転職活動

転職活動、終わりました。

以前、ブログ記事にしましたが2021年7月末から転職活動をしていました。

約3ヶ月間の活動の末、転職活動は無事に終了しましたのでこのブログにてご報告させていただきます。結論としては、現職に留まることにしました。

転職活動をしたこの3ヶ月間は私の人生の中でも、非常に濃密なものとなりました。とても良い経験になりましたし、自分の中で仕事の意味を再定義することもできました。かなり紆余曲折ありましたが、ざっくばらんに書き綴りたいと思います。転職に迷っている人がいれば、きっと何かのヒントになるはずです。なるべく多くの人の参考になるように、私なりに経験を噛み砕きながら書いていきます。是非とも参考にしてください。

この3ヶ月間、私がどんなことを考えて、どんなことをしていたか聞いてください。それではいきましょう!!

人はいつ転職を考えるのか?

人はどんな時に転職しようと思うのでしょうか。転職学という書籍の中、転職に至るまでのメカニズムが書いてありましたので、抜粋して紹介します。「人がどんなときに転職・離職を考えるのか」を表す転職の方程式は下記で表すことができます。

・今の会社への不満(D)
・転職力(E) ※転職できる可能性
・転職への抵抗感(R)


会社への不満(D)転職できる可能性(E)の積が転職への抵抗感(R)を超えれば、人は転職を決断するということです。この式が表す重要なポイントは、転職は"不満ベース"で行われることということです。つまり、会社に不満があるから転職するんです。

しかし、ただ不満があるというだけでは簡単には転職を決断できません。とある種類の不満を持つことで、転職を決断する可能性が高くなります。それがどんな不満かといえば、”これから先も解消されない不満”です。例えば、給料が低い、サービス残業が多いなどといった待遇面、またはパワハラ、セクハラがあるという人間関係、などです。自分の力だけでは、解消が難しい不満があるとき、転職への抵抗感よりも不満が上回る可能性がグンと高くなるのです。

なんで、こんな小難しい話をするのか?

その理由は、自分が抱える不満を明確にすることが転職において最も重要だと身をもって感じたからです。上記で紹介した「転職活動、始めました。」の記事の中で私は

「新しいことがしたい、大きなチャレンジがしたい」

ということを転職活動の動機にあげています。前向きな言い回しですが、この言葉を裏返すと今の会社では新しいチャレンジは絶対にできない」という解消できない不満が転職活動の起点であると言えます。

転職活動初期の私は、前向きに自分を奮い立たせようとする余り、この不満を俯瞰して捉えることができていませんでした。転職をしなければならないという気持ちだけが先行し、結果として悩むことになりました。

転職活動の始まり

私の転職活動のスタートは、非常に特殊です。なぜなら、ブログの発信をキッカケに転職活動を始めたことが会社にバレたからです。

もともと、転職活動の記事を書く前から社内の一部の人の間で「このブログ、うちの社員が書いてるっぽいなー」という話があったようです。別に悪いことをしているわけではないので、黙認されていました。しかし、転職活動の開始を宣言したことで、これは一体誰なのか?という調査が水面下で始まり、一瞬で私に辿り着いたわけです。情報網って恐ろしい・・・。私は、

転職活動を始めます!!

と正直に会社に宣言してから、転職活動を始めたようなものです。こんな人はなかなか居ないと思いますよ(笑)

上記の記事では、部長からブログやTwitterでの活動について指摘されたという話を書きましたが、この話には続きがあります。むしろ、ここからが始まりです。実はその後に、部長よりさらに上の役職の役員クラスの方から私宛にダイレクトにメールが届きました。

「ブログ、楽しく拝見しています。もしよければ面談しましょう」

丁寧な文面の裏から香る濃厚な死の香り。

え?なに?俺死ぬの?

思いのほか、ことが大きくなっていくことにビビりながらも、その役員の方と一対一で面談をすることとなりました。面談は少し小さめの会議室で二人きり・・・。偉い人なので、存在は知っていましたが、面と向かって話すのはもちろん初めて。「一体なにを言われるのだろうか・・」とかなり身構えていましたが、想像していたよりもフランクな面談となりました。言われたことを要約すると

・君の情報発信の件は、非常に評価している
・弊社でもいくつもの新しいプロジェクトが進行している
・やりたいことがあれば、希望の部署に異動してもらって良い
・転職しなくても、この会社でできる新しいことはいくらでもある
・新しいことがやれる”土壌”も”体力”もこの会社にはある


ということでした。

話は昨今の工作機械業界の動向から、それに対する会社の戦略やアプローチまで普段聞けないような話もざっくばらんに聞かせてもらって、とても為になりました。この面談の時点で既に、かなり後ろ髪を引かれる感じがあったのですが、私としては「現時点では転職活動を始めたばかりなので、まだ判断はできない」と伝えました。

転職活動をしてみないことには、この提案の良し悪しが判断できないと思ったからです。ここから私の具体的な転職活動が始まります。

会社選びの軸

転職先としては、3つの軸で探すことにしました。

・今の会社よりも大きな大企業
・ニッチでありながら世界的シェアを持つニッチトップ系中小企業
・ものづくり関連のベンチャー企業


大企業や中小企業は、転職エージェントを利用して紹介してもらい、ベンチャー企業に関しては自分で探して直接応募しました。会社選びの基準は、転職の動機に従い“新規性の高い取り組みを行なっている会社“。転職先の軸を3つの軸に分けた理由は、会社の規模に捉われずに幅広く企業を見ていきたいと思ったからです。

難航した転職エージェント選び

まず転職活動に必須と言っても良いのが、転職先を紹介してくれる転職エージェントです。失礼な言い回しを承知で書きますが、正直な話あまり"まともな人"がいませんでした。私が接した多くの転職エージェントは、プロとは言い難い仕事ぶりでしたね。希望とは全然違う職種や業種の仕事を紹介してきたり、それでいてかなり急かすようなことを言ってきたり・・・自分の実績稼ぎのために、とにかく早くどこかの企業にぶち込みたいという気持ちが見え見えでした。

転職エージェントのビジネスモデル的にみれば、それはしょうがないことかもしれません。ただ、少なくとも人の人生に関わることなので、もっと誠意をもって対応して欲しいと思いました。計4人のエージェントの方にお世話になりましたが、そのうちの3人はそんな感じでした。噂には聞いていましたが、これほどとは・・・。

4人目のエージェントで、やっと信頼できる方と出会いました。情熱的でフットワークも軽く、「転職で人をハッピーにする!」と豪語する一風変わった人です。基本的にはその方に全てお任せすることにしました。

就職活動する上で、転職エージェント選びは極めて重要です。こればかりは自分で見定めるしかありません。もしも近くに転職した友人がいれば、その人が利用したエージェントを紹介してもらうのもアリですよ。そちらの方が確実ですね。

いざ、面接へ

転職エージェントから条件に合う会社を紹介してもらい、何社か面接を受けました。私が大切にしたことは、工場見学をさせてもらうことです。このご時世だと、リモート面接が多く、極端な話、一度もその会社に出向かなくても内定を取ることもできます。しかし、自分が働くかもしれない職場であれば人や現場、現物を見ないことには判断できないと考え、面接の前に工場見学をさせて欲しいという旨をエージェントに伝えてもらいました。仮に面接に落ちたとしても、他社の工場なんて滅多に見学できないので、それだけでお釣りがくるほどの儲けものですしね。タダでは転びません。

Twitter経由でお誘いをいただいた企業もあったので、面談を受けさせてさせていただきました。個人的にはそこが本命でしたが、本格的な選考に進む前に“現職に留まる“という判断をしたため、途中で辞退してしましました。

面接を受けてキツかったことは、有休を湯水のように使わなければならないということです。

リモート面接を選べば、家からでも受けれますが、私が工場見学を重視したこともあり、かなり急な日程調整を強いられました。複数の企業の選考を平行に進めれば尚更です。仕事もかなり忙しい時期だったので、結構キツかったです・・・。やむ終えず秘技“仮病“も使いました。こればっかりはしょうがないので許して欲しいところ。働きならがら転職活動をする上では、この日程調整の辛さは避けられないでしょう。これは覚悟しなければなりません。

ですが、その甲斐あっていくつか内定を頂くことができました。私もやろうと思えば転職できるんだな、ということがわかって非常に自信になりました。

本当に転職が正解なのか?

内定が取れ始めて、転職できるという自信がついてきた矢先。とある疑問が頭をもたげてきました。それは「本当に転職が正解なのか?」ということです。

転職の方程式で表すところの転職力(E)が大きくなり、後は転職への抵抗感(R)を越えれば転職すると言う場面です。しかし、肝心の会社への不満(D)がわからなくなっていました。

先ほど“転職活動の件で役員の人と面談した“話をしましたが、実はその後も私のことを気にかけてくれて、ことあるごとに「調子はどうですか?」「こういう面白いことがあるよ」など、わざわざ私のデスクまで出向いてくれました。忙しい中、時間を割いて来てくれることに非常に感謝しつつ、同時に自分の中でなかなか決断を出せないもどかしさも感じていました。その人がしてくれる話はとても興味深く、確かに現職のまま新しいチャレンジができそうな気がしてきました。

しかし、自分の中で「絶対に転職をしなければならない」という気持ちが強くあり、それが何故かを説明できなくなっていました。今、考えればそれが何かはわかります。手段と目的の逆転です。転職活動は、自分の目的を達成するための選択肢の一つであるにも関わらず、いつの間にか転職することが目的となっていました。

"転職に対する期待"と"現職に対する期待"、自分がやりたいこと、成し遂げたいこと・・・そういったものが頭の中でグルグルと回って、何が正解なのかわからなくなりました。これはもう自分だけ考えていたのでは、埒が明かない。誰かに話を聞いて欲しい。私はあまり人に相談を持ちかけるタイプではないのですが、このときばかりは色々な人に助けを求めました。

転職の相談

相談を聞いてもらったのは、上司、先輩、同期です。わざわざ私のために、時間を割いてくれて非常に有難かったです。

先輩

既に転職を決めて、退職する先輩がいたので相談をしました。わざわざ家にまで招いていただき、夜遅くまで相談に乗ってもらいました。優しくも厳しい先輩なので、かなり鋭い指摘をいただきました。

・やりたいことって言うけど、それは具体的になんなの?
・転職先でそれができる保証はある?あるなら、それはどこから判断したの?
・転職先でやりたいことができなかったら、また転職するの?
・転職に拘っているようだけど、それは選択肢の一つだと捉えるべき。


こういった鋭いツッコミを入れてもらいながら話を引き出してもらうと、不思議と頭の中で自分の考えがまとまっていくのがわかりました。ここで初めて、自分は会社に対して「新しいことができない」という不満をもっていて、それを解消するために転職活動をしているという構造を俯瞰的に捉えることができました。そして、同時に「その不満は今の会社の中で解消できる可能性が高い」ということも冷静に認識することができました。

上司

直属の上司である係長にも相談しました。相談と言うよりも、ちょっとした愚痴から発展して相談する形になったという方が正確かもしません。

到底終わらせることのできない仕事を投げてきては、「なぜ納期通りに終わらないんだ」と毎回詰め寄ってくる係長が正直好きではありませんでした。少し投げやりになっていた私は、係長に詰め寄られたとき「やる気が起きないんです。もう器用にこなすだけの設計はしたくありません。もっと新しいものが作りたいんです」とちょっとした逆ギレをしてしましました。(今考えれば、だいぶ大人気ないですね)

呆れられるか逆上されるかと思ったのですが、意外なことに係長は私の話(愚痴)を親身になって聞いてくれました。係長から言われたことは以下の通りです。

・裁量を与えず、責任だけを求める今の仕事には問題があると思う
・チームで働いている限り、自分のやりたいことができないこともある
・気持ちはわかるが、納期の先にはお客さんがいる。それを忘れてはいけない
・自分の価値観だが、最終的に良い製品ができるなら自分は犠牲になっても構わない


あまりこういった仕事感に関して、真剣に話をする機会はなかったのですが、膝を突き合わせて話すことで、上司の人と成りを理解することができました。上司との話の中では、チームと言う言葉がよく出てきましたが、やはり管理職ポジションとメンバーポジションでは物事の捉え方が違いますね。自分だけがやりたいことを追求していたら、それは趣味の領域の話です。チームで働いて、相乗効果で価値を作り込んでいく。そういう視点が自分の中でぽっかり抜けていたことに気がつく良いキッカケとなりました。

同期

同期とは不思議なもので、仕事のこともプライベートのことも腹を割って話せる特別な存在です。同期の中でも特に仲の良い人たちには、今年中に転職しようと思っていると言うことは事前に伝えてありました。ある日、仲の良い同期に呼び止められてこう言われました。

「転職する前に一度話を聞いてくれない?所属長にもアポを取るから、うちの部署でやっている新しい取り組みを見て欲しい。転職を決めるのは、その後でも遅くないはず。」

これが一番驚きましたね。プライベートでも交流のある仲の良い同期なのですが、扱っている技術分野が異なるため、あまり真面目に仕事の話をしたことがありませんでした。そんな熱い発言をするキャラでもなかったので、すごく意外だと思う反面、目には見えなくてもみんな熱量をもって仕事をやっているんだと感じました。同時に少し冷めた視点で今の仕事を見ていた自分を恥じました。

その他にもここには書ききれないほど、多くの人から意見をもらいました。本当に人に恵まれたと思っています。自分の境遇に感謝しかありませんね。ここまでお膳立てしてもらったら、もはや迷う余地などありませんでした。

現職に留まり、新しい分野へ

このように転職活動の経験や様々な人の支えを得た上で、現職に留まる決断をしました。最終的には、声をかけてくれた役員の方にお願いをして部署異動の辞令を出していただきました。機械設計の仕事から、更に開発・研究色の強い部署に移してもらいました。今はまだ、引き継ぎ業務を行なっている最中ですが、これから自分の課題を見つけて人の役に立つ新しい製品や技術の開発に取り組んでいきたいと思っています。

まとめ

本記事の内容を復習しましょう。

・転職の方程式がある (会社への不満(D)x転職できる可能性(E)>転職への抵抗感(R))
・転職は”不満ベース”で行われることが多い
・自分の抱える"不満"が何なのかを明確にすることが大切
・不満を現職で改善できない理由をはっきりさせることが大切
・転職は選択肢の一つでしかない


正直、私はかなり恵まれていたと自覚しています。まず、機会に恵まれました。たまたまブログで発信した内容が会社にバレたおかげで、結果的に新しい部署に異動させてもらうことができました。もしブログをやっていなかったら、今とは全く違う選択をしていたと思います。その良し悪しは別としても、プライベートで続けてきたことがこれほど自分の仕事に影響を与えるなど思いもしませんでした。

そして何より、に恵まれました。声をかけてくれた役員の方を始めとして、転職エージェント、上司、先輩、同期、後輩に至るまで、多くの人が私の相談に真摯に乗ってくれました。

転職する人の全てが、同じ機会や境遇に恵まれることは恐らく無いでしょう。私は非常に運が良いレアケースだと思います。それでも、転職を考えている人に対して、声を大にして伝えたいことがあります。

ポジショントークになってしまいますが、転職だけが選択肢ではないです。まずは、何故自分が転職をしようと考えているのかを俯瞰して捉えてください。その起点には、会社への不満があるはずです。そして、その不満が現職の中で解決できるものなのかを冷静に検討してみてください。絶対に解決できなものなら、そこで初めて転職という選択肢が出てきます。

その不満を明確にせず「終身雇用の時代は終わった」「これからは転職の時代だ」という風潮だけに流されて転職を決断しないでください。その先にあるのは、きっと同じこと繰り返しです。

最近、私の同期でも会社を辞めようとしている人がいました。私の話を参考にして、直接部長に不満をぶつけてみた結果、部長が会社に対して同じ問題意識を持っていることや、会社を変えようと思っている想いを知り、転職を思いとどまったらしいです。このように、正面からぶつかっていけば、何か見出せることがあるはずです。表に出さないだけで、色々と考えている人や動いている人はいるのです。それでも、ダメなら転職すれば良いのです。

話は少し矛盾しますが、転職活動は絶対にやった方がいいですよ。自分は転職できるという自信があって、初めて目上の人にも強気でぶつかっていけるという面もあります。自分の市場価値を知ることでその後のキャリアプランも立てやすくなりますし、転職というカードを持っているだけで、会社や組織の見え方が変わってきます。まず、内定の一つでも取ってみると良いでしょう。

書きたいことが多すぎて、長い記事になってしましました。ここまで読んでいただきありがとうございます。本当に濃密な3ヶ月、激動の3ヶ月であり、そして感謝の3ヶ月でした。心機一転、新しい部署でこれから頑張ってきたいと思います!!この記事が、転職に悩む誰かのヒントになれば幸いです。

転職活動をする上で非常に参考になった書籍を下記に貼っておきますので、転職を迷っている人は読んでみてください。特に転職学はオススメですよ。

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