誰でもわかる”潤滑油”の基礎の基礎

潤滑

就職活動の鉄板の質問、あなたをものに例えるとなんですか?の最もポピュラーな回答は「私は潤滑油のような人間です」ですね。私が面接官なら、次にこのような質問をするでしょう。

 

「では、あなたはどのような潤滑油ですか?」

 

この質問にパッと答えられたら大したものですね。機械にとっての潤滑油とは、人間にとっての血液のようなもの。汚れれば機械はたちまち調子を崩してしまいます。潤滑油の存在や役割はざっくり理解していても、基礎的な部分まで理解している人は少ない印象です。本記事では、そんな大切な役割を持つ“潤滑油”の基礎の基礎を誰にでもわかるように説明していきます。是非、読んで理解しましょう。この記事を読み終えるころには、「あなたはどんな潤滑油ですか?」の質問に答えられるようになっているはずです。

潤滑油ってなに?

潤滑油を説明する前にまず、“潤滑”とはそもそも何なのを見ていきましょう。まずは、言葉の意味を理解するために、漢字一文字一文字を分解して見ていきましょう。

 

“潤”という漢字には、水気を含む、うるおす という意味があります。

“滑”という漢字には、なめらかでよくすべること という意味があります。

 

つまり、潤滑とは読んで字のごとく“潤わせて滑らす”ことです。

 

 

身近な例で言えば、手を洗うとき、石鹸で手がぬるぬるしますよね。乾いているときに同じように手を擦るのより、石鹸が付いていた方が明らかに滑ります。これも潤滑の一種です。石鹸と水で”潤わせて滑らして”いるんです。

 

余談ですが、私は最近、階段で足を滑らせて転び、アバラ骨にヒビが入りました。ちょうど雨が降っていたのですが、雨により階段が潤わされて、それにより私の足が滑らされて転倒しました。これも、私の靴の裏と階段の間で”潤滑”が生じた結果です。

 

話を戻しますが、このように潤滑とはある物体と物体を液体を使って、スムーズに滑らせることを言います。機械の世界では、潤滑のために水でも石鹸でもなく、油が使われます。この油のことを滑油”と呼びます。

潤滑油の役割とは?

 

 

潤滑油の役割は、金属部品同士を潤滑することです。では、潤滑油はどのようにして金属同士を潤滑させているのでしょうか。潤滑油の役割をもっと踏み込んで説明するなら“金属同士の直接接触を防ぐこと”ということができます。上図の通り、潤滑油が無い場合、金属部品同士が直接接触して引っかかります。これにより、“摩擦”が生じてしまうわけです。ここに潤滑油を指した場合、金属部品同士の間に“油膜”と呼ばれる潤滑油の膜が作られます。この油膜により、金属部品同士の直接接触することを防いで、潤滑を実現しているわけです。

 

不思議な話ですよね、先ほどの手洗いの話をしましたが、手を洗っているときも実は手の間に水と石鹸でできた膜が作られています。ヌルヌルするのは、できた膜のせい(おかげ?)で、両手が直接触れてはいないからなんです。そうやって意識すると手洗い一つとっても面白いものです。

 

話を戻します。部品同士が潤滑するために、潤滑油が必要なわけですが、仮に潤滑油がなかった場合、何が起きるでしょうか。潤滑を行わないと、部品同士の間で

 

・摩擦
・磨耗
・焼き付き

 

が発生します。摩擦で動く機構の代表例は”歯車”ですが、例えば潤滑無しで歯車を動かし続けた場合

 

・歯車が動くのに力が必要だったり ・・・摩擦
・歯車が段々削れていったり  ・・・摩耗
・歯車同士がくっ付いてしまっり ・・・焼き付き

 

が起こるわけです。これが機械にとってはとてもよくない事だというのは感覚でわかりますね。このように潤滑油は機械を動かす上でとても重要な役割を果たしているのです。また、潤滑以外にも潤滑油は

 

・密封 ・・・機械の気密性を保つ

・冷却 ・・・機械の熱を吸収して冷やす

・洗浄 ・・・機械の汚れを油内に取り込む

・防錆 ・・・水分や酸で機械が錆びるのを防ぐ

 

などの役割もあります。

潤滑油の種類と成り立ち

 

潤滑油は、“基油”“添加剤”からできています。潤滑油の基本性能は”基油”で決まり、その他の細かい特性の調整で”添加剤”が使われます。基油には大きく分けて、“鉱物基油”“合成基油”があります。

 

鉱物基油 ・・・ 原油から潤滑油に必要な成分のみを抽出して精製

合成基油 ・・・ 原油をエチレンガスに分解し、潤滑油に必要な成分のみを化学的に合成

 

合成基油の方が、油の粒子が安定しており様々な面で優れています。その代わり、精製に手間がかかるため鉱物基油に比べてどうしても高コストになります。


皆さんに最も身近な潤滑油は車のエンジンオイルだと思います。カー用品店に行けば、エンジンオイルが売っていますので、この機会に意識してみるとよいでしょう。鉱物油なのか、化学合成油なのか必ず書いてあります。お値段もそれなりに違うので、見ていて面白いですよ。またエンジンオイルの場合は、この鉱物油と合成油を混ぜ合わせた”部分合成油”なんてものも売っていますね。(相当こだわりのある人以外は、鉱物油で十分だと思います。)

潤滑油の特性

潤滑油の特性を表す指標には、“粘度”“粘度指数”“熱・酸化安定性”があります。

一つずつ見ていきましょう。

粘度とは?

 

潤滑油の最も重要な特性として“粘度”があります。その名の通り、粘度とは液体の粘りの度合いを表す指標です。簡単に言えば、どのくらいドロドロしているかです。

 

粘度が高い ・・・ ドロドロの状態
粘度が低い ・・・ サラサラの状態

 

です。また粘度は温度によって変化します。

 

高温 ・・・ 粘度が低下 サラサラな状態になる
低温 ・・・ 粘度が上昇 ドロドロの状態になる


なぜ、この粘度が大切なのかというと、この粘度が”油膜の厚さ”を決定するからです。粘度が高ければ、油膜は厚く、粘度が低ければ油膜は低くなります。潤滑の説明で油膜の話をしましたが、油膜は厚ければよいというわけではありません。厚すぎる油膜は大きなエネルギーロスを生みますので、装置ごとに適切な油膜が必要です。つまりは装置の用途ごとに適切な粘度の潤滑油を選ぶ必要があるということですね。

 

ちなみに粘度は、動粘度(kinematic viscosity)という単位で表すのが一般的です。動粘度は、粘度(どれだけドロドロしているか)をその液体の密度で割った値です。潤滑油は”ISO VG”という国際規格で動粘度ごとにグレード分けされています。ISO VGの後に続く数字は、温度が40℃の時の動粘度の値です。潤滑油を選ぶ際は、このISO VGは非常に重要ですので覚えておきましょう。

 

粘度指数とは?

 

粘度指数は、潤滑油の温度に対する粘度変化の度合いを表します。数字が大きいほうが、温度が変死しても粘度が変化しにくい良い潤滑油ということになります。例えば、同じ動粘度を持つ潤滑油でも粘度指数が違うと、上図のように温度変化でだいぶ動粘度が変わってしまうことがわかります。常に適切な油膜を得るためには、温度変化で粘度が変わってしまうと困ります。低温でも高温でもなるべく変化の少ない潤滑油がベストです。一般的には鉱物基油より合成基油のほうが、温度指数が高く安定しています。粘度指数はVI(viscosity index)という表記で表せらます。動粘度と粘度指数を混同している人をたまに見かけますが、全く別の言葉ですので正しく理解しておきましょう。

酸化安定性とは?

 

潤滑油は使用を重ねることで、酸化が進み、段々と粘度が上昇していきます。このような潤滑油の劣化は、粘度の上昇だけでなく、基油と添加剤が分離を起こして、潤滑油そのものの役割を果たせなくなったりもします。潤滑油を定期的に交換しなければならない最大の理由はこれですね。

 

このような酸化・劣化現象がどれくらい起きにくいかを表すのが、酸化安定性です。一般的には鉱物基油より合成基油のほうが酸化しにくいため、交換頻度を少なくすることができます。

 

オイルの劣化には酸化の他にも

 

・水分の混入

・ゴミ、摩耗によるスラッジによる汚染

 

あります。酸化的には問題なくても、汚染により交換が必要な場合もあります。

潤滑方法の種類

 

実際の機械では、どのように潤滑油を使っているのかざっくり見てみましょう。潤滑方法は大きく分けて二つあります。

 

・全損式・・・潤滑油を消費する潤滑

・反復式・・・使用した潤滑油を回収して再利用する潤滑

 

全損式では、使用した潤滑油は流れ出てしまい消費されます。例えば、自転車のチェーンの滑りが悪かったりすると油を指しますよね。あれが代表的な全損式の潤滑です。

 

反復式では、使用した潤滑油は回収され機械の中をグルグルと回り続けます。オイル交換が必要な機械は全て反復式と言えますね。代表例は、車のエンジンオイルです。

 

全損式、反復式でそれぞれ細かく方式がありますが本記事では説明は省略します。まずは、大きく分けるとこの二つの潤滑方式があるということを覚えておくと良いでしょう。

まとめ

本記事の要点を復習しましょう。

 

・潤滑とは、”潤わせて滑らす”こと

・潤滑油は”油膜”を作ることで、摩擦を減らしている

・潤滑油は”基油”と”添加剤”からできている

・基油には”鉱物基油”と”合成基油”がある

・潤滑油を表す指標には”粘度”、”粘度指数”、”酸化安定性”がある

・潤滑方式には全損式と反復式がある

 

 

Q「では、あなたはどのような潤滑油ですか?」

A「私は化学合成油です。過酷な状況でも、腐らず潤滑し続けることができます」

 

と答えられれば正解かもしれません。ただ、基本的に潤滑油は使い捨てか、定期的な交換が定められているものです。そういう意味では、就活生が自分を潤滑油に例えるのはあまり得策ではないかもしれませんね。

 

ちなみに私は、自分のことを「情熱が原動力のスターリングエンジン」と例えていました。何言ってんだこいつ?という顔をされたことがありますが、スターリングエンジンを知っている面接官(希少種)には評判よかったです。あだ名がしばらく、”スターリン”になりますが、印象には残せるのでオススメですよ。