ばね座金は、入れておけば確実にボルトのゆるみを防げる部品ではありません。とくに振動で締結部が滑る条件では、効果が認められなかったり、座金なしよりゆるみやすくなったりする研究結果があります。一方、結果は荷重、軸力、潤滑などの条件にも左右されます。
本記事で扱うのは、切れ目があり、ねじれた形をした一般的なばね座金(スプリングワッシャ)です。皿ばね座金やウェッジロック式など、別の仕組みの座金と混同せず、公開論文と設計上の考え方から効果を整理します。私が独自の比較実験を行った記事ではありません。
ばね座金にゆるみ止め効果はある?
私の職場で、ばね座金のボルトのゆるみ止め効果について色々と議論がありました。その議論が面白かったので、下記のようなツイートをしてネット上の技術者にも問いかけてみました。
さまざまな情報や経験談が集まりました。ただし、体験談の多数決だけでは効果を決められません。どんな力が加わり、どれくらい締め付け、何を「ゆるみ」として測ったのかを見比べる必要があります。まずは、ばね座金とボルト締結の仕組みを整理しましょう。

ばね座金は、押しつぶされると元の形へ戻ろうとする部品です。復元力や端部の食い込みに、ゆるみを抑える働きが期待されてきました。ただし、ボルトの軸力に、ばね座金の力が単純に上乗せされるわけではありません。ボルトと座金、締結される部材が、力のつり合いを保ちながら変形します。
締付けによって座金が平らにつぶれているか、軸力がどれくらい残っているか、座面が滑るかによって挙動が変わります。形を見ただけで「ばねだから緩まない」と判断することはできません。
ボルト締結の原理
ボルトを締め付けると、ボルトには引張力、締結される部材には圧縮力が生じます。このボルトに働く引張力が軸力です。必要な締付け力を維持することが、締結を保つ基本になります。

軸力が低下すれば、締結面にすき間ができたり、部材が滑りやすくなったりします。ゆるみには、ねじが戻り回転して起きるものと、戻り回転を伴わず、座面のなじみや変形などで軸力が下がるものがあります。

対策を考えるときは、何が起きているのかを先に調べましょう。締付け時の軸力が足りないのか、使用中に部材が滑って戻り回転するのか、座面が変形しているのか。原因が違えば、必要な対策も違います。
論文では、どんな条件で効果を調べている?
ここからは、公開されている研究を見ていきます。軸方向の繰返し荷重と、ボルトの軸に直角な方向の荷重では、試験条件が違います。別の条件の結果を一括りにしないことがポイントです。
2006年:軸方向の繰返し荷重による試験
熊倉らの2006年の講演論文では、M12のボルト締結体に軸方向の繰返し荷重を加え、皿ばね座金、ばね座金、座金なしを比較しています。ボルトの強度区分は12.9、荷重の上限は20 kNで、下限を変えた条件などを扱っています。接触部には二硫化モリブデンを用いています。
この試験では、ばね座金は座金なしと同程度、または条件によってゆるみが大きい結果でした。一方、皿ばね座金にはゆるみを抑える傾向があり、接触部の摩擦直径なども考察されています。論文の試験片形状や荷重条件で得られた結果であり、あらゆる座金の性能を一律に決めるものではありません。
2007年:横方向の荷重に対する3次元FEM解析
木村・泉・酒井の2007年の論文は、ばね座金を含む締結体のゆるみを、3次元有限要素法で解析した研究です。横方向の荷重を受ける締結部で、座金の不均一な接触や端部を支点とした挙動が、ゆるみへどう影響するかを調べています。
解析では、座面全体が大きく滑り始める前から、ばね座金によってゆるみが進みやすくなる場合が示されました。ただし、解析では端部の食い込みを表現していないなど、モデルの限界があります。解析結果と、実物で起きるすべての現象を同じものとして扱わないようにしましょう。
2018年:潤滑の有無や座金の向きで結果が変わる
角谷・瀬良・坂本の2018年の講演論文では、M10、強度区分8.8の締結体を用い、初期軸力12 kN、加振周波数12.5 Hzなどの条件で横方向の振動試験を行っています。潤滑された座面では、ばね座金がある方が早くゆるむ結果が示されました。脱脂した条件では改善する場合もありますが、座金の向きによる違いやばらつきがあります。
同論文は、接合面の滑りを防ぐ設計を優先したうえで、座金の効果を評価する必要性を述べています。「使う条件によっては効果が出る」ことと、「どんな条件でもゆるみ止めになる」ことは別です。
書籍でさらに学ぶ
ねじ締結を体系的に学びたい方には、酒井智次氏の『増補 ねじ締結概論』も参考になります。上で紹介した2007年の論文でも、同書の試験結果が比較対象として取り上げられています。ここでの実験結果の説明は、公開論文で確認できる範囲に基づいています。
「小さいねじなら効いた」という経験をどう考える?
ばね座金にゆるみ止めの効果があるのではないかと、仰っている方々の意見をまとめると下記のようになります。
・体感的にだが、緩んだ後の脱落防止としては役立っている気がする。
・プラスチックねじや小さいネジに関してはゆるみ止め効果が期待できるのではないか。
・着座面の材質が柔らかい場合には食い込みによるゆるみ止め効果がある気がする。
こうした現場の経験は、検討を始める手がかりになります。ただし、ねじ径だけでなく、締付けトルク、座面の材料、荷重、潤滑状態なども同時に変わっているかもしれません。「小径だから効く」という結論には、条件をそろえた確認が必要です。
2018年の論文では、M3〜M12の複数サイズについて、ばね座金が平らになるまでの荷重も測定しています。論文中の締付けトルクとトルク係数の仮定では、その荷重は締付け力の約2〜4%でした。この結果から、ねじが小さくなれば必ずばね力が相対的に大きくなる、とは言えません。
締結部の変形に追従して軸力を補う目的なら、残る軸力や座金の荷重・変位特性が問題になります。ねじ径だけから効果を推測せず、必要な締結力を維持できるかで考えましょう。次の投稿も、設計者間で交わされた当時の意見として紹介します。
規格に沿った寸法であることと、その締結条件で必要なゆるみ止め性能が得られることは別です。製品の荷重特性や使用条件をメーカー資料で確認し、必要に応じて実機に近い条件で評価します。
ゆるみ対策は、締結条件から選ぶ

んじゃ、ボルトの緩みを防止するためにはどうしたらいいんだ?
まずは適切な軸力を与え、接合面が滑りにくい構造にすることを検討します。そのうえで追加のゆるみ対策が必要なら、使用条件に合う方法を選びます。以下は選択肢の例で、どちらも取り付ければ無条件に解決するものではありません。
ウェッジロック式の座金
ノルトロックワッシャーは、一般的なばね座金とは異なるウェッジロックの仕組みを使う製品です。メーカーのユーザーガイドと製品仕様に従い、取り付け方、相手材、寸法、締付け条件を確認します。相手材の硬度などにも適用条件があります。
ねじ用のゆるみ止め接着剤
私は、ねじのゆるみ対策に接着剤を使うこともあります。金属ねじ向けの嫌気性接着剤は、酸素が遮断された金属間のすき間で硬化する性質を利用します。一般的な瞬間接着剤と同じ仕組みではありません。基本的な性質はスリーボンドの技術解説で確認できます。
固定強度、ねじの材質や大きさ、使用温度、硬化時間、取り外す必要があるかに応じて製品を選びます。たとえばロックタイトの製品一覧でも、低強度、汎用、取り外しを必要としない固定向けなどに分かれています。脱脂や塗布方法を含め、使う製品の仕様に従ってください。
まとめ
本記事の復習をしましょう。
- 一般的なばね座金は、条件を問わず効くゆるみ止めではない。
- 研究では、座金なしよりゆるみやすくなる条件も示されている。
- 荷重方向、軸力、潤滑、座金の向きなど、評価条件をそろえて見る。
- ねじ径だけから「小径なら効く」と判断しない。
- 適切な軸力と滑りを抑える構造を基本に、必要な対策を選んで確認する。
「昔から入れているから安心」でも、「どんな場面でも無意味」でも、設計条件が見えなくなってしまいます。なぜゆるむのか、どの働きを期待して使うのかを説明できるようにしておきたいですね。
形の印象だけで決めつけず、条件からリスクを考える例として、ボルトの下にすき間がある新人君の設計事例も読んでみてください。
締結設計の情報を広げるための関連資料も、以下にまとめます。製品資料・解説記事は、それぞれ対象とする条件を確かめながら読んでください。











