アイキャッチの写真:Samurai Machine Tools 公式のローンチ動画(YouTube)より
2026年10月22日、日本の工作機械好きのX(旧Twitter)が、半日ほどざわつきました。
「どうせ卓上でしょ?と動画を見てみたが…これはなかなか本格的!」(Xの投稿)
「この時代に先進国から工作機械メーカーが生まれるとは…!」(Xの投稿)
震源は、英国の新興メーカー"Samurai Machine Tools"(サムライ・マシンツールズ)が公開した、小型マシニングセンタ"Samurai 220H"のローンチ動画です。本体の設置面積は畳1枚より狭い1.14 m²。そこに主軸BT30と最大64本の工具を収め、"鋳鉄の最大5倍の剛性"(剛性は、力を受けたときのたわみにくさ)をうたう独自素材"Samurai Steel"まで使っているというのです。
動画:Samurai Machine Tools 公式のローンチ動画(YouTube)
ちなみに、私は穿った目で見てました、工作機械の設計はそんなに甘いもんじゃないぞと。
マシニングセンタ?BT30?・・・何がそんなに凄いの?そもそも本当に凄いの?・・・と思った方もいるのではないでしょうか。
大丈夫です。本記事では、機械設計者の目で、220Hの"凄そうなところ"と"冷静に見るべきところ"を読み解いていきます。なお、内容は2026年11月上旬の公開情報にもとづくもので、同社には確認していません。
では、さっそくいきましょう!!
"Samurai 220H"って何だ?"卓上"ではない小型マシニングセンタ
マシニングセンタとBT30
そもそも"マシニングセンタ"って何なんだ?という人のために、サラッと説明します。
マシニングセンタ(MC)とは、工具を自動で取り替えながら、穴あけ・溝削り・ねじ立てまでを1台でこなすNC工作機械のことです。NC(数値制御)とは、プログラムの数値どおりに刃物やテーブルを動かす仕組みのこと。工具を取り替える装置を"ATC"(Automatic Tool Changer:自動工具交換装置)と呼びます。
もう一つの"BT30"は、工具を主軸に取り付ける"差し込み口"(テーパ)の規格の大きさです。30番は小型機、40番は中型機の定番、と覚えておけばOKですね。

テーパとは、先に向かって細くなる円すい形の部分のこと。工具を持つホルダーの根元がこの形になっていて、主軸の穴にぴったり差し込んだうえで、先端のプルスタッドを奥から引っ張って固定します。BT30もBT40も、傾き(7/24)は同じです。
違うのは大きさで、40番はゲージ径も、テーパの長さも、フランジの直径も、30番の約1.4倍。体積にすると、テーパの部分だけで約2.7倍にもなります。差し込み口が大きいほど工具をがっちり支えられて重い削りに強く、小さいほど工具も主軸も軽くなって、速く動いたり素早く工具を替えたりできる、というわけです。図の寸法は、JIS B 6339で決まっているBTシャンクの代表値で、工具メーカーのカタログ値です。
代表的な機械を並べると、こんな顔ぶれになります。

画像引用:ファナック、ブラザー工業、オークマ、牧野フライス製作所の各公式サイト
並べてみると、機械そのものの大きさもずいぶん違いますよね。40番機は、30番機よりひと回りもふた回りも大きいのが普通です。さらに大きい、50番機もありますけどね。
もっとも、この「小物は30番、重い削りは40番」というすみ分けは、いま少しずつ崩れてきています。近年は機械のダウンサイジングが主流で、30番機の切削性能が上がったため、従来は40番機で削っていた部品を30番機に任せることも出てきました。
たとえばブラザーは、EV向けのインバータケースを削る事例で、40番のマシニングセンタと比べた効果をうたっています。1サイクルの加工時間は30〜60%短く、設置面積は20〜30%小さく、1サイクルの消費電力は約80%少ない、という数字です。かつてすみ分けていた30番機と40番機は、いまや一部で競合する関係なんですよね。ただ、220Hはこの流れの中でも、出力より"小ささと台数"に振り切った機械と言えるでしょう。40番機の重い削りを肩代わりするタイプではありません。
スペックと立ち位置

画像引用:Samurai Machine Tools「Samurai 220H Premium」
220H Premiumは、主軸が上下を向いた"立形"のマシニングセンタです。上の画像の扉の奥、主軸の左右に並んで見えるのが、あとで紹介する工具の棚(マガジン)です。
220H Premiumの移動量(テーブルや主軸が動ける距離。Xは左右、Yは前後、Zは上下)は400×240×360 mm、質量は1,020 kg、本体の外形は1.2×0.95 m(1.14 m²)です。日本の小型マシニングセンタの代表格と並べてみましょう。いずれも主軸は30番の、立形の機械です。
| 項目 | Samurai 220H Premium | ブラザー SPEEDIO S300Xd2 | ファナック ROBODRILL α-D21SiB Plus |
|---|---|---|---|
| 移動量 X/Y/Z | 400/240/360 mm | 300/450/300 mm | 300/300+100/330 mm |
| 床面積 | 1.14 m²(本体の外形) | 2.334 m²(所要床面積) | 2.199 m²(所要床面積) |
| 質量 | 1,020 kg | 2,350 kg | 約1,950 kg |
| 主軸の連続出力 | 2 kW | 7.0 kW | 3.7 kW |
| 標準の工具本数 | 16本(最大64本) | 14本/21本 | 21本 |
床と重さは日本機の約半分。ただし、Y軸の移動量(240 mm)と連続出力も小さい、というのが正確なところ。Yが短いと前後に長い部品を一度に削れず、連続出力が小さいと重い削りに時間がかかります。
床面積は、220Hが本体の外形、日本機はメーカーが示す所要床面積で、やや測り方が違いますね。同じ測り方で比べれば、差は少し縮むかもしれません。それでも、1トン・高さ2 mの床置き機です。日本の30番機も同じくらいですから、"軽い卓上機"ではなく、れっきとした工場の機械なのです。
価格は、Premiumが£28,890(約606万円)、Baseが£18,685(約392万円)です(2026年10月23日のレート)。ただし£28,890は、工具16本・主軸6,000 rpmの標準構成の値段です。宣伝で目立つ最大64本の工具や12,000 rpmの主軸などをそろえると、定価は£44,976(約943万円)になります。まぁ、そこそこ高い。それでも安いけど。
概要の説明はこれくらい。ここから、機械設計者の目で"凄そうなところ"を見ていきます。
ココが凄い!!英国の新顔"220H"の3つの見どころ
その1:英国から"新しい工作機械メーカー"が出てきた
まず驚くのは、この機械が英国から出てきたことです。
英国は、かつての工作機械大国でした。Samuraiが拠点を置くロイヤル・レミントン・スパの隣町、コヴェントリーには、世界最大級とされた工作機械メーカー"Alfred Herbert"がありました。1888年創業の名門ですが、輸入機に押され、1983年に閉鎖されています。英国の工作機械の業界団体(MTA)の推計では、2022年の英国の工作機械の生産は約5億ポンドで、輸入(約7.2億ポンド)のほうが多いのが現状です。

そんな英国で、新しい工作機械メーカーはめったに出てきません。英国の企業登記で「その他の工作機械製造」を名乗り、2015年以降に設立された現存の会社を調べても、マシニングセンタを作っているとみられるのはSamuraiだけでした。同じ時期に生まれた英国の機械系ベンチャーも、多くは金属3Dプリンタなどの付加製造や、CNCルーターの会社です。
もちろん、教育用の小型機を作る老舗や、海外資本の工場は英国にもあります。なので「英国初」「英国唯一」とまでは言えませんが、正確に言うなら「2015年以降に創業し、産業用の30番マシニングセンタを自社で設計・組み立てている英国の会社は、調べた範囲ではSamurai」くらいは言えそうです。
新しいメーカーが出てこない理由は、技術よりも、資本・保守網・需要の壁にあると考えられます。工作機械は、買った後の部品の供給や修理の体制がないと選ばれにくく、英国では機械加工の事業所の数も減っているとされるからです。
Samuraiは2020年創業、平均従業員2人(2025年6月期)の小さな会社です。英国の企業登記の記録を見ると、外部からの株式出資は受けておらず、地域の金融機関の融資を元手に、資本の要る汎用のマシニングセンタに正面から挑んでいるわけです。以前は組立キットや主軸の単体を少数売っていたようです。会社自身も「英国の工作機械産業は遅れていると思われているかもしれないが、Samuraiは米国企業のスピードと、日本企業の細部へのこだわりを持つ」とうたっています。
工作機械好きとしては、新しいメーカーが生まれるというだけで胸が熱くなります!!
その2:省スペースを実現するATCのレイアウト
設計者として唸ったのが、この配置です。
220Hは、主軸を挟むように左右に工具のマガジンを置き、工具を受け渡しながら交換します。日本の工作機械業界の人からも「主軸を挟むようにツールマガジンをダブルでつけて,受け渡してツール交換しているのがユニーク!」という声が出ていました(Xの投稿)。
確かにこの構成はかなり珍しいかも・・・

画像引用:Samurai Machine Tools 220H Premium カタログ(PDF、p.3)
16本のマガジンを分けて積み重ねると、最大64本(有償オプション)になります。ただし、64本や100本の30番機はブラザーにもあります。左右にマガジンを置く形も、旧型の120シリーズから続く同社の流れです。
なので"世界初"のレイアウトというより、小さな外形にいろいろなものをまとめた"配置設計"そのものが見どころだと私は思います。主軸と積み重ねたATCに加えて、前から引き出せるクーラントのタンクも付いています。機械を載せる架台はパレットトラックで運べる形で、制御盤まで、畳1枚より狭い面積に収めているのです。ビューティフル!!
考え方も面白いんです。会社は「工作機械の未来は、いちばん大きく高価な機械ではなく、いちばん小さく手頃な機械だ」とうたっています。小さな機械を何台も並べて、床面積あたりの主軸を増やそうという発想です。あなたの工場なら、1.14 m²の機械を何台並べますか?
日本勢が"1台に工具をたくさん積む"工程集約へ向かっているのとは、逆向きですね。もっとも、小型機を並べる使い方には前例があります。2010年代には、スマートフォンの筐体を削るために、日本製の小型機ROBODRILLがアジアの工場に大量に並びました。ファナックのロボマシン部門の売上は、2014年3月期の815億円から2015年3月期の2,952億円へ跳ね上がっています。大は小を兼ねる、は工作機械の世界では通用しないということです。小は小の力があるのです。
その3:ちゃんと自分たちで削って作っている
もう一つ、ものづくり好きとしてグッときたのが、作り方です。
公開されている写真と動画を見る限り、試作機の鋼のフレームは、同社が貸し区画に置く韓国DN Solutions製の汎用マシニングセンタで削られています。さらに、ATCの部品は、220Hの試作機そのもので削られているのです。会社も「ATCは220Hで作れるように設計したので、部品のコストを下げられた」とうたっています。

画像引用:Samurai Machine Tools「About」
一方で、ガイドとボールねじはTHK、軸受はNSK製を買っています。サーボモータは、中国HCFA製ですね。専業メーカーから要素部品を買うのは多くの工作機械メーカーと同じやり方です。この機械は他社製の看板替え(OEM)ではないか、という疑いの声も若干ありましたが、見る限りはしっかりと自分たちで制作しているように見えます。
さらには価格表、オプションの価格、ボールねじのリードの表、そして試作機の検査票まで公開している点も、新興メーカーとしては珍しい透明さです。自分たちで作っているという部分に、強いプライドを持っている、そんな風にも見えますね。とにかく
自分の機械で自分の部品を削るのは、工作機械の魅力でありロマン
ちゃんと工作機械メーカーしてるやん?ということです。ただ・・・公開されている数字は、そのまま受け取ってはいけません。ここからは、設計者として冷静に見ていきましょう。
冷静に見てみる:検査票の"結果欄"と量産
検査票をのぞいてみよう
次に見たいのが、精度です。製品ページからは、試作機001の検査票を見ることができます。こういう資料を公開するのは、斬新でとてもいい取り組みですね。

画像引用:Samurai Machine Tools 試作機の検査票(PDF)
記入された幾何精度は1〜2 µm(1 µm=0.001 mm)です(測定器や温度の記載はなし)。ただし、Y方向の平行度は10 µm。表の「ISO」の欄の許容値(20 µm)には収まっていますが、自社の許容値(4 µm)は超えていて、表でも黄色で示されていますね。
さらに注目したいのが、位置決め精度・繰り返し精度の「5 µm・3 µm」と円弧補間の値です。位置決め精度は指令した位置にどれだけ正確に止まれるか、繰り返し精度は同じ位置に何度も止めたときのばらつき、円弧補間はX軸とY軸を同時に動かして円を描かせたときのゆがみのこと。どれも、加工の精度に直結する大事な項目です。
ところが、これらの値は「SAMURAI MT」の欄に書かれた自社の"許容値"で、肝心の結果欄は空欄なんです。そもそも試作機の記録なので、量産機の評価でもなさそうです。人間ドックで言えば、基準値の列はあるのに、自分の数値の列が空いている状態ですね。
製品ページには「全機に、幾何精度・位置決め・ボールバーの結果を含む検査報告を付けて出荷する」と書かれています。ボールバーとは、主軸とテーブルのあいだに伸び縮みを測る棒を付け、機械に円を描かせてゆがみを測る検査のことです。つまり、答え合わせは初出荷のとき。逆に言えば、不利な値まで載った検査票を公開しているからこそ、こうして外から確かめられるわけで、この開示の姿勢は評価してよいと思います。
本当の勝負は"作り続けられるか"
ここまで見ると、問いは「自分で作っているか」から、「同じ品質で、必要な台数を、検査の証拠付きで作り続けられるか」へ移ります。
今わかっているのは、工場が約50 m²の貸し区画で、確認できる加工機は汎用のマシニングセンタ1台と自社の機械、平均従業員は2人ということ。量産については、2026年1月の時点で「生産用の治具とサプライヤーを検証中」とされています。また、公式サイトの過去の表示をWebアーカイブで比べると、完成機の納期やローンチ日の表示は、2024年6月に予約を始めてから6回以上後ろにずれていました(その間に、製品も旧型の120Hから220Hに変わっています)。
英語圏の製造系アカウントも、工場見学の話として「たとえばSPEEDIOは、どの機械も、2秒ごとに位置を測るレーザー校正をしながら12時間運転される」と書いていました(Xの投稿、原文は英語)。本物の工作機械を作る難しさを指摘したものです。何十年も積み重ねてきた検査の厚みは、一朝一夕には作れません。
製造業には、妖怪試作騙しという有名な妖怪がいて、量産作りを邪魔してきます(実体験)
コンセプトから量産へ、そして作り続けられるか。そこに侍魂はあるのか、ここからが見ものです。
ここまでのまとめをすると、220Hは小さな箱に産業機の機能を詰めた、よくできた機械。ただし、精度と量産の答え合わせはまだ、ということです。では、いよいよ本丸。"鋳鉄の5倍"をうたう"Samurai Steel"を見ていきましょう!!
"鋳鉄の5倍"は何の5倍?Samurai Steelを検算してみよう
220Hの看板が、独自の謎素材"Samurai Steel"です。うたい文句は、鋳鉄のフレームと比べて「最大5倍の剛性、6倍の減衰、1/4の熱変位」。
"Samurai Steel"・・・工作機械好きなら、この響きだけでワクワクしてしまいますよね
ただ謳い文句だけ聞くなら、そんなバカなって感じです。やや胡散臭い。ただ、第三者の測定データはなく、専用ページも「Coming Soon」のままです。"Samurai Steel"とはいったい何ぞ?
そもそも工作機械の骨格に要る3つの性能
工作機械のフレームに求められる性能は、大きく3つあります。
- 剛性:力を受けてもたわまないこと。ばねの硬さのようなもので、高いほど刃先が逃げません
- 減衰:振動がどれだけ早く消えるか。叩いた鐘がすぐに鳴り止むイメージです。振動が残ると"びびり"になり、加工面にうねりが出ます
- 熱安定:温度で伸び縮みしないこと
これまで、工作機械のフレームの定番は鋳鉄でした。中に含まれる黒鉛片が"小さなクッション"として振動を吸い、複雑な形を一体で作れるからです。もっとも、鋳鉄をやめること自体は新しくありません。砕いた石を樹脂で固めたエポキシグラナイトやミネラルキャスト、超高強度コンクリートなど、別の会社が別の材料をすでに使っています。
ミネラルキャストの解説記事はこちら
そういえば、牧野フライスのATHIUM(アシウム)どうなったんだろ?
5倍・6倍・1/4を検算してみる

まずは静剛性の5倍から。鋼と、工作機械によく使われるねずみ鋳鉄の"ヤング率"の比は約1.7です。つまり、材料を鋳鉄から鋼に替えて稼げるのは1.7倍までです。残りは形で作るしかありません。定規を寝かせて曲げるとすぐ曲がるのに、立てると曲がらないのと同じで、同じ材料でも断面の形しだいで硬さは何倍も変わるのです。
実際、会社も剛性の比較図に「外形がほぼ同じで、内部は各材料の典型的な設計のフレームどうしを比べた」と注記しています。5倍は材料ではなく、構造どうしの比較と読むのが自然でしょう。
しかも、刃先の剛性はフレームだけでは決まりません。フレーム・軸受・工具・ボールねじが、直列につながったばねのように効くからです。直列のばねでは、柔らかさが足し算になります。仮に刃先の柔らかさを1として、そのうちフレームの分が半分の0.5なら、フレームを5倍硬くしても柔らかさは0.5÷5+0.5=0.6。硬さは1÷0.6で、約1.67倍にしかならないのです。
減衰の6倍は、何の値の6倍なのかが示されていません。資料の比較図も3種類あって、倍率がそろっていないのが実情です。どれも目盛りのない説明用の図とみられ、食い違いがそのまま虚偽という意味ではありませんが、少なくとも測定データとして読むことはできません。
熱変位の1/4は、材料だけで考えると逆向きです。鋼の熱膨張は鋳鉄より大きく、長さ400 mmで1℃上がると、鋼は約4.8 µm、鋳鉄は約4.0 µm伸びます。1/4を出すには、熱の逃がし方などの設計や、補正の働きが要るはずです。会社も、主軸の温度に応じた補正機能を持つと説明しています。
写真と言葉から正体を推理する
では、Samurai Steelの中身は何なのでしょうか。公開資料から、手がかりを2つ拾ってみます。
1つめは、言葉の移り変わりです。会社の説明は、次のように変わってきました。
- 2024年ごろ(自社サイト):「無垢の鋼のフレーム」
- 2025年2月(カタログ):「鋳鉄より剛性と減衰に優れた材料」
- 2025年後半(カタログ):「機密の工程」
- 2026年(自社サイトとFAQ):「鋼の外骨格」「複数材料の設計(multi material design)」
「無垢の鋼」から「複数材料」へ。設計の重心が、剛性から減衰へ移ってきたことが読み取れます。
2つめは、写真です。公開された試作の写真には、厚い鋼の一体部材に径の違う多数の穴があき、その多くが光沢のある青い材料で満たされている様子が写っています。穴の縁には、液面の盛り上がり(メニスカス)や気泡の跡も見えます。
集合体恐怖症の人にとっては
ちょっとキモいかも?

画像引用:Samurai Machine Tools 公式サイト
ここから読むと、Samurai Steelは、鋼に剛性を、穴に詰めた材料に減衰を受け持たせる"鋼が主役の複合構造"とみられます。会社自身も鋳鉄の黒鉛片と比べているので、黒鉛片(硬い地の中の軟らかい粒)を、大きなスケールで人工的に作ったような発想、と読むこともできそうです。

ただし、充填材の正体は公表されていません。写真は試作の工程のものですし、特許も「出願中」の表示があるだけです。英国の特許はふつう出願から約18か月後に公開され、番号の付き方からみて出願は2026年春ごろなので、公開は2027年秋ごろになりそうです。
鋼と制振材を組み合わせる発想自体は、昔からあります。新しさがあるとすれば、厚い鋼に多数の穴をあけて局所的に詰めるという配置と工程、そしてその実測の性能でしょう。やや眉唾ではありますが、論文などが出たりしたら是非読みたいところです!!
まとめ
本記事の内容を復習しましょう。
- 220Hは"卓上"ではなく、日本の30番機より一回り小さい、床置きの小型マシニングセンタ
- 30番機が40番機の仕事の一部まで担う時代で、220Hはその中でも出力より"小ささと台数"に振った機械
- 英国で新しいマシニングセンタのメーカーが出てくること自体がまれで、Samuraiは小さな会社のまま正面から挑んでいる
- 凄そうなのは、主軸を挟むダブルATCを含む配置設計と、自分の機械で自分の部品を削る作り方
- 試作機の検査票は位置決めと円弧補間の結果欄が空欄で、見るべきは"許容値"より"結果"
- "鋳鉄の5倍"は材料ではなく構造の比較で、正体は「穴に別の材料を詰めた厚い鋼」?
つまり220Hは、小さな箱に産業機の機能を詰めた、よくできた機械。ただし"鋳鉄の5倍"は材料ではなく構造の話で、精度と量産、そして素材の答え合わせはこれからです。答え合わせは、2027年3月の初出荷とその検査票の結果欄、そして2027年秋ごろ(推定)の特許の公開。
新しい機械を見るときは、"比較の相手"と"結果欄"の2つを確かめてみてください。英国から現れた小さな侍が本当に工場へ届くのか、工作機械好きの一人として、楽しみに待ちたいと思います。
最後に、本記事と関わりの深い記事と、参考にした公式の資料を紹介します。どれも是非あわせて読んでみてください。







