話題の材料!!ミネラルキャスティングって一体何なの?

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“ミネラルキャスティング”って聞いたことありますか?ミネラルという名前だけ聞くとなんだか栄養食っぽいですよね、カロリーメイト的な。しかし、食べ物ではありません。ミネラルキャスティングは鋳物の代替材料として注目されている新しい材料なのです。しかも、ただの代替ではありません。ミネラルキャスティングは樹脂と石材を使用した材料で、鋳物にはない面白い特性をいくつも持っています。それを活かすことでより良い性能の機械を作ったり、今まで出来なかったような設計も可能となります。ヨーロッパでは既に広く使われているミネラルキャスティング。ものづくりに携わる人ならば、絶対に知っておいた方が良いです。特に鋳物の調達が難しくなっている昨今では、この新材料にさらなる期待が寄せられています。

 

本記事ではこのミネラルキャスティングが、どういうものなのかをわかりやすく説明していきます。今回はミネラルキャスティングメーカであるRAMPF Group Japan株式会社様に資料の提供をいただいております。よりわかりやすく確実な情報をお届けできるはずです。

鋳物業界が抱える課題

ミネラルキャスティングの話をする前に、まず本の鋳物業界が抱える課題”を知っておきましょう。

 

鋳物とは、金属を溶かして型に流し込んで作られる製品のことです。その工程は“鋳造”と呼ばれます。日本はかつてこの鋳物の生産が盛んでした。しかし、昨今この鋳物を作る鋳物メーカの減少が問題となっています。ピーク時の1990年代から比較すると、現在は約1/3ほどに減ってしまったという話もあります。

 

主な原因は3つです。

 

・利益を出しづらい

・後継者が不足している

・環境問題への対応

 

鋳物業は利益を出すのが難しい業界です。鋳造設備のメンテナンスや維持には莫大なお金がかかります。そして、製造業の3K、きつい、汚い、臭いを代表するような過酷な職場であるため、人が集まりにくいのが現実です。作業者は居ても、技術を継承するような人員の確保ができず、苦しんでいます。さらに追い討ちをかけるように、環境問題への対応に追われます。地球温暖化への対応からCO2排出量や近隣への配慮などなど、課題は山積み。これらの問題に耐えきれず、倒産を余儀なくされるケースが増えています。

 

鋳物メーカが減っても、日本の製造業における鋳物の使用量はほとんど減っていません。鋳物はそれだけ有用かつ汎用的な材料です。ただ逆に言えば、鋳物に依存していると言い換えても良いかもしれません。

 

上述した問題をクリアして鋳物業界が活性化するのが一番良いです。しかし、目下にはガソリン車がなくなり、電気自動車に切り替わるという時代が迫っています。日本の鋳物の需要は50~60%は自動車産業向けです。そこの大きなボリュームゾーンが電気自動車化によって大きく削がれることは間違いなく、さらに厳しい状況に追い込まれるでしょう。

 

この危うい鋳物業界だけに、依存していたら機械が作れなくなってしまうかもしれない。そう危惧して、複数の機械メーカが鋳物依存からの脱却を図っています。つまり、鋳物に代わる代替材料の検討です。そういった経緯で鋳物の代替材料としてミネラルキャスティングと言うものが注目を集めているのです。

 

話が長くなりましたが、ここからが本題です。

ミネラルキャスティングとは一体何かを見ていきましょう!!

 

ミネラルキャスティングってなに?

 

 

ミネラルキャスティングとは自然石を粉砕し、熱硬化性樹脂で注型・硬化させる独自の技術です。すごく簡単に説明するなら、砕いた石と樹脂を混ぜた液体を箱に詰めて、固める技術です。型から取り出せば、製品の出来上がり。工程だけ見れば、型を使った手作りチョコレートのようなものですね。

 

この技術は1970年代にヨーロッパで確立された技術で、そこまで歴史が長いわけではありません。日本ではまだまだ馴染みが薄いですが、ヨーロッパでは既にかなりの量が出回っています。工作機械で言えば、ヨーロッパの機械は約3割がこのミネラルキャスティングを用いた機械だと言われています。

 

では、このミネラルキャスティングとやらは一体何が優れているのでしょうか。その特徴を見ていきましょう。

ミネラルキャスティングの特徴

ミネラルキャスティングの特徴は

 

・高い振動減衰性

・優れた熱安定性

・工数削減効果

・環境に優しい

 

という4つがあります。一つずつ特徴を見ていきましょう。

高い振動減衰性

 

 

振動減衰性とは、どれだけ早く振動を止めることができるかということです。例えば、音叉ってありますよね。多くの人が音楽の授業で触ったことがあると思います。叩くと、綺麗な音が長く響き渡りますよ。ただ、もしあの音叉が石でできていたらどうでしょう。叩いた瞬間、コツっというだけで音は長く響かないというのは直感的に理解できると思います。これが減衰性の違いです。金属に比べ、石の方が減衰性が高いのでそのようなことが起きます。

 

金属の中でも鋳物に使用される鋳鉄は減衰性が高い方です。それでもミネラルキャスティングに比べると、上図のグラフからわかるように減衰性に大きな差があります。当然、形状によって差はありますが、一般的にはミネラルキャスティングの減衰性は鉄の5〜10倍優れていると言われます。

 

つまり、ミネラルキャスティングを機械の構造体に用いれば、発生する振動を材料自体がしっかり吸収してくれるわけです。機械加工で常に断続的な振動が発生する工作機械にとっては、この特性は喉から手が出るほど欲しいものです。

 

ミネラルキャスティングは振動が発生する機械との相性がとても良い材料なんですね。ヨーロッパでの工作機械での採用率が高いのも頷けます。

 

優れた熱安定性

 

 

ミネラルキャスティングは鉄に比べて熱伝導率が圧倒的に低いです。熱伝導率は、その名の通り熱の伝わりやすさを表す指標で、高ければ高いほど熱が伝わりやすいということです。スプーンなどの食器で時々、銀製やアルミ製のものがありますが、熱いスープなどにつけるとあっという間に持ち手まで熱くなり持てなくなります。ステンレスのスプーンであれば同じ時間だけ熱いスープに漬けてたとしても、そこまでは熱くなりません。これが熱伝導率の差です。

 

余談ですが、最近アイス用にアルミ製のスプーンが流行りましたね。これはアルミの熱伝導率の高さを利用した商品です。手の温度を素早くアイスに伝えて、カチカチのアイスを溶かしながら食べることができるというものですね。

 

熱伝導率が低いということは熱を伝えづらいということ。熱を伝えづらいということは、それだけ温度変化に強いということです。周りに発熱源があったり、室温自体が大きく変化しても、その温度の影響を大きく受けることがありません。微小な室温の変化すら精度に影響する工作機械にとって、これも喉から手が出るほど欲しい特性です。

工数削減効果

 

 

ミネラルキャスティングは樹脂と石の混合物です。当然、石を加工したりタップを切るなんてことはできませんので、部品が取り付く部分にはあらかじめ金属部品を組み込む必要があります。逆に言えば、ミネラルキャスティングができた時点でタップ穴はあいてる状態なの機械加工が不要となります。

 

当然、精度が必要な部分は加工で仕上げが必要ですが、それすらも不要にする高精度転写技術もあります。転写ゲージで精度面を転写するという樹脂ならではの技法です。これにより加工レスで即現場に直投なんてことも可能になりますね。

 

 

また、事前に構造体内部に配管やセンサーなどを埋め込むことも可能です。鋳物でこんなことをやってしまったら、たちまち溶けて無くなってしまいます。でも、樹脂ならそれが可能なんですね。交換が必要な部品は埋め込むのに抵抗がありますが、配管などは上手く設計すれば抜群に綺麗で便利に設計できるはずです。

 

環境性能

 

製造工程では、鋳物に比べて30%以上のエネルギー消費の低減が可能です。ドイツでは廃棄となったミネラルキャスティングは細かく砕かれ、道路工事などの材料として再利用されています。このように環境に優しい材料なんですね。

 

また、ミネラルキャスティングは労働環境も良いです。型に樹脂を流し込んで固めるときに、化学変化により発熱を起こしますが、それも高くても65℃程度。数千℃を扱う鋳造と比べても圧倒的に安全であることは間違いないです。3Kを代表する鋳造業とは違い、安全でクリーンな労働環境であり、鋳造炉のような大規模な設備も必要ありません。

どんなところに使われてるの?

そんな素晴らしきミネラルキャスティングですが、具体的に機械のどのような部分に使われているのでしょうか。

 

 

推奨の使用箇所は下記です。

 

・機械構造部の安定した部分

・引張荷重ではなく圧縮荷重の部位

・可動部ではなく固定部フレーム

 

ミネラルキャスティングは、金属材料ではないため、使用上いくつか注意しなければならないことがあります。まず、ミネラルキャストはコンクリートに近い特性を持っています。圧縮に比較的強く、引っ張りや曲げにはとても弱いです。

 

可動物にこの材料を使ってしまうと、慣性により様々な方向から力を受けることになってしまいます。なので基本的には、動かない機械の土台となる部分に使用が限られます。また、土台でも極端な曲げや引っ張り荷重が掛かるような突き出しの長い設計には向きません。

 

主な物性は下記です。

 

密度で言えば、アルミ並みの軽さですね。弾性係数や圧縮強度もだいぶ違いますので、金属材料と同じように形状検討することはできないことがわかりますね。そのため最も重量があり、圧縮荷重を主に受ける機械の土台部分に使用することが大切です。土台に使えば、減衰性や熱安定性の特性をより活かすこともできるので、それがベストでしょう。

ミネラルキャスティングの課題

そんなに素晴らしい材料ならすぐに導入すべきだと思いますよね。ただ、当然ミネラルキャスティングにもクリアすべき課題はあります。ここから私の機械設計者としての私見も挟みながら、ミネラルキャスティングが抱える課題について説明します。

コスト

具体的なコストは分かりませんが、材料単体で見れば鋳物よりも高いのはまず間違いないでしょう。ただし、加工レスとなるため、加工費までを含めたトータルコストで考える必要があります。さらに配管の埋め込みなどを行えば、組立コストも低減できる可能性もあります。そういった意味で、全工程を踏まえたトータルコストに換算して導入の可否を判断する必要があるょう。

ミネラルキャスティングのための設計

 

材料の特性が金属とは全く異なるわけですから、機械設計も当然、ミネラルキャスティングを活かすための設計にしなければなりません。機械の土台に使うことが前提であるならば、機械のコンセプト全体に影響を及ぼします。

 

また物性値に関しても、扱い慣れた金属とは異なるため設計や検証が難しそうです。今までのやり方は通用せず、根本の設計手法から確立する必要があります。その辺りはミネラルキャストメーカとの綿密な打ち合わせが必要そうです。そのため、導入へのハードルは若干、高めです。ヨーロッパでは実績があると言っても、日本ではまだほとんど例がないので、導入に踏み切るには心理的なハードルもありますね。何かキッカケは必要です。

 

ただ、今後の鋳物産業のことを考えると、代替材料の検討は必須です。リスクヘッジとしてミネラルキャスティングを早めに検討して、ノウハウを確立しておくことが重要だと思います。これは十分に検討のキッカケになりうると考えています。

設計チョンボのリカバリー

 

これは些細な問題ですが、機械設計者として少し気になった点です。

 

設計をしていれば、「あっここに穴を開け忘れた」とか「やっぱりここに穴が必要だった」なんてことがよくありますよね。その度に、現場の人に頭を下げて、その場で加工してもらうわけですが、ミネラルキャスティングではそうはいきません。材料は樹脂と石ですから、追加工はできません。

 

”計画段階でミスなく検討しろよ”と言われればそれまでですが、設計者も人間ですのでミスは付き物です。おそらく、出来上がった後のミネラルキャスティングに穴を開けて金属部品を後から埋め込むなんてこともできるとは思います。ただ、それでも鋳物への追加工に比べれば手間はかかります。正確な図面、特注やオプション対応を見越したより綿密な計画が必要になります。設計手法と合わせて、設計工程全体もミネラルキャスティングに合わせて見直す必要があります。

日本でも進むミネラルキャスティングの研究

日本ではほとんど採用例がないミネラルキャスティングですが、国内の様々なメーカが既に注目し、期待を集めています。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)でも研究が進んでおり、名だたる工作機械メーカが参加しています。研究に参加している面子からミネラルキャスティングへの注目の高さが伺えます。

 

論文が公開されていますので、興味があれば読んでみてください。リンクを貼っておきます。

【NEDO論文リンク】

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2019S/0/2019S_213/_pdf

まとめ

ミネラルキャスティングについて復習しましょう。

 

・ミネラルキャスティングは”樹脂”と”石”との混合材料

・鋳物の代替材料として注目されている

・ヨーロッパの工作機械では3割がミネラルキャスティングを使用している

・特徴は、”減衰性”、”熱安定性”、”工数削減効果”、”環境性能”の4つ

・引張荷重の掛からない土台部分に使うのがベスト

・日本でもミネラルキャスティングの研究が進んでいる

 

ミネラルキャスティングは鋳物の代替材料として、今後が期待されています。ただ、個人的には、代替というよりも全く新しい新材料として扱ったほうがしっくりきますね。物性はコンクリートなどの建材に近く、機械分野ではあまり取り扱うことのなかったものです。当然、設計手法も新しいものになるでしょう。

 

まだどこの会社も様子見で、本格的にミネラルキャスティングの導入に踏み切ろうという動きはありません。ただ、どこかが踏み切ったら、堰を切ったように一気に導入が進むのではないかと思います。日本は文化的に保守的で、周りに流されやすいですからね。どの会社も興味を持って注目しているのは確かです。

 

ただ、ヨーロッパでは既に広く使われており、日本はこの分野に関しては大きく遅れを取っているのも事実です。あまりウカウカもしていられないかも知れませんね。工作機械のみならず、他の産業機械でも十分に活用可能だと思います。可能性は無限大の新材料、それがミネラルキャスティングです。興味が有れば、是非ミネラルキャスティングメーカRAMPF Group Japan株式会社にコンタクトを取ってみてください。

 

 RAMPF Groupの紹介

本記事の執筆にあたり、ミネラルキャスティングメーカであるRAMPF Group Japan株式会社様より資料を提供していただきました。ありがとうございました。

 

RAMPF Groupは、ミネラルキャスティングをはじめとする反応性樹脂システムを得意とする企業です。ミネラルキャスティンングの供給元として、40年以上の実績を持つ最も歴史のある会社の一つです。ドイツ、中国、アメリカに生産拠点を持っており、年間最大で約80,000tものミネラルキャスティングを供給することが可能です。世界最大規模のミネラルキャスティングメーカーです。研究も積極的に行っており、2018年のJIMTOFでもミネラルキャスティングの講演会を行なっていました。

 

ミネラルキャスティング検討の際は、HPからコンタクトを取ると良いでしょう。

 

RAMPF Group Japan 株式会社HP

rampf-group.com/ja-jp/