータアウトが使われますね。

また、スピコンは単純に流れを絞るだけではなく、流れを絞ることができる方向が決まっています。一方から空気を入れると普通に流れるけど、反対からの流れは絞れるといった具合になっています。つまり、取り付け向きが命です。

余談ですが新人の頃、スピコンのネジをいくら捻っても動作速度が変わらなくて、「このスピコン、不良品だ」と思って生産管理課に文句を言って交換してもらったことがあります。結論を言えば、逆に取り付けていたわけです。無知って恐ろしい・・・まあ、スピコンはそんなに高いものではないんですけどね。

さて・・これで一通り、空圧機器を理解できましたね。でも、ここで一つ疑問が浮かびます。

空圧機器って色々と準備が必要で、使うのがめんどくさそう・・。
もう普通に電気を使って動かせば良くない?


ごもっともな意見ですね。しかーし、当然ながら都合の良い点があるから広く使われているのです。空気圧のメリット・デメリットを見ていきましょう。

空気圧のメリット

空気はどこにでもある

恵まれたことにこの地球上には、どこにでも空気があります。なので、機器され揃えれば至る所で空気圧を利用することができます。もちろんコンプレッサを作動させるための電源は必要ですが、逆に言えばそれだけ利用可能です。この手軽さがメリットの一つです。

安全で容易に使える

電気なら漏電、ガスならガス漏れ、油なら油漏れなど人体に影響を与える故障があります。しかし、空気圧は空気を利用しているため、万が一の時も漏れるのも空気だけ。非常に安全です。人が近くにいても安心して、機器を使うことができます。

制御が簡単

基本的には説明した方向切替弁と速度調整弁だけで動作を制御することができます。システムもシンプルですし、制御的にもONとOFFしかないので少し勉強すれば簡単に動かせるようになります。

機器が単純で理解しやすい

空圧機器の構造は単純で理解しやすいです。何か問題が起こってもすぐに原因がわかります。また空圧機器を使った設計も比較的簡単に行うことができます。

機器がコンパクト

空圧機器はかなり動作原理がシンプルな分、機器自体もかなりコンパクトです。機械全体の小型化、軽量化に非常に有効です。電線も必要なく、圧縮空気を通すためにチューブさえ配管できればあらゆるところで利用することができます。

空気圧のメリットをざっくりまとめると、仕組みが簡単で気軽に使えるということが言えますね。

空気圧のデメリット

エネルギー効率が悪い

電気でコンプレッサのモータを回し、空気を圧縮する。そして、その圧縮した空気の圧力で、空気圧モータを回す。だったら最初から、電気でモータ回せば?って感じですよね。エネルギーは変換すればするほど、どんどんロスしていきます。一度、電気を空気圧に変換している時点でエネルギー効率的にはだいぶ不利になってしまいます。

ランニングコストがバカにならない

皆さん、空気なんて無料じゃんと思いますよね。その通り、空気は無料なんですが、圧縮空気は話が別です。圧縮空気を作るためには、コンプレッサが頑張って動くわけで、それには電気が必要です。この電気代がバカにならないです。私も空気はただだと思って、圧縮空気を無駄遣いして怒られたことがあります。

安全対策が難しい

空気が漏れても安全だとメリットで言いましたが、それとは別に“動作の安全“の問題があります。空気圧には、“残圧“という問題があり、空気圧回路の設計が悪いと回路上のどこかに圧力が残る場合があります。その圧力がアクチュエータに入り、意図せぬ動作(急に扉が閉じたりする)を引き起こす場合があります。また本来、圧力があって欲しい場所の圧力が抜けてしまい、エアシリンダなどが急動作などを起こす“飛び出し現象“と呼ばれる現象もあります。動作させるだけなら簡単ですが、安全を確保しようと思うと空圧回路の作り込みにはノウハウが必要なんです。

厳密な制御ができない

空圧機器でできるのは、単純な動作だけです。エアシリンダで言えば、伸びる、縮む、止まるの動作はできますが、例えば10mmだけ伸びるとか、10m/minの速度で伸びるといった厳密な制御はできません。そういった動作が必要な機械には、空気圧は向かないということです。

デメリットからわかるように空気圧は万能ではありません。当然、向き不向きがあるんですね。

まとめ

本記事の内容を復習をしましょう。

・空気圧は圧縮空気を使って、機械を動かす技術
・できる動作は、直線、回転、揺動の3種類ある
・空圧機器にはコンプレッサ、フィルタ、アクチュエータ、方向切替弁、速度制御弁がある
・空気圧のメリットは、容易に使えて人体にも悪影響のないエネルギーであること
・空気圧のデメリットは、効率が悪く、厳密な制御ができないこと
・電車などの自動ドアにも使われている


ここまで記事を読んでいただけばわかるとおもいますが空圧機器は、とにかく構造が単純で理解しやすいです。電気モータが回る原理を説明しようと思ったら結構大変ですが、空圧機器は”圧縮空気がここを押して動く、以上!!”って感じです。そのシンプルさゆえに産業用機器には特に多く用いられています。

逆に日用品の動力としてあまり用いられないのは、厳密な制御も出来ないし、そもそも圧縮空気を作ることが大変だからですね。 DIY好きな人などは、ガレージなどに自家用コンプレッサがある人もいると思いますが、アレ結構サイズが大きいんですよね。 うるさいし、あまり家庭向きではありません。 コンセントみたいに、家の各所に圧縮エアの供給口があれば便利なのになーと妄想したこともありますが、やっぱり日用品には使わないかも・・・(笑)

この記事を読んで初めて空圧機器を知ったという人がいたら、今度電車に乗ったとき、ドアが開く瞬間に耳を澄ませてみてください。プシューっというエアシリンダの排気音が聞こえるはずです。今まで気に止めなかったその音に少しでも興味を持っていただければ、この記事を書いた甲斐があるというものです。本記事ではかなりザックリ説明してしまいましたが、もう少し空圧技術を深く理解したいなという方は、合わせて下記の記事もお読みください。

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