あなたは“ラズベリーパイ(Raspberry Pi)“と聞いて何を思い浮かべますか?
なんか美味しそうだなあ・・・
そのイメージも間違いではありませんが・・・ちょっと違います。本記事で取り上げるラズベリーパイ(略して”ラズパイ”)は、食べ物ではなく累計3000万台以上売れている人気の“手のひらサイズのコンピュータ“のことです。安価に手に入り、とにかく色々なことに使えるため、ものづくりマニア達の間で根強い人気のある機器です。食べ物だと勘違いしてしまった人も大丈夫、本記事でラズペリーパイの概要をサラッと学びましょう。誰にでもわかりやすく紹介していきますよ。ラズベリーパイって一体どんなもので、どんなことができるんでしょうか?
ラズベリーパイって美味しいの?
美味しくはありません。なぜなら食べ物ではないからです。
ラズベリーパイは、イギリスで生まれた小型コンピュータです。教育用のコンピュータとして開発されましたが、非常に安価に手に入ることから、趣味の分野でも広く使用されることになりました。最初のモデルは2012年に発売されています。では、どのくらい小さいのか見てみましょう。
ちっさ!!!
嘘偽りなく手のひらサイズですね。写真は私が持っているラズベリーパイです。私は2つ持っていて、左が昨年買った新型のもので、右が6年前頃に買った古いタイプです。サイズ自体は変わりませんし、見た目もほぼ同じですが性能が違います。詳しくはあとで説明しますね。
こんな小さいもので何ができるの?って感じですよね。しかし舐めてはいけません。はっきり言って、これはもう普通にコンピュータなんです。ネットサーフィンをしたり、YOUTUBEで動画を見たり、Wordっぽいソフトで文章を書いたり、Excelっぽいソフトで表を作ったり・・・普通にコンピュータで出来る事はできてしまいます。もちろん、性能はデスクトップコンピュータの数分の一程度なんですが、それでも問題なく使えます。
上の写真は、ラズパイを使ってネットサーフィンをしている時のものです。ちゃんとパソコンとして機能しています。最初に見た時は、こんなに小さいのにすげー!と感動したものです。ただ正直な話、今はスマホの性能が上がりすぎて、手のひらサイズのコンピュータってだけではそこまで感動しませんよね。そう・・・ラズパイの魅力はサイズだけではないんです。
ラズパイに人気の秘訣はその"安さ"にあります。コンピュータはどんなに安いものでも、数万円はしますよね。しかし、ラズパイはコンピュータでありながら、一番高いモデルであっても7000円程度で買えてしまいます。一番安いモデルに至っては2000円以下で買えるんです。それでもコンピュータとしてちゃんと機能します。
これってすごくないですか!?
ラズベリーパイは食べても美味しくないけど、使いこなせばとても美味しい機器なんです。とは言っても、みんな家で使うコンピュータとしてラズパイを使っている訳ではありません。教育用の安いコンピュータだからこそ出来ることがあるんです。
では、ラズパイで一体どんなことができるのかを見ていきましょう。
ラズベリーパイって何ができるの?
先ほども説明した通り、ラズベリーパイは小さなコンピュータです。小さいながらも、USBポート、HDMI、LANポートを備えています。モデルによってはWi-fiにも対応しているため、本当にさまざまな使い方が可能です。可能性は無限大です。
ラズパイで何ができるか?
という問いは、もはや“人はなぜ生きるのか”という問いと同じレベルの哲学です。アイディア次第で何でも作れると言って過言ではないでしょう。作れるモノの一例を挙げると
・ラジオ
・音楽プレーヤー
・監視カメラ
・サーバ
・ロボット
・ラジコン
・ゲーム機 etc・・・
と、このように例を挙げればキリがありません。その気になれば、いろんなものが作れます。ラズパイは小型・軽量・安価なことで、色々な機器に直接組み込んで使えるんです。
そして何よりありがたいのがその“情報量の多さ“です。ユーザが多く、ネット上にありとあらゆる情報が落ちているので、少し調べれば誰でもラズパイを使ったものづくりができます。専用のアクセサリーも豊富で、色々なセンサーが出ています。やりたいことに合わせて買い揃えれば、機能をどんどん拡張することができます。
2014年からは“みんなのラズパイコンテスト”というものが開催されていて、この過去の受賞作品を見るとラズパイを使って具体的にどんなことが出来るのかよくわかりますよ。面白いアイディアがいっぱいなので、ぜひ目を通してみてください。
昨今では特に、IoT関連の用途に使われるケースが多いようです。町工場がラズベリーパイを使ってIoTのシステムを構築したなんてニュースもありましたね。
少し話が逸れますが、IoTの基礎を知りたい人はこの記事を見ると読んでくださいね。
プログラミング初心者に人気の言語“Python“も、ラズベリーパイ内で動かすことができるます。実際にモータなどのモノを動かしながらプログラミングの勉強をすることも出来るので、勉強のモチベーションも上がります。特に、機械設計者でプログラミングを勉強したいと思っている人は、ラズパイを使ってモノを動かしながら勉強した方が続けやすいかもしれませんね。
さて、ラズパイの用途を説明してきましたが、次はラズパイの種類について解説します。一口にラズパイといっても、色々と種類があるんです。
ラズベリーパイの種類
超ざっくり分けると、上記の3種類があります。Raspberry Pi 1 が初期のもので、Raspberry Pi 4が2021年1月の時点で最新のモデルです。Model A とModel Bの二種類がありますが、Model Aは機能を絞った軽量・低消費電力タイプでModel Bは高機能タイプです。今からラズパイを始めたいという人はとりあえずRaspberry Pi 4 Model Bを選んでおけば間違いないですね。詳細なスペックと説明は下記に記載します。興味ない人は読み飛ばしてね。
Raspberry Pi シリーズ
Raspberry Pi 1
Raspberry Pi 1は最も初期のラズベリーパイです。下記の2つが現在、購入できる中で最も古いラズパイですね。
【Raspberry Pi 1 ModelB+】
CPU:ARMv6、ARM11、シングルコア700MHz
GPU:250MHz
メモリ:512MB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:10/100Mbps
無線通信:-
USBポート:4(USB2.0)
電源(推奨):1.8A(9.0W)
サイズ:85.6x56.5mm
重量:45g
発売日:2014年7月
USBポートが4つとLANポートがついている豪華仕様です。
【Raspberry Pi 1 ModelA+】
CPU:ARMv6、ARM11、シングルコア700MHz
GPU:250MHz
メモリ:512MB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:-
無線通信:-
USBポート:1(USB2.0)
電源(推奨):0.7A(3.5W)
サイズ:65mmx56.5mm
重量:23g
発売日:2014年11月
ModelAは軽量・コンパクト・低出力です。
Raspberry Pi 2
【Raspberry Pi 2 ModelB】
CPU:ARMv7、ARM Cortex-A、クアッドコア900MHz
GPU:400MHz
メモリ:1GB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:10/100Mpbs
無線通信:-
USBポート:4(USB2.0)
電源(推奨):1.8A(9.0W)
サイズ:85.5x56.5mm
重量:45g
発売日:2015年2月
Raspberry Pi 1と比べてCPUの性能が上がって、メモリが増えてます。私が初めて買ったラズパイがこれです。
Raspberry Pi 3
【Raspberry Pi 3 ModelA+】
CPU:ARMv8(64bit)、ARM Cortex-A、クアッドコア1.4GHz
GPU:400MHz
メモリ:512MB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:-
無線通信:11b/g/h/ac、Bluetooth4.28LE
USBポート:1(USB2.0)
電源(推奨):2.5A(12.5W)
サイズ:65mmx56.5mm
重量:23g
発売日:2019年12月
Raspberry Pi 1 Model A+の上位グレードです。
【Raspberry Pi 3 ModelB】
CPU:ARMv8(64bit)、ARM Cortex-A、クアッドコア1.4GHz
GPU:400MHz
メモリ:1GB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:10/100Mbps
無線通信:1b/g/h/ac、Bluetooth4.1/LE
USBポート:4(USB2.0)
電源(推奨):2.5A(12.5W)
サイズ:85.5x56.5mm
重量:45g
発売日:2016年2月
Raspberry Pi 2 ModelBの上位グレードです。
【Raspberry Pi 3 ModelB+】
CPU:ARMv8(64bit)、ARM Cortex-A、クアッドコア1.4GHz
GPU:400MHz
メモリ:1GB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:ギガビット
無線通信:11b/g/h/ac、Bluetooth4.28LE
USBポート:4(USB2.0)
電源(推奨):2.5A(12.5W)
サイズ:85x56mm
重量:45g
発売日:2018年3月
Raspberry Pi 3 ModelBからCPUの性能がUPしています。
Raspberry Pi 4
現在入手できるモデルの中では最も新しいのがRaspberry Pi 4です。
【Raspberry Pi 4 ModelB 2GB】
CPU:ARMv8(64bit)、ARM Cortex-A、クアッドコア1.5GHz
GPU:デュアルコア500MHz
メモリ:2GB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:-
無線通信:1b/g/h/ac、Bluetooth5.0
USBポート:2(USB2.0) 2(USB3.0)
電源(推奨):3A(1.5W)
サイズ:85x56mm
重量:45g
発売日:2019年11月
【Raspberry Pi 4 ModelB 4GB】
CPU:ARMv8(64bit)、ARM Cortex-A、クアッドコア1.5GHz
GPU:デュアルコア500MHz
メモリ:4GB
映像出力:MDMI/MIPI DSI
音声出力:3.5mmジャック/HDMI/I2S
有線通信:-
無線通信:1b/g/h/ac、Bluetooth5.0
USBポート:2(USB2.0) 2(USB3.0)
電源(推奨):3A(1.5W)
サイズ:85x56mm
重量:45g
発売日:2019年11月
私が昨年買ったのがこの仕様のラズパイです。
Raspberry Pi Zero シリーズ
従来のラズパイから、さらに機能を絞り、超小型・軽量・低価格に特化したラズパイ。 重量は驚異の9g・・もはや調味料の世界ですよね。価格も2000円以下という破格、なにこれすごい。 ただし、色々と機能が絞られているので玄人向けではあります。 しかし、スイッチサイエンスだとなんと“660円“で売ってます!!「ラズパイに興味あるけど、どうしようかな」と思っている人は、まずこれを買ってみてもいいかも!
【Raspberry Pi Zero】
CPU:ARMv6、ARM11、シングルコア1GHz
GPU:250MHz
メモリ:1GB
映像出力:ミニHDMI
音声出力:ミニHDMI、I2S
有線通信:-
無線通信:-
USBポート:1(McroUSB)
電源(推奨):1.2A(6.0W)
サイズ:65x30mm
重量:9g
発売日:2015年11月
従来のラズパイから仕様を落として小型・軽量化されてます。
【Raspberry Pi Zero W】
CPU:ARMv6、ARM11、シングルコア1GHz
GPU:250MHz
メモリ:512GB
映像出力:ミニHDMI
音声出力:ミニHDMI、I2S
有線通信:-
無線通信:IEEE802.11b/g/n、Bluetooth4.1/LE
USBポート:1(McroUSB)
電源(推奨):1.2A(6.0W)
サイズ:65x30mm
重量:9g
発売日:2017年2月
Raspberry Pi Zeroに対して無線通信機能が付いてます。
【Raspberry Pi Zero WH】
CPU:ARMv6、ARM11、シングルコア1GHz
GPU:250MHz
メモリ:1GB
映像出力:ミニHDMI
音声出力:ミニHDMI、I2S
有線通信:-
無線通信:IEEE802.11b/g/n、Bluetooth4.1/LE
USBポート:1(McroUSB)
電源(推奨):1.2A(6.0W)
サイズ:65x30mm
重量:9g
発売日:2018年1月
Raspberry Pi Zero Wに対してGPIOのピンヘッダがついたモデルです。
Raspberry Pi 400
キーボード一体型のラズパイ。後はマウスを指してディスプレイに繋げば すぐにコンピュータとして使えます。元々、教育現場向けに作られたラズパイですが、それをさらに親しみやすい形にパッケージ化したものです。小型であるというラズパイ本来の良さを若干打ち消している気もするけど、教育現場で使うには最適なパッケージかもしれないですね。ガジェット好きの心を擽るフォルム。買っちゃうかも。 日本では2021年中に販売される予定です。
CPU:ARMv8(64bit)、ARM Cortex-A、クアッドコア1.8GHz
GPU:デュアルコア500MHz
メモリ:4GB
映像出力:micro MDMI
音声出力:HDMI/I2S
有線通信:-
無線通信:1b/g/h/ac、Bluetooth5.0
サイズ:286x 122 x23 mm
重量:??g
発売日:2021年中
Raspberry Pi 4 ModelBに比べて少しだけ、CPUの性能が向上しています。
ラズベリーパイの仲間たち
ラズパイが流行ったことで、同じようなシングルボードコンピュータがたくさん出ていきました。その中でも人気があるものを少し紹介します。
Arduino(アルドゥイーノ)
ラズベリーパイと同じようなシングルボードコンピュータです。利用できるプログラミング言語が違ったり、使えるセンサが違ったりと細かい違いはありますが大枠で言えば、同じようなことができます。
M5Stack(エムファイブスタック)
液晶画面付きの小型のマイコンモジュールです。2017年に中国からリリースされた比較的新しい機器で、ラズパイを追い抜く勢いで注目を集めています。 拡張性が非常に高く、様々な拡張モジュールが用意されています。 作れるものはラズパイと似ていますが、買った時点で既にケース内に収まっていて 完成されているという点は大きく異なります。裸のラズパイとは異なり液晶画面までついているため、電子工作初心者にもかなり人気があります。 私も興味があるので、購入検討中です。
まとめ
本記事を復習しましょう。
・ラズベリーパイは3000万台以上売れている小型コンピュータ
・小さいけどちゃんとコンピュータとして機能する
・小型、軽量、安価が特徴、特に安価なことで話題となった
・アイディア次第で何でも作り出すことが出来る、可能性は無限大
・ラズパイの種類は、大きく分けてRaspberry Pi、Pi Zero、Pi 400の3つがある
・類似の機器には、”Arduino"や"M5Stack"などがある
ラズベリーパイ・・・そのファンシーな名前からは想像も付かないほどに イかしたクールな機器です。 しかし、その名前とは裏腹にそんなに甘いものでもないんです。 ラズパイさえあれば、色んなものが作れるのは間違いありませんが使いこなすにはアイディアと情熱、そして根気が必要でしょう。情報がたくさん落ちているとはいっても、この手のDIYにはトラブルが付き物。 トライ&エラーで乗り越えていくしかありません。
ガジェット好きあるあるの”買って満足”になる可能性が高い機器でもありますね。 私も買ってから3年くらい机の中で熟成させてましたし・・・(苦笑)。 買った瞬間は、「これで何でも作れるぞー!!」とワクワクするんですけど、アイディアは浮かべど 結局何も作らず・・・今年こそ、今年こそと思いながらズルズルと引きずってしまうんですよね。 そういう場合は、一人でやらずに友達などと共同で何かを作るとモチベーションも上がりますよ。 ちなみに私は今年、友達と一緒にラズパイを使ったラジコン作りに挑戦しようと思ってます。
もしラズベリーパイに興味があり、購入を検討している初心者の方ならスターターセットがオススメです。ラズパイに対応したLinaxOSが既にインストールされたmicroSDも付いてくるので、OSのインストールや面倒な初期設定も不要です。 そのままポンっとラズパイを起動することができます。 まあ、OSのインストールはそこまで手間でもないので別に自分でやってもいいと思いますけどね。スターターセットになると少し高価になってしまうので、ラズパイの最大のメリットである安さが少し薄れてしまいます。安心・時間を買うか、はたまた労力を使うか・・・その辺りは自分のものづくりスタイルに合わせて判断してくださいね。
私は、ラズベリーパイに関する基本的なことをこの本に沿って勉強しました。知識ゼロでもいろいろと作ることができるて、非常に面白かったのでオススメです。表紙で“ロボットが作れる!!“と謳われていますが、市販のロボットをちょっと改造して動かす程度のことなので、この点はあまり期待しすぎない方が良いでしょう。あくまでもラズパイの基礎的なことを遊びながらが学べる感じです。それでも十分タメになりますよ。
上記の本だけで勉強しても良いですが、事前にPythonの基礎くらいは勉強してたほうが更に理解が深まります。合わせてこの本もオススメします。
というわけで、説明は以上ですが如何だったでしょうか。本記事で少しでもラズパイの魅力が伝れば幸いです。今年は、ラズパイを使ったものづくりにチャレンジしてみませんか。せっかくだったら"ラズパイコンテスト"を目指すのもいいかもしれませんね。 是非、あなたのアイディアを具現化する手段として、使ってみてください!!