“クラウドファンディング”は、インターネットを使った資金調達方法の一つです。クラウドファンディングを使うことで、誰でも手軽にチャレンジに対する出資を募ることができます。前回の記事では、そもそもクラウドファンディングとは何なのか?またクラウドファンディング発の工作機械を紹介しました。お時間あれば、本記事と合わせてご一読ください。
さて本記事では、クラウドファンディングを使った“町工場の取り組み“を私の独断と偏見で紹介していきます。自社で培った加工技術を活かした面白いプロダクトが盛りだくさんですよ。アイディアと技術の融合、ワクワクしますよね。何か、皆さんのチャレンジや創造のヒントになれば幸いです。
プロダクトの紹介
自社の技術力アピール、ものづくり技術の普及、町おこし・・・・等、町工場でもクラウドファンディングを使った様々なチャレンジが行われています。町工場と一口に言っても多種多様ですが、本記事では切削系の工作機械を使った工場と定義し、そこにフォーカスして紹介していきます。まあ、深い意味はなく、単純に私が切削系の工作機械を設計している設計者だからです。
誤解の無いように言っておくと、これらは私が勝手に紹介しているだけです。特に依頼があったわけでも、お金をもらっているわけでもありませんよ。では、さっそく紹介していきましょう。
ペン回し用ボールペン Gyro(ジャイロ)
-回せ、話はそれからだ
この渋い謳い文句と共に登場したのは、ペン回し専用ボールペン”ジャイロ”。皆さんも学生の頃、指先でクルクルとペンを回す”ペン回し”やったことありますよね?このペンはペン回しの為だけに設計・製作された究極のペンです。もちろん、ペンとしての書き心地、デザインにも一切の妥協なくこだわり抜いて作り上げられています。
材料はA7075(超々ジュラルミン)で、一本一本が旋盤による削り出しで製作されています。何たる贅沢でしょう。贅沢故に値段も高めで一本15000円程度。それでも回し心地が気になってしまいますよね、初代Gyroは既にファンディングを終了していますが、2020年の年末に更に進化したGyro Proを発表され、ファンディングを開始しました。3月下旬までは受け付けているみたいなので、手に入れるチャンスはまだありますよ。興味があれば、下記のリンクから是非覗いてみてください。
●Gyro (ファンディング終了)
●Gyro Pro(ファンディング受付中)
●湯本電機株式会社HP
振動系ハンドスピナー OSCILLO(オシロ)
数年前に流行したハンドスピナーの進化系。それがOSCILLOです。ハンドスピナーはどれだけ滑らかに長時間回転するかが重要でしたが、このOSCILLOでは敢えて回転体の重心を回転中心からズラして設計しています。故に、回転させたときに心地の良い振動が発生するようになっています。
当然のことながら振動するため、回転の持続時間は短くなってしまいます。ハンドスピナーとは違い、振動そのものを楽しむ玩具なので、それでも問題はないのでしょう。結構古いプロジェクトなので現在購入できるかどうかはわかりません。
それにしても、あのハンドスピナーブームって一体何だったんでしょうね。私も何度か回してみましたが、その面白さはあまりわかりませんでした。このOSCILLOなら、少しはハマるかも??
●OSCILLO (ファンディング終了)
●AUTOLAB HP
ベアリング入り二重振り子 混沌(カオス)
これもまた、ハンドスピナーの進化系です。カオスの名に恥じぬ、複雑な軌跡を描く2重振り子です。手で回すわけではなく、置いた状態で楽しむオブジェのようなものですね。振り子の先端にはLEDが付いていて、カメラで長時間露出撮影を行えば、上記のような幻想的な写真を撮ることができます。用途としてはかなり尖った製品ですが、そのあたりが流石はクラウドファンディングって感じですね。
精度にはかなり拘っているようで、これまた部品は全て削り出し。ベアリングもベアリングメーカとして有名なNSK(日本精工)がヨーヨー用に設計したものを採用。相当のこだわりです。何に使えるかと問われるとなんとも言いずらい製品ですが、またそこが良いですよね。まさに無駄に洗練された無駄のない製品です。
ファンディング自体は終了していますが、現在は商品化したものを購入することができるようです。
●混沌(カオス)
●ミツミ製作所
コロナ対策 タッチレスフック
コロナ感染症の影響で社会全体が”触れる”ということに関して、かなり慎重になっています。ドアノブ、吊皮、押しボタン・・・等、公共の場にも不特定多数の人が触れるモノがたくさんありますよね。そんな時に使えるのがこの”タッチレスフック”です。
このフックを介して触れば、直接触る必要がなく衛生的です。同じようなフックが2社から出ています、材質はそれぞれチタンとマグネシウム。チタンの方はかなりスタイリッシュな印象で、男心をくすぐります。マグネシウムの方は猫をモチーフにした可愛らしい形状で、プレゼントにピッタリかも?
既にファンディングは終了しているので、現在入手可能かどうかわわかりません。個人的な感想を言えば、金属がむき出しなので、吊皮やボタンなど公共のモノを傷つけてしまわないか心配です。接触部分には樹脂材を埋め込むなどの配慮があると尚よい製品だったのではないかと思いますね。
●elghT(エイト)(ファンディング終了)
●藤恵工業株式会社
●マグクリーン(ファンディング終了)
●株式会社キョーワハーツ
無水調理器鍋 ベストポッド
話題の無水調理鍋です。これは多くのメディアで取り上げられているので、かなり有名ですよね。食材自体の水分で調理ができるため、余計な水分が要らず、旨味を逃がすことなく調理ができる魔法の鍋です。構造の秘密は鍋の気密性にあるんです。なんとこの鍋は、蓋と鍋の寸法を旋削加工で仕上げて管理しているんです。故に鍋と蓋の気密性が高まり、素材の持つ水分だけで調理ができるというわけです。まさに町工場の技術が光る一品ですね。ファンディングは既に終了していますが、現在では製品化したものを購入することが可能です。
同じような製品に"バーミキュラ"という無水調理鍋もあります。何かのテレビ番組で特集を見ましたが、こちらも蓋と鍋をガッツリ旋盤で旋削加工してました。こういう細かい部分の拘り、渋いですよね。
●ベストポット
●株式会社中村製作所
●バーミキュラ(参考)
金属削り出し食卓インテリア seSSaku
切削加工が作り出す美しさを生かしたテーブルインテリア。金型は使用せず形状から細かい模様まで全て、"切削"で作りこむ拘りよう。切削に対する愛を感じますね。箸置き、小皿、グラストレイ。どれをとっても一級品であることは間違いないです。切削加工を愛するものとしては、是非とも手に入れたい一品。切削を機能として生かすのではなく、意匠として生かすというアプローチは他の製品にはない斬新なアイディアです。特別な日のプレゼントにピッタリかも。
現在ではファンディングは終了していますが、製品化したものを購入することは可能です。
●seSSaku(セッサク) (ファンディング終了)
●seSSaku 公式HP
まとめ
少し駆け足で紹介してしまいましたが、如何だったでしょうか。どの製品も"削り"を生かした素晴らしい製品でしたね。どうしても割高になってしまうのはご愛嬌、それだけ手が掛かっているということでしょう。
個人的にはペン回し用ボールペンGyroと食卓インテリアseSSakuが気になってます。どちらも高いし、絶対に必要なものではないんですけど・・・面白味があって惹かれてしまいますね。それがまさにクラウドファンディングの魅力なのかもしれません。
もし私が好きそうなプロジェクトがあったら是非教えてくださいね。気に入れば、支援しますよ・・・お小遣いの範囲で!!