来週10/20(水)-23(土)にいよいよ開催されるMECT2021。実に楽しみですね。本記事では、工作機械の設計者であるこの私がMECT2021の魅力と見どころを独断と偏見で解説していきますよ。
そもそも、MECTってなに?
という人!!本記事は、まさにあなたの為にあります。本記事は"工作機械をよく知らない人向け"に書いていますので、必見です。工作機械業界に興味のある学生、新人設計者などなど・・・この機会に是非、工作機械に興味を持ってみてください。会場まで足を運んで現物を見てくれたらそれはもう最高です!それでは、行きましょう!!
MECT2021ってなに?
MECTとは、MECHATRONICS TECHNOLOGY JAPANの略です。メクト、またはメカトロテックジャパンと呼ばれる国内最大級の工作機械見本市の一つです。建屋の中に各メーカの工作機械や機械要素部品が所狭しと並ぶ、メカ好きのためのユートピアのような展示会です。1987年に初開催され、今回で18回目の開催となります。西暦奇数年の秋に名古屋市のポートメッセなごやで開催されています。
国内で行われる工作機械見本市には、もう一つJIMTOFという見本市がありますが、こちらは西暦偶数年の秋に開催されます。MECTとJIMTOFが毎年交互に開催されている感じです。
前年のJIMTOFがオンライン開催となったため、日本で行われるリアルの展示会としては、実に2年ぶりの開催で、非常に期待が高まっています。MECTもオンライン開催になるのでは?という懸念もありましたが、主催のニュースダイジェスト社はかなり早い段階から実施するという強い意志を持っていたようです。
昨年の8月に私がイケメン切粉選手権という企画を開いたことをキッカケに、ニュースダイジェスト社さんから取材を受ける機会がありました。その際にMECT2021の話になり、その時点で"何としても開催する"と言っていました。有言実行、流石です。
MECTはJIMTOFと比べると、やや小規模になるのですが、逆に言えば一つ一つの展示をじっくり見ることができます。各企業のブースも本当に見せたいものだけに絞って展示しているので、展示コンセプトが非常にわかりやすいです。
とはいえ、427社が出展、展示規模は約1800小間ですので大きいことに変わりはありません。ここは必ず見とけ、というポイントを独断と偏見でお伝えしていきますよ!!
ここは見とけ、MECT2021
絶対に見ておくべき会社とその見どころを紹介してきます。冒頭でも書きましたが、工作機械業界をよく知らない人向けに執筆していますので、玄人の方やプロの方にはちょっと物足りないかもしれません。その点は、ご了承くださいね。
工作機械メーカは見とけ!!
言わずと知れた世界最大手の工作機械メーカです。展示テーマは"5軸複合化/自動化/デジタル化"で、ワークの自動搬送システムや計測システムの周辺機器をメインに展示するようです。
注目すべきは、"AIチップリムーバル"です。これは、切削時に発生する切粉をAIで自動認識して、的確にクーラントをかけて除去するというシステムです。今までの工作機械では、切粉を除去するならクーラントの流量を増やすというアプローチしかありませんでした。そこにAIを用いて、的確に除去するという新たな発想を導入したのがこのシステムです。どのくらいの実力なのか、気になるところです!
こちらも言わずと知れた、大手工作機械メーカです。世界一の工作機械メーカとの呼び声も高いヤマザキマザックです。展示テーマは"デジタル製造ソリューション"で、デジタル化を強く意識した展示をするようです。
注目すべきは、 複合加工機の代名詞ともいわれる"INTEGREX i-200HS"でしょう。様々な工程をこの一台に集約し、フルオートメーションに対応した次世代の工作機械。更に最新の工作機械にどのように"デジタル"のエッセンスを加えていくのか、見どころです!
DMG森精機、マザック、ジェイテクトに並ぶ国内4大工作機械メーカの一つです。大手の中では最も歴史の長い老舗の工作機械メーカです。展示テーマは、"人手不足、働き方改革に対応"です。実にオークマらしい真面目なコンセプトですね。
注目すべきは、"インテリジェント複合加工機+ビルトインロボット MULTUS B250ⅡARMROID"。これは、ロボットアームは機械の外に置くという一般常識を覆した一台で、機械内部にロボットアームを組み込むという変態的発想の機械です。超技術集団のオークマだからこそなし得た一台と言ってよいでしょう。メカ好きなら必見です。
東京に本社を置く大手工作機械メーカの一つです。展示会では、見やすさに拘ったシンプルな展示が印象的な牧野フライス。展示テーマは"「自動化」~24時間連続加工~"です。MECTの出展企業情報には、それ以外の説明が全く書いていないという徹底ぶり。あとは会場に来て見てくれ、ということでしょうか。実に牧野フライスらしいですね。
牧野フライスの公式HPにはMECT向けの特設サイトがありますので、ここから色々と情報が見れます。
注目すべきは、"5軸制御立形マシニングセンタDA300"です。この機械は色々と特徴があるのですが、私が面白いと思っているのは切粉の排出方法です。センタトラフ構造という形を採用しており、効率よく切粉が排出できるようになってます。すごくわかりやすく例えるなら、加工エリアの下にでっかい和式便所が付いてる感じです。決して馬鹿にしている訳ではなく、この構造は合理的であるものの実現がかなり難しい形なんです。スペースや板金形状の制約がありますからね。少しマニアックな部分ですが、要注目です。
工作機械メーカでありながら、時代に先駆けて3D金属積層技術も磨いてきた一風変わった会社です。最近、やっと時代が松浦機械に追い付きました。展示テーマは"選ばれる理由にこだわる"です。展示テーマというより、開発スローガンに近いものを感じますね。
注目すべきは、”5軸制御マシニングセンタ MX-330 PC10”です。松浦機械のベストセラー機MX-330に10個のパレットが載るパレットチェンジャを搭載したモデルです。5軸マシニングセンタにパレットチェンジャを取り付けるのって実は結構難しいんですよね。軸数が多い分、ワークを搬入出するスペースの制約が多いんです。この機械は、その点が非常に合理的に設計されています。どういう動きでパレットチェンジするかは、ぜひ実機で確認してみてください。
石川県にある工作機械メーカで、旋盤系の工作機械を製造しています。業界初の工作機械のサブスクを展開したことでも話題になりました。SNSや動画配信、ブログなどをメディアを積極的に活用しており、非常にフットワークの軽い印象です。展示テーマは、"新たな自動化で生産性アップへ"です。
注目すべきは、"Flex Arm"というワークの搬送からチャック爪の交換まで行う自動化システムです。このチャック爪の自動交換というのがなかなか曲者で、これは見た目以上に難しい技術なんです。爪交換の際に、どうしても切粉を挟むリスクがありますし、爪を入れる際にはシビアな位置決めが必要です。そういった問題をどのようにブレイクスルーしたのか、設計者としては非常に気になるところです!!
余談ですが、公式HPで連載されている"留のうらがわ"という記事が面白いのでオススメです。こういう記事って会社の雰囲気がわかってとても良いですよね。各社がこういう発信をしたら面白いのになぁ、と思いますね!
兵庫県に本社を置く老舗工作機械メーカで、立形マシニングセンタ系の工作機械を製造しています。コロナの影響で、かなり厳しい経営状態に追い込まれたり、会計の不手際で上場廃止になりそうになったりと、ネガティブなニュースが多かったOKK。展示テーマは"高剛性は勝つ"です。自動化やデジタル化が主流の最中、機械の素性で勝つんだという意気込みが伝わってきますね。ネガティブなニュースを技術力で巻き返して欲しいところです。
注目すべきは、新型のマシニングセンタです。機種名は明かされていませんが、MECTで初お披露目のようにです。どんな機械か楽しみですね!
愛知産業は愛知県に本社を構えるエンジニアリング商社です。工作機械メーカではありませんが、あえて紹介する理由はこの商社がドイツの老舗メーカ Hermle社の工作機械が展示するからです。海外製の工作機械を見る機会はめった無いので、チェックしてみると良いでしょう。
コンセプトゾーンは見とけ!!
コンセプトゾーンと呼ばれる主催者企画展示があり、そこも必見です。テーマは、未来を変える新時代の自動化です。人とロボットの共存をどう実現するのか、その問いかけに対する具体的なソリューションを体感することができます。
工作機械トップセミナーは参加しとけ(学生向け)!!
学生であるならば、工作機械トップセミナーに参加する以外の選択肢はありません。これはマストです。工作機械トップセミナーは、日本工作機械工業会が主催する工作機械の技術の面白さや楽しさを紹介する学生向けのイベントです。業界の基礎から最新の工作機械のトレンドまで、広く学ぶことができます。工作機械業界に精通した方のありがたい話を聞くことができますよ。
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(工作機械トップセミナーはMECT2021最終日の10月23日(土)に行われます。)
今年はオークマ(株)の家城社長と東京電機大学の松村教授が登壇されます。講演後の交流会は、オンライン開催となるようですが是非参加してみてください。ちなみに私は約10年前のJIMTOFの工作機械トップセミナーに参加しましたよ。その時は、ヤマザキマザック(株)の山崎社長と工業デザイナーの奥山清行氏が登壇されていて、非常に刺激的な話を聞けました。
余談ですが、工作機械業界に興味がある学生は私に連絡いただければわかる範囲で色々と教えますよ。実際に「業界の事を教えてほしい」と連絡をくれる学生は何人もいるので、遠慮せずご連絡ください。私としても、学生がどんなことを知りたがっているのかを勉強できる良い機会になりますので。本ブログのコンタクト、またはTwitterのDMから連絡ください!
まとめ
本記事の内容を復習をしましょう。
・MECTは国内最大級の工作機械見本市の一つ
・約2年ぶりのリアル展示会の開催に期待が高まっている
・主要工作機械メーカとコンセプトゾーンは見とけ
・学生は工作機械トップセミナーに参加しとけ
とても楽しみです、その一言に尽きます。展示会は商談の場でもあり、競合研究の場でもあり、勉強の場でもあります。同じ展示会を見に来ているはずなのに、立場が違えば見え方も変わりますから、面白いものです。
MECT2021のキャッチコピーは"キカイを探そう"。機械と機会を掛けた非常に良くできたキャッチコピーです。この言葉通り、MECT2021に足を運んであなたなりの"キカイ"を見つけてみてはいかがでしょうか。私も会場内を挙動不審に動き回ったり、ヤモリの様に機械に張り付き、舐め回すように見ているでしょう。そんな"奇怪"な私も是非探してみてください(笑)