それいけ、ファクトリーサイエンティスト!!

最新技術

先日、約1ヵ月の育成講座を経て“ファクトリーサイエンティスト”に認定されました。

ん?ファクトリー・・なんだって?

と思ったそこのあなた・・・もっと情報に対するアンテナを張り巡らせないといけませんよ!! とはいっても、ファクトリーサイエンティストは、ごく最近始まった取り組みで、まだまだ認知度も高くはありません。しかし、今後の日本のものづくりにおいて極めて重要な役割を担うと私は確信しています。

本記事では、実際にファクトリーサイエンティスト育成講座を受講したこの私が、ファクトリーサイエンティストの役割やその魅力についてわかりやすく解説していきます。本記事を読んで興味が持った方は、是非とも受講を検討してみてくださいね。では、さっそくいきましょう!!

Factory Scientist | ファクトリー・サイエンティスト
IoTデバイスによるエンジニアリング、センシング、データ解析、データ視覚化、データ活用の知識を身に付けて、データを軸に経営判断を素早くおこなうアシストをおこなう人材の育成

ファクトリーサイエンティストってなんだ?

そもそもファクトリーサイエンティスト(以下、FS)とは何なのでしょうか?なんだかとてもインテリジェンスでカッコいい響きですよね。単純に言葉を分解してみれば

・Factory  ・・・ 工場
・Scientist  ・・・ 科学者


です。工場科学者・・・って、これでは何のこっちゃという感じですが、ファクトリーサイエンティスト協会(以下、FS協会)はFSを下記のように定義しています。

“IoTデバイスによるエンジニアリング、センシング、データ解析、データ視覚化、データ活用の知識を身に付けて、データを軸に経営判断を素早くおこなうアシストをおこなう人材”

つまるところ、FSとはIoTデバイスの使用からデータ収集や解析、活用までを一人で行える技術者を指します。そして、そんなFSには主に3つの能力が必要とされます。下記は公式HPからの抜粋ですが

画像引用:ファクトリーサイエンティスト HP

“ファクトリー・サイエンティストには3つの能力が求められます。1つ目は、IoTデバイスやセンサなどを駆使して安価に現場のデータを取得する「データエンジニアリング力」。2つ目は、収集したデータをクラウドにあげ、他のデータと組み合わせて、有益な情報を紡ぎだす「データサイエンス力」。3つ目は、得られた情報を基に戦略を練り上げ、データを説得材料として経営者の意思決定に活用できる「データマネジメント力」です。”

という記載があります。これらの能力を総合的に備えた技術者がFSです。そして、そのような技術者を育てるための育成カリキュラムが、FS協会が行っている”FS育成講座”なのです。

ちなみに私が受講したのは、第7回講座です。ファクトリーサイエンティスト協会が設立したのは、2020年4月であり歴史としてはまだまだ浅いです。2021年12月の時点では、FS認定技術者の数は約400人と少数ですが、FS協会は2030年までの40000人までの拡大を目指すと公言しています。私も微力ながら、FSの拡大に貢献したくしたく記事を執筆している次第です。

ファクトリーサイエンティストが目指すもの

FSがどんな技術者かはわかったけど・・・
なんでそんな技術者が必要なの??

もちろんFSはただの思い付きで生まれたわけではありません。日本のものづくり産業が持つ課題を解決すべく、生まれたのです。FSが目指すものは主に2つです。

デジタルデバイドの解消

日本のものづくりにおいて問題になっていることの一つに、“デジタル化の遅れ“があります。そもそもIT投資は巨額の投資となるため、中小企業では手を出すことが難しく、導入が進んでいないのが現状です。しかし、デジタル化やIT技術の活用が生み出す生産性の向上効果は凄まじく、それらの技術をうまく活用して利益を生み出す会社も少しずつ出てきました。しかし、そのような企業は圧倒的に少なく、どの企業も今までの働き方の延長線上で働いています。DX(デジタルトランスフォーメーション)が謳われる昨今、デジタル化の駆使した取り組みは必須であり、これができるかできないかで企業間には大きな格差が生まれるでしょう。これが俗にいう、デジタルデバイドです。

近年では、テクノロジーの普及によって簡単なIoTシステムなら短時間、かつ少額で自作できるようになってきました。しかし、中小企業の製造現場にそういった技術を持った技術者はほとんどいません。ほんの少し勉強すれば、誰もがデジタル技術の恩恵を受けることができるのに、みんなその方法も知らなければ、そのための時間も捻出できていません。そんな日本のものづくりの現状に終止符を打ち変革を起こす存在が・・・そう、FSなのです。FSが中心となり、現場にIT技術を取り入れ、活用する。日本のものづくりのデジタルデバイドを解消し、企業の更なる付加価値の創造に貢献することがFSに与えられた役割です。

ものづくり産業を横串を刺す

FSは製造業を繋ぐコミュニティとしての機能も果たします。FSをハブとして、各業界のIoTシステム導入事例を共有し、発展させて更に活かすことができます。各企業が切磋琢磨しながら、競争力を磨いていくことで、日本の企業全体として生産性を高めることができるのです。

“知っている“、”知識を持っている”ということに価値がある時代は終わりました。インターネットの普及により誰もが情報を簡単に入手できるようになったからです。門外不出の自社ノウハウとして囲い込むのではなく、共有して発展させる時代なのです。IT分野ではオープンソースのソフトウェアなどはもはや当たり前ですが、ものづくり産業においてはこういった考え方はまだまだ馴染みがありません。3Dプリンタの登場により、その界隈では”情報を共有する”という文化が根付きつつあるものの、あくまでもホビーユースの領域です。

そんなものづくり産業で、FSは情報共有コミュニティ的な役割を担います。縦割りで分断された日本のものづくり、特に中小企業間に横串を指して、ものづくり産業全体の活性化を図るわけですね。

上記の分は、私なりの解釈も入っています。FS協会公式の設立趣意は下記に記載してありますので、是非ご一読ください。

ファクトリーサイエンティスト協会_設立企画書.pdf

兎にも角にも、ただIoTを学びましょうねって話ではないわけです。なんだか、ワクワクしてきませんか?

では、ここからはFS教育講座で具体的にどんなことが学べるのを見ていきましょう。

どんなことが学べるの?

まず、講座の方法ですがZOOMを用いたリモート講義で行われます。FS育成講座の第一回目は、4泊5日の合宿形式で行われたようですが、ご時世もあり第二回目からはオンライン開催に切り替わっています。講師陣や受講者同士のコミュニケーションツールとしてSlackを使用します。ちなみに私が受けた第7回目講座の受講生は50人くらいいました。

FS育成講座では、全5日間の講義を受講することになります。そのうち4日が基礎講座で、最後の1日はプレゼンテーションとなります。FS育成講座で学んだことを活かして、オリジナルの課題解決に取り組み、作ったシステムの紹介や結果を報告します。全講座に出席し、最終プレゼンを行うことでFSとして認定してもらうことができます。ちなみに講義の時間は、大体13時30分から17時30分くらいまでで、講座内の課題進捗によってはそれより伸びたりもします。まるまる半日ですね。

現時点での具体的なカリキュラムは下記です。講座は週一で行われるため、全日程が終了するのに1ヶ月弱かかります。

(まだ歴史の浅い講座なので、カリキュラムはどんどん変わっていくはずです。)

講義で使用する機器は、Wio Nodeと呼ばれる小型のマイコンボードです。小型・安価ながら、Wi-Fi通信も行える優れものです。このマイコンボードを中心として、IoTデバイスを構築しセンシングを行います。FS協会からは講座用にWio Node2つと温度センサ、電流センサ、配線その他もろもろが配布されます。最終課題では、これらのセンサを使っても良いし、別のセンサを自分で購入しても良いです。

スイッチサイエンスなどで手に入るGROVEという規格のセンサなら、ほぼポン付けで使えますので、電子工作的な知識もほとんど必要ありません。プログラミングは、Aruduinoで使用される「C言語」と「C++」をベースにした言語を使用しますが、これも事前知識ゼロでも大丈夫です。講師陣は丁寧にサポートしてくれますし、ネット上に情報も豊富です。

 グラウド側のサービスとして使用するのは

などのMicrosoft社が提供している有償サービスです。育成講座中はFS協会で契約しているアカウントが利用できるため、これらのサービスを自由に使うことができます。(育成講座後も継続的に使用したい場合は、課金の必要があります)

最終成果物のイメージとしては、下記のようなシステムが自分で構築できるようになります。この形に捉われず、違う機器をつかってシステムを作っている人もいますので、あくまでも参考程度ですが。

システム構成だけ説明しても具体的なイメージは湧きにくいですよね。実際にFS育成講座内で製作されたシステムの事例を少しだけ紹介します。


事例1:室温管理とファンの自動運転システム
コンプレッサがオーバーヒートしないように、室温を監視して必要なタイミングで自動で冷却ファンを回すシステムです。一定の温度を超えると社内SNSに通知が来るようにもなっています。これにより、日中フル稼働していた冷却ファンを必要な時だけ回すように改善することで、省エネに繋がります。使用しているのは温度センサだけというシンプルな構成ですが、IoTのお手本のようなシステムですね。

事例2:FAXの受信見逃し防止システムの製作
FAXの受信を感知して、スマホに通知を送るシステムです。FAXの受信に気が付かず、重要案件を見逃してしまうというミスを防ぐために制作されました。FAX受信時にFAX本体についているLEDが点灯するので、その点灯を光センサで検知して、通知する仕組みです。電気的に繋げるのではなく、“受信ランプを検知する“というシステムにしたのがポイントですね。FAX本体を弄る事なく、システムを組み込んでいます。ちなみに工場でも古い機械にIoT機器を組み込むときは、“パトライトの光を光センサで検知する“という方法を取ったりもするようです。

実際どうなの?FS育成講座!!

では、実際にFS育成講座を受講した感想を書き綴りたいと思います。

レベル的にはIoT初心者向け

ハイレベルな実務スキルが身につくというよりは、「 IoTに触れることでデジタル技術の概要を理解することができる」ということが主眼に置かれている初心者向けの講座という感じです。かといって、実務で使用できないわけではなく、本講義で構築するような簡易的なシステムであっても即時現場に取り入れて改善を行うことは十分に可能です。IoTシステムってどうしても敷居が高く感じますが、簡単なものであれば自分で構築できるという事を実感できました。どんなに難しい仕組みも噛み砕いてみていけば、簡単な仕組みの積み重ねです。IoT入門の第一歩として、FS育成講座はとても有効だと感じます。逆に既に電子工作やIoTに精通している人だと、若干物足りないかもしれません。

ちなみにサポートも手厚いのでIoTに関する事前知識が全くなくても、十分についていくことができると思います。その点は全く心配ありません。

業種のサラダボール

受講者層のバリエーションが豊富で、製造業はもちろん、医療業界、食品業界、コンサル会社などなど、様々な分野からの参加者がいます。まさに業種のサラダボールです。こういった機会がなければ、交わることがない人たちばかりです。さらに各々が持つ課題も業界特有のものもあって、非常に面白いです。FS育成講座は、講座内容のみならず、受講生同士の交流や情報交換にも価値がありますね。受講後もSlackは使用可能なので、その後どういう活用をしているのかなどの情報交換を行うこともできます。

データサイエンスは少なめ

講座の名前的にどうしても“データサイエンティスト”が頭をよぎりますが、この育成講座の主題は”センシング”と”見える化”です。取得したデータを数学的に処理するようなデータサイエンス的な要素は少ないです。処理したとしても、棒グラフにしたり折れ線グラフにしたりといったレベルです。もしそういったデータサイエンス的な部分に期待していた人がいたら、少々ギャップがあるかもしれません。FSがもっと業界に浸透してきたら、今後上級向けとして高度なデータサイエンスを用いたカリキュラムも展開されていくかもしれませんね。

課題の作りこみは結構大変

講座自体は週に一回ですが、最終課題の作りこみは”宿題扱い”です。一ヵ月の間に課題を見つけて、システムまで作りこむというのは、それなりにハードスケジュールです。基本的にどの方も自身の本来の業務と平行して進めることになると思うので、結構忙しいと思います。(繁忙期だとかなりキツイかも?)ただ、上述したように講師陣のサポートは手厚く、Slackで質問すればすぐに返答が来るため、「わからなくて躓く」ということはありません。Slackの前で常に待機しているんじゃないかというくらい返答は早いので、大変助かりました。

最終発表はボディビル選手権みたい

最終プレゼンテーションは、スライド一枚、発表時間は3分と大変コンパクトです。ですが、発表中は講師陣がリアルタイムで発表に対するコメントを書いてくれます。

こんな活用があるんですね、素晴らしい気づきです、面白い活用です、今後の参考にします、わかりやすい資料ですね・・etc

とにかく褒めてくれるので、見ていてなんだかボディビル選手権の声掛けを彷彿とさせました(笑)最終プレゼンという事ですごく身構えていましたが、とても和やかな雰囲気で楽しかったです。

簡単なシステムに無限の可能性

IoTを活用するために高度な技術は必要なく、温度センサ一つとっても使い方次第で無限の可能性があります。最終発表ではシンプルな構成ながら「その手があったか」というような使い方をする人も多く、非常に勉強になりました。高度なことをやらなくても、“アイディア“と“気づき“でいくらでも改善できるのです。50人居れば、50通りの課題やアイディア、活用方法があるわけで、そういったものを業種の垣根を越えて、シェアできるのがこの講座の強みでもありますね。


結論・・・めっちゃ良かったです。かなり勉強になりましたし、受講できて本当に良かったなと思います!!

まとめ

本記事の内容を復習しましょう。

・FSは、IoTデバイスやデータの活用、判断を行える技術者
・FSの役割は、“デジタルデバイドの解消“と“コミュニティの形成“
・FS育成講座は週一で全5回、約1ヶ月弱くらいのカリキュラム
・事前知識は不要でIoTの基礎・活用を学ぶことができる
・簡単なシステムでも無限の可能性を秘めている、大切なのは“気づき“


繰り返しになりますが、FS育成講座は決してレベルの高い講座ではありません。とても簡単なIoTの基礎を学ぶことができます。既に独学で学んでいる方にとってはレベルが低く感じたりもするでしょう。しかし、デジタルデバイド解消のためには、製造現場にIoTの基礎レベルを理解している技術者を増やすことが重要です。IoTが雲の上の技術ではなく、実は自分の手の中に収まる技術であるということを身をもって理解する機会が必要なのです。FS育成講座はまさにそのための講座だと感じます。

FS協会が謳う理念や取組を広めるためは、かなり泥臭く愚直に活動していくしかないでしょう。しかし、今後の日本のものづくりの未来を考えれば、これはもはや必修科目といっても過言ではありません。FS協会の運営に携わる人達は、日本のものづくりを変えていこうと本気です。乗るしかないでしょう、このビックウェーブに!!

晴れて私もFSになったわけですが、今後の研鑽が何より大切だと感じます。「講義が面白かったー」で終わらせず、今後も自分なりにIoT関連の勉強を進めたり、活用を考えて自分のものづくりを進めていこうと思います。

本記事を読んで一人でも多くの人がファクトリーサイエンティストに興味をもっていただければ、幸いです。個人で受講するのは、ちょっと無理があるので会社を巻き込む必要はあると思います。少し腰は重いかもしれませんが、それだけの価値はあるはずです。是非、ご検討ください。

Factory Scientist | ファクトリー・サイエンティスト
IoTデバイスによるエンジニアリング、センシング、データ解析、データ視覚化、データ活用の知識を身に付けて、データを軸に経営判断を素早くおこなうアシストをおこなう人材の育成
タイトルとURLをコピーしました