人に寿命があるのと同じように、機械にも寿命があります。人はいつ死ぬか分かりませんが、機械の寿命は計算で推定することが可能なんです。軸受の寿命は機械そのものの寿命を決める大切な要素です。しっかり理解しておきましょう。
本記事では、軸受の寿命計算について例題を交えな解説していきます。転がり軸受の寿命計算方法が知りたい人、また軸受の基礎を学び直したい人にオススメです。それでは、早速いきましょう!!
転がり軸受の寿命ってなんだ?

軸受の寿命は、機械の用途や求める性能によって考え方が異なります。振動が増えた時点、回転精度が許容値を外れた時点、潤滑状態が悪化した時点などを、使用限界とする場合もあります。これらが必ず図の順番で起こるわけではありません。
本記事では、そのうち転がり疲れによる寿命を扱います。摩耗など別の損傷による寿命と区別して、軌道面や転動面の疲労はくり(フレーキング)に注目します。
軸受が寿命を迎えたらどうなるの?

軸受の軌道面や転動面に現れるウロコ状のはくりを、フレーキングと呼びます。負荷を受けて回転すると、軌道面や転動面には繰り返し荷重がかかり、転がり疲れによるはくりが生じることがあります。この転がり疲れによる最初のフレーキングまでを扱うのが、ここで説明する疲れ寿命です。すべての軸受が、他の損傷を生じずにこの状態まで使えるという意味ではありません。
寿命の定義

転がり疲れに対する寿命を表す指標に、基本定格寿命L10があります。同じ種類の軸受を同じ条件で運転した集団について、90%が転がり疲れによるフレーキングを生じずに到達できる回転数を、統計的な信頼度90%の寿命として表します。一定の回転速度で使う場合には、運転時間に換算して表すこともできます。
これは、実際に用意した10個のうち、必ず1個がその時刻に壊れるという約束ではありません。また、個々の軸受がL10まで故障しないことや、それを過ぎても問題なく使えることを保証する値でもありません。まず、集団の転がり疲れを扱う統計的な指標だと理解しましょう。
転がり軸受の寿命計算式
転がり軸受の寿命計算式は、下記の通りです。玉軸受とコロ軸受で式が異なります。
計算式

上記の式は、L10を100万回転単位の総回転数で表しています。運転の計画に使う際には、一定の回転速度nを仮定して時間へ換算できます。下図のLhは、この基本定格寿命を時間で表した値(L10h)です。「何時間後に個体が必ず壊れるか」を求める式ではありません。

基本動定格荷重
基本定格寿命が100万回転になるような、方向と大きさが変動しない荷重です。軸受のスペックを表す指標であり、各軸受ごとに軸受寸法表に記載されている数値です。基本動定格荷重が大きければ、負荷に対してより長い寿命を得ることができます。ラジアル軸受ではCr、スラスト軸受はCaと表されます。基本動定格荷重は軸受を選定する際、大切な指標となります。
軸受荷重(動等価荷重)
実際に軸受が受ける荷重です。軸受を使用する設計者が推定して決めます。単一方向の力が掛かり続けるのであれば、そのままその負荷が軸受荷重になります。しかし、実際の軸受はラジアル荷重とスラスト荷重の合成荷重を受ける場合が多いため、それらの合成力を一つの荷重に見立てて寿命計算に用います。具体的な使い方は寿命計算の実例で説明します。
寿命計算をしてみよう!!
実際に軸受の寿命計算をしてみましょう。今回計算に使用する軸受は、私がAmazonで購入したこの軸受とします。

※下記で行う計算はあくまでも単列玉軸受(6202)の計算です。軸受の種類やサイズが異なれば、計算方法や係数も変わりますので、あくまで計算の雰囲気を捉えるための参考として見てください。

まずは、この軸受の諸元を確認しましょう。軸受寸法表は各軸受メーカーのHPから閲覧・ダウンロードすることが可能です。
基本動定格荷重Cr =7650[N]
基本静定格荷重C0r =3750[N]
係数f0 =13.2
寿命計算では、掲載図のカタログに記載された上記の諸元を使用します。現行品の選定では、購入するメーカー・型式の最新の定格値と条件を確認してください。では、実際に寿命を計算してみましょう。
単純な荷重の場合

非常にシンプルな運転条件ですね。基本動定格荷重Cr =7650[N] なので、軸受の寿命計算に必要な情報は全てそろっています。寿命計算式に代入して軸受の基本定格寿命を計算しましょう。

計算上の基本定格寿命L10hは約3730時間です。集団の転がり疲れに対する信頼度90%の値であり、個々の軸受の故障時刻を示してはいません。この例の図では、3730.8時間を整数で切り捨てています。表示桁の丸めだけで、必要な設計余裕を確保できるわけではありません。
複数の荷重の場合

前項の条件に加えて、アキシャル荷重500Nが負荷されています。この場合、この二つの荷重を一つのラジアル荷重に置き換えて計算する必要があります。これを動等価荷重といいます。まずはこの動等価荷重を計算していきます。
ここで係数表の読み方に注意しましょう。f0Fa/C0r = 13.2 × 500 / 3750 = 1.76で、表の1.38と2.07の間です。旧図では1.38の行のY = 1.45をそのまま使っていましたが、ここではNSKカタログの比例補間による計算例(A34)に沿い、隣り合う値から求めます。
補間の割合r = (1.76 − 1.38)/(2.07 − 1.38) ≒ 0.5507
e = 0.30 + r × (0.34 − 0.30) ≒ 0.3220
Y = 1.45 + r × (1.31 − 1.45) ≒ 1.3729
Fa/Fr = 500/1000 = 0.5 > eなので、X = 0.56を用います。
旧計算図:荷重係数の選択を訂正しました
この図のe = 0.3、Y = 1.45は1.38の行をそのまま使った値で、1.76に対する補間値ではありません。訂正した計算は上の本文を参照してください。

動等価荷重はP = X Fr + Y Fa = 0.56 × 1000 + 1.37289855… × 500 ≒ 1246.45 Nとなります。この荷重を寿命計算式に代入すると、L10h = 106/(60 × 2000) × (7650/1246.449275…)3 ≒ 1926.5時間(約1930時間)です。途中の係数は丸めず計算し、最後に表示桁をそろえています。
旧計算図:補間前の1285 N・1758時間
この図は旧係数Y = 1.45による計算です。訂正後の動等価荷重と基本定格寿命は、直前の本文に示した約1246 N、約1930時間です。

この例では、アキシャル荷重500 Nが加わることで、計算上の基本定格寿命は約3730時間から約1930時間へ短くなります。ラジアル荷重とアキシャル荷重の割合で動等価荷重の係数も変わるため、係数の取り方と補間方法を確認しましょう。
例題では単純な2パターンを計算しました。実際には荷重や回転速度が時間とともに変化する場合もあり、運転条件を整理して平均荷重などを求める必要があります。まずは、ここで示した一定条件の計算と、その前提を理解することが大切です。
軸受の基本定格寿命を学んだら、設備全体の稼働や修復を扱う指標も区別しておきましょう。MTBFとMTTRの考え方では、信頼性と保守性を整理しています。基本定格寿命と同じ意味の指標ではない点に注目してください。
まとめ
本記事の内容を復習しましょう。
・この記事で扱う疲れ寿命は、転がり疲れによる最初のフレーキングまでの回転数または時間
・基本定格寿命(L10)は、同軸受を同条件で運転させ90%がフレーキングを起こさない総回転数
・軸受の寿命は一般的に“時間“で表す
・基本動定格荷重は、基本定格寿命が100万回転になるような、方向と大きさが変動しない荷重
軸受の寿命計算式自体は古くからJISで定義されているものです。物理の式ではなく経験値的な式のため、“この式で計算するとなんか現実の寿命と一致するねー”という感じで決まっています。なので、計算精度を高めるために、式自体が更新されることもあります。
使用環境や潤滑状態によって、軸受の実寿命は計算寿命と大きくズレてしまうことが問題視されていました。それらの要因を考慮した寿命計算式として、2013年には修正定格寿命Lnmなども規格化されました。このように経験式は日々、ブラッシュアップされていきます。
数字を入力すれば自動で寿命計算を行ってくれるツールはいくらでもありますが、その中ではこういった計算が行われていることをしっかりと理解しておかなければなりません。それは設計者を目指す学生であっても、現役設計者であっても同じことです。機械設計とは、機械の壊れ方まで設計するのです。自分の設計した機械が何時、どのように壊れるのかを原理原則から推定できていなければ、それは設計したとは言えません。これは私が恩師から言われた言葉でもありますので、皆様にも是非心に留めておいていただきたいです。
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定義と計算の参考:NSK(基本動定格荷重と疲れ寿命)、NSK転がり軸受カタログ(A24〜25・A34・B8〜9)。2026年9月22〜23日確認。



