誰でもわかる”IoT”の基礎の基礎

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”IoT”という言葉を最近よく耳にするようになりましたね。私の会社でも「これからの製造業はIoTの時代だ」なんて言っている人も多いです。「うんうん、その通りだ」と相槌を打っているそこのあなた。IoTが一体何なのか理解できていますか?言葉の意味だけ知って、なんとなくわかった気になっていませんか?それは非常に勿体無い。IoTがこれからの世の中を変えていくのは間違いありません。今のうちに、しっかりとその基礎の基礎を押さえておきましょう。IoTって何なの?初めて聞いたという方も大丈夫。本記事ではできるだけ優しく解説していきます。

 

本記事は、IoT技術テキスト 基礎編を参考にして執筆しました。もっと詳しく知りたい方はこちらの本を読むと良いでしょう。

IoTってなに?

IoTとは Internet of things の略です。日本語に訳すと、“モノのインターネット“という意味です。この言葉だけでは、さっぱりどういう意味かわかりませんね。

 

 

身近なものを例にとって見ていきましょう。例えば、どこの家庭にでもあるエアコン。普通のエアコンは、専用のリモコンで電源をつけて温度調整をしていますよね。これがIoTによりインターネットに繋がると、どうなるでしょうか。エアコンの電源は、インターネットを介して、お手持ちのスマホから遠隔で入れることができます。さらには、今エアコンの電源が入っているのかどうか、直近でどれくらいの電力を消費したか、フィルタはどれくらい汚れていていつ頃掃除が必要か、故障はしていないか、などなど・・・あらゆる情報をスマホから確認することができます。

 

 

このように、エアコン自体がまるで意思を持ったかのようにインターネットを通してどんどんと自己主張してくれるんです。その主張(情報)を集めて、有効に活用する。これがモノのインターネットです。つまりは、モノがインターネットを介して繋がることで、情報を様々な場所で、様々な形で活用できるということなんですね。

 

エアコンの例でも述べたように、インターネットを介して”遠隔で操作できる”こともIoTの利点です。余談ですが、少し前の名探偵コナンの映画でもIoTがテーマになっていたものがありましたね。確か“IoTテロ”とか言って、遠隔で家庭のテレビか何かを爆発させていた気がしますが、さすがにそんな物騒な遠隔操作は出来ないのでご安心ください。

 

昨今では、様々な家電がIoTに対応してきています。家を丸ごとIoT化しようなんて取り組みもあるみたいで、IoTがどんどん身近になっていくことは間違いないです。遠隔操作もできて、どこからでもモノの状態が分かる。これはすごく便利ですね。

 

しかし、実はIoTの本質はそこではありません。ここまで説明してきて、申し訳ありませんが、上記で説明したような遠隔操作や状態監視はIoTのメリットの一部にしか過ぎないのです。では、IoTの本質とは一体なんなのか。それを見ていきましょう。

IoTの本質とは何か

結論からいうと、IoTの本質は

 

情報を価値にすること

 

です。これはとても重要なキーワードです。これだけは覚えていただきたいです。ただ、現時点ではなんのこっちゃという感じですよね。大丈夫です、今から説明していきます。

 

IoTでできることを、簡単に言葉にすると

インターネットを介して・・・・

・モノから情報を得る

・モノへ指示を送る

 

この2つになります。逆に言えば、IoTだけだとこれだけしかできないんです。なのでIoTを助ける仲間が必要になります。そこで出てくるのが”BD”と”AI”です。もしかしたら名前だけでも聞いたことがあるかも知れませんね。

 

BDはBig Data(ビッグデータ)の略です。その名の通り、大量で大規模なデータです。AIはご存知の通り、人工知能のことです。 このIoT、AI、BDが一致団結し、初めて情報の価値を生み出すことができます。

 

 

IoTによりモノから集められた情報はBD(ビッグデータ)として収集され、どんどんと蓄積されていきます。AIはBDに蓄積された情報をもとに日々、分析や学習を行います。そしてAIが学習した結果、IoTでモノに最適な指示を送るのです。このような相互関係を築きながら、情報を活用して急速に成長していくことがIoTの本質なのです。

 

情報をそのまま消費するのではなく、蓄積して分析して学習して成長する。このループに大きな期待が寄せられているので、IoTはこれほど注目されているんです。これが“情報を価値にする”ということなんですね。

IoTに必要な物

では、IoTの実現に必要なものは一体なんでしょうか。少しだけ具体的な話をしていきます。標準的なIoTシステムの構成は下図の通りです。

 

・IoTサーバ

・IoTゲートウェイ

・IoTデバイス

 

この3つがIoTのために必要な要素です。一つずつ見てきましょう。なんとなく雰囲気が掴めればOKです。

 

IoTデバイスとは?

モノのインターネットの”モノ”の部分です。エアコンであったり、テレビであったり、スマホであったり、ドローンであったり・・・インターネットに繋がって情報を発信したり、指令を受け取る本体をIoTデバイスと呼びます。厳密に言えば、モノの中に備わった様々なセンサを指しますが、まずはモノそのものと理解しておけば良いでしょう。

IoTゲートウェイとは?

IoTデバイスとIoTサーバを繋ぐいわば中継地点です。デバイスから収集したデータを整理したり、変換したりして、サーバに情報を保存するのをサポートします。IoTデバイスからのデータをそのままIoTサーバに送るのが最も簡単なのですが、無駄なデータやノイズが混じっているため、IoTゲートウェイで一旦綺麗にしてから、必要な情報のみをサーバに提供します。IoTゲートウェイは必ずしも必要というわけではありません。IoTシステム全体の規模によって、不要な場合もあります。

IoTサーバとは?

収集したデータを蓄積するいわば貯蔵庫です。ここに溜め込んだデータを分析・学習することで活用していきます。

IoTの活用例

既に私たちの生活の中にIoTは根付き始めています。既に実際に普及しているIoTの活用例を見て見ましょう。

Google マップ

 

Googleマップ、便利ですよね。普段何気なく使っていますが、これもIoTが活用されています。面白いのは、あなたのスマホがIoTデバイスとして活用されているところです。

 

あなたのスマホはGoogleに対して、あなたが今どこににいて、どのくらいの速度で移動しているかという情報を発信しています。色々なGoogleマップユーザからそういった情報を集めると、どこの道で渋滞が起きているのかわかります。その結果をGoogleマップ上にフィードバックすることで、我々は渋滞情報を見ることができているんですね。

 

少し前に複数台のスマホをカゴに入れて、ゆっくり移動することでGoogleマップ上で意図的に渋滞を引き起こす実験?イタズラ?が話題になりました。これは、GoogleマップのIoTシステムを逆手にとっているんですね。多くの人がそこでゆっくり移動している=渋滞が起きているに違いないということになりますから。下記に動画を張っておきますね。

Google Maps Hacks by Simon Weckert

 

自転車のシェアリングサービス

 

都市圏でよく見かけるようになった自転車のシェアリングサービスもIoTシステムです。これは、自転車自体がIoTデバイスとなっていて、インターネットを通して、位置情報や移動の履歴、バッテリー残量、施錠などを管理しています。

 

利用者はスマートフォンで駐輪場を確認し、自転車を予約します。予約するとサーバーからパスワードが発行されるので、駐輪場まで行って該当する自転車にパスワードを打ち込みます。すると、施錠が解除されて自転車を使用できるようになります。自転車は別の場所の駐輪場場へ返してもよいです。それもIoTでしっかりと管理されているんです。

 

せっかくの機会だったので、本記事を書くために一回利用してきました。2019年に名古屋で始まった“カリテコバイク”というサービスです。細かいレビューはまた、気が向いたときに別記事にするとして、これはなかなか便利で面白いサービスでした。IoTを身近に感じたいなら、一度利用してみるのもありです。そんなに高いものでもないのですよ、30分で150円です。新しい技術やサービスには、お金を払って積極的に触れてみましょう。色々と学びがあって面白いです。

 

IoTの課題

ここでIoTが抱える課題についても触れておきましょう。

IoTのビジネス展開

 

IoTはモノから情報を得ること自体にフォーカスされがちですが、その本質は

 

情報を価値にすること

 

です。大切なので何度も言います。つまり、システムを組むことよりも情報を使って何を提供するか、どんな付加価値を生むかが重要となります。如何に効果的にサービスに結びつけるか、そのアイディアで各社が競い合っています。

 

IoTに期待される効果には、大きく分けてカイゼンとイノベーションがあります。

 

カイゼン    ・・・現在の活動を効率化して、生産性を向上させる

イノベーション ・・・全く新しい新規サービスを立ち上げる

 

どのようにビジネスにつなげるか、その可能性は無限大であり、その価値の創造こそIoTシステムの最大の課題でもあります。

IoTプラットフォームの統一化

IoTプラットフォームとは、簡単に言えばIoTを実現するために必要な物のセットです。様々な企業が弊社のIoTプラットフォームを使ってIoTを実現しませんか?と頑張って売り込みをしているわけです。各社がプラットフォームの覇権を握ろうと、躍起になっています。その結果が下記の業界マップです。

 

画像引用元:ビジネス+IT

 

なんかもうよくわからないけど、とにかくごちゃごちゃしてますね。その感想を持っていただければ十分です、私がここで伝えたいのはとにかくごちゃごちゃしているということだけです。

 

分野によってプラットフォームに求められることが違うので、一つのプラットフォームで全てを賄うことはできません。各社が独自の強みを持って、さまざまなプラットフォームを提供しています。使う側としてはどれを選んでよいのか、よくわからない状況なんです。

 

また、このような競争は更に激化していくと予想されています。特に製造業向けでは、激しい戦いになっており、ドイツに至っては国を挙げて押してきています。まだまだ落ち着く様子はありませんね。

 

全く違う話なんですが、こういう規格の覇権の戦いを聞くたびにHD DVDとBlu-rayの戦いを思い出します。知らない人のために説明すると、今では当たり前に使っているBlu-ray Discですが、ライバル的存在のHD DVDというものがありました。2008年頃に次世代DVDの座をかけて戦っていたわけですが、Blu-ray Discに軍配が上がり、HD DVDはあっという間に姿を消しました。HD DVDレコーダーを買っていた人は涙目です。完全に個人的な意見ですが、それに近いことが起こらないか心配ではあります。

セキュリティの問題

IoTはインターネットを使ったシステムであるため、どうしてもセキュリティ上の問題が浮上してきます。テレビを爆破されるようなIoTテロは起きなくても、データが流出したり、悪意のある第三者によって、不正にアクセスされコントロールされてしまったり・・そういった懸念はありますね。システムの安全性をどのように確保するのかが利用者側の大きな課題です。

工作機械とIoT

私の働く工作機械業界でもIoTの波は押し寄せてきています。基本的には、機械をネットワークに繋いで稼働状況や状態を管理して、事前に故障を検知したり、効率の良い生産方法を提案したり、といった使い方が目立ちます。どの会社も今のところは、工程を見える化して無駄を省き効率化を図る、カイゼン”のアプローチがメインです。

 

そんな状況だからこそ、各社が虎視眈々とイノベーションを狙っています。革新的な提案をして、業界を先導するチャンスでもあるのです。私もその渦中にいる技術者なので、日々IoTを使って革新的なことができないかアイディアを模索していますが、そう簡単には思いつきませんね。そういう意味ではIoTの分野において、工作機械業界は今熱い業界なんです。

まとめ

IoTの基礎を復習しましょう。

 

・IoTとは”モノのインターネット”のこと

・ネットを介して、操作したり、情報を閲覧できる

・IoTの本質的な価値は、”情報を価値にすること”

・既に身近でも活用され始めている

・IoTの課題は、”プラットフォームの統一化”と”セキュリティ”

 

を覚えておくと良いでしょう。

しつこいようですが、IoTではただのモノのインターネットです。ここにAIやBDが組み合わさり、初めて情報を価値にする基盤ができます。それをどう活かし、運用するかが情報の価値の創造です。“IoTを導入すれば、とにかく全てが上手くいくんだ“と思ってはいけません。情報は目的を持って収集してこそ、価値を生むんですね。

 

もしもっとIoTのことについて勉強したいのであれば、IoTシステム技術検定試験を受けてみるのも手です。本記事もこの検定の基礎テキストを元に執筆しています。(ちなみに私はテキストを買って読んだだけで試験は受けてません。)

 

このテキストを読んだ感想としては、基礎と言いつつ、機械設計系の技術者だとこの本だけで理解するのは難しいですね。内容を理解するためにはネットワークに関する予備知識は必要で、知らない単語が出て来るたびに調べるような形で読み進めました。参考にしていただければ幸いです。