先日、”変なホテル”に泊まってきました。こういうと「一体どういうホテルに泊まってきたんだ?」と思われるかもしれませんが“変なホテル“という名前のホテルなんです。まあ、このホテルは結構有名ですよね、色々なメディアで取り上げられています。せっかく泊まってきたので、ブログでレポートを書きたいと思います。しかし、このブログは技術ブログ。当然、ただの宿泊レポートなんて書きません。機械設計者の視点からこのホテルをレポートしたいと思います。そう、私のブログもまた、変なブログなのです。
変なホテルって何だ?
変なホテルの最大の特徴は
世界初のロボットホテルである。
ということです。
省人化を目的として、受付や荷物の運搬に至るさまざまな業務のほとんどをロボットで自動化しています。かなり近未来的なホテルなんです、相当人件費も削減できているんだとか。ギネスにも認定されているみたいですね。ちなみに変なホテルの“変な“とは、奇妙なという意味ではなく、変わり続けることを約束するホテルという意味だそうです。これ結構、クリエイティブで熱いコンセプトですよね。
変なホテルは、2022年の4月現在では、海外も合わせて21カ所あります。ちなみに私が宿泊したのは、ネズミの国に最も近いところです。ホテルによって出会えるロボットの種類が違うみたいですね。私が宿泊中に出会ったロボット達を紹介していきます。
受付の恐竜
まずは受付。変なホテルの代名詞とも言える恐竜ロボットがテキパキと受付をこなしてくれます。作りも動きも、かなりリアルです。見た目的には今にも襲いかかってきそうですが、ずっと見てると可愛く見えてくるから不思議です。ジュラ紀にも、ホテルの受付の仕事ってあったじゃないかと思えるくらいの親和性。恐竜社会って思っているよりも発展してたかもしれません。
ロビーのティラノサウルス
ロビーにはティラノサウルスの頭が蠢いています。ホテルに迎え入れるというよりは、胃の中に迎え入れてくれそうな勢いです。1歳の息子が恐怖のあまり泣き叫んでいました。大人だって怖いわ、こんなもの。
お魚ロボット
お魚ロボットもロビーでお出迎えしてくれました。これ普通の欲しいね。
コンセルジュ RoBoHoN
部屋には、コンセルジュとして小さなロボットが。お喋り、ダンス、家電の操作までなんでもござれ。シャープ製のスマホ型ロボットRoBoHoNですね。スマホの次はロボットを持ち歩くようになる!?iPhoneに代わる次世代のスタンダードかもしれません。これは既製品として世に出回っている商品ですね。厳重にアクリルケースに保管されていたので、遊び倒すことはできませんでしたが話しかければ、踊ってくれます。
色々なロボットがみれて楽しかったです・・・ちゃんちゃん。
とは終わりませんよ。なぜなら、変なブログだからです。そして変なブログを見ている皆さんが気になること、私はちゃんとわかってますよ。
この恐竜ロボット・・・
どういう駆動で動いているんだろう?
ってことですよね。あんたも好きねー。
そうです、誰だって"ロボットの構造"が気になります。この恐竜ロボット、我々技術者にとってみれば雑誌の袋とじそのもの。中身が気になって仕方ないのです。家族そっちのけでロボットの近くで耳を澄ませていましたが、アクチュエータが何なのか音だけではわかりませんでした。本当は、もっと近くで見たり触ったりして色々と調べたかったんですが・・・。さすがに袋とじように、中身を開けて見るわけにはいきません。そこで、このロボットについて色々とネットで調べてみることにしました。
ホテル会社自体がこのロボットを自主制作しているとは考えにくく、別のどこかの会社に設計・製造を委託しているはずです。まず、その会社を探してみました。少し難航するかと思ったんですが、思いの外すぐに見つかりましたよ。
株式会社kokoro
変なホテルで働くロボット全般は、株式会社Kokoroというところで作っているみたいです。ココロはロボットの特注設計からレンタルまで、主にエンタメ向けの機械を幅広く扱っている会社です。
株式会社kokoroの機械で有名なのはキティちゃんのポップコーンマシンなどです。
ハローキティwwwwこんにちはぁwwwwwww
\出来立てのポップコーンはいかが?/
キティはみんなの人気者wwwwわwwんwwぱwwくwwいじわるwwwおこりんぼうもwww
優しいwwwキティとww一緒ならwwwwつられて優しくwwwなぁちゃうなぁwwwwヴェアッwwwwwwww
というコピペネタでお馴染みの機械ですね。デパートに行くとある例のアレです。
他のも幅広くエンタメ向けの事業をやっているみたいですね、面白い。さて、会社を見つけたところで、ここから恐竜ロボットに関する資料を探しましょう。恐竜ロボットのレンタル事業もやっているみたいなので、レンタル用のカタログか何かがあるはずなので、それを漁ります。その中から構造がわかりそうな資料があれば、儲けものですね・・・と思ったら、案外すぐに見つかりました。
商品名は“サーボティラノサウルス“
必要電源に
・コントロールAC100V
・コンプレッサ200V
・リザーブタンクAC100V
と書いてあるので、基本的にはエア駆動みたいですね。どの恐竜も基本的には同じ作りのようです。サーボティラノサウルスというよりエアティラノサウルスって感じですね。
構造を見てみよう!!
レンタルの資料を見たら運搬・搬入の図に参考になる良い絵がありましたよ!!
中身はこうなっているんですね。我々が博物館で目にする恐竜の化石とはだいぶ異なるようです。こうやって見てみると構造体自体は結構シンプルな作りをしているんですね。設計者の目線で少し構造を紐解いてみましょう。まずはアクチュエータに色をつけます。
合計7個のエアシリンダが使われている見たいです。ソレノイドバルブ類はピンク色で色付けした部分にまとめてあるっぽいですね。赤い部分は首の捻りの動きが入るはずですが・・・それはエアシリンダではさすがに難しいかな。ここだけモータかもしれませんね。次に動く部分ごとに色分けしてみましょう。こうやって見ていくと構造がわかりやすいですね。
支柱からのオーバーハングが長いので、首の根本のシリンダはなかなか容量が大きいですね。頭周りも肉抜きしてあり、重量に気を使っているのが見て取れます。構造として、そんなに大層なものではなく製缶部品とエアシリンダの組み合わせで比較的シンプルにまとまっています。
もっとロボットアーム並みにサーボモータで制御しているのかと思いました。ただ、すごいと思うのはこれだけエアシリンダを使っておきながら、あんなにも動物的な動きを再現できることですね。エアシリンダは、基本的には速度制御も位置決め制御もできません。バルブのON/OFFのタイミングだけで複数の軸の動作を制御するのって難しそうです。それっぽく動けば良いという機械なので、そこまでの制御性は求めないのでしょうけど。逆に考えれば、それこそが動物らしい動きなのかもしれませんね。我々も毎回全く同じ動きができるけではないように、同じ動作でも毎回ちょっと異りますよね。この微妙な変化こそが生き物らしい動きなのかも。
おそらく動作パターンは細かく設定されていて、各動作ごとにバルブON/OFFのタイミングを指示したプリセットみたいなものがあるんでしょう。自動運転モードの際は各動作パターンをランダムに繰り返すことで、生き物っぽく動く。手動運転の際は、コントロールパネルからボタンを押せば決まった動作をしてくれるといった感じでしょうか。
ただ実際にホテルで見たときは、エアコンプレッサの音やバルブが切り替える音、エアが抜ける音などは聞こえませんでした。世界観を損ねないように、防音に関しては工夫されているのかもしれません。ここになんらかのノウハウがありそうです。
安全に関しての仕組みはよくわかりませんでした。そもそも、人がぶつかっても怪我しない程度の推力しか出ていないのかな?一応、近づかないように柵はありますが、子供なんて柵を乗り越えて近づいていってしまうと思いますし。口に手を突っ込んだりして、意図的に噛まれてみた際、どのようになるのかが気になります。何らかのセンサが仕込まれていて、人を感知して止まるんですかね。実際のロボットアームでは、安全策が必須だったり、安全柵不要の協働ロボットでは出力が制限されていたりしますよね。この恐竜ロボットの安全思想は、調べてもわかりませんでした。もしかしたら弱肉強食?笑
ここまでの話は、私がカタログを見て勝手に妄想していることなのであしからず。こうやって中身を見ながら、色々と考えるのって楽しいですね。このブログにも恐竜ロボットのマスコットがいるのでいつかこの子を設計するときの参考にしたいですね。
まとめ
本記事の復習をしましょう。
・変なホテルは、世界初のロボットホテル
・変なとは、変わり続けることを約束するホテルという意味
・ロボットは、株式会社ココロで設計・製造されている
・恐竜ロボットは基本的にエアシリンダ駆動
エンタメ向けの機械にあまり目を向けたことがありませんでしたが、じっくり見てみると色々と発見があって面白いですね。使われている機械要素は同じですが、機械としての役割が全く違います。人を楽しませる機械・・・ものづくりには色々な形があるんですね。工作機械の設計をやっていると、効率・生産性の追求に追われます。技術を使って人を楽しませようという視点は持ったことがなかったので、そういう分野もあるんだとわかり、設計者として視野が広がった気がします。
今回のように、カタログを読み込んで、線を引いたり色をつけたりして構造を読み解くやり方は、開発設計では頻繁に行われます。競合他社のカタログを入手したら穴が開くほど読み込みますからね。これはなんでこんな形なんだ、意図はなんなんだとあーでもない、こーでもないと色を付けながら皆で話し合います。個人的にはその時間が結構好きだったりします。
身近なものに対しても
なんでこういう形なんだろう?
どういう構造なんだろう?
と疑問を持つことはとても大切です。色々なモノに興味を持って調べることで、ものづくりのセンスを磨けるはずです。アンテナを張りましょう!!今回の記事のように、その気になって調べればいろんな情報が手に入るもんですよ。
まとまりのない記事になりましたが、“変なホテル“はオススメなので是非泊まりにいってください。ものづくりに携わる人なら尚更、ただ面白かったで終わらない何らかの“気付き“があるはずです。このホテルを見習って、私のブログも変わり続けることを約束する変なブログになれるように頑張ります!
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